SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

ARCHIE SHEPP 「Deja Vu」

2007年12月15日 | Tenor Saxophone

ライナーノーツを見ると「一言でいうと情念のバラードアルバム」だと書いてある。
全く同感だ。
私には少しばかり重苦しく感じられるが、こうした「泣き」のテナーファンは大勢いるだろうことはおよそ察しがつく。
60年代のアーチー・シェップを知っている人ならなおさらだ。
あれだけ尖っていた彼が、まさかこんな枯れた音のバラード集を立て続けに出すなんて予想もできなかったことだ。
彼もやっぱり歳をとったということなのかもしれない。しかしそこはさすがに百戦錬磨。ただ甘いだけのテナーではない。情念といういかにも恐ろしいものを漂わせる技術があるから、やっぱりバラードを吹いてもアーチー・シェップなのだ。

このアルバムはバラードはバラードでもフレンチバラード集である。
確かにどの曲を聴いても夜霧に包まれたパリの夜を連想してしまう。誰もいない石畳の上を一人歩いていくような感覚だ。正に泣きたくなるような夜をイメージさせる。この切ないムードを目一杯楽しめればそれでいいのだと思う。難しいことは抜きだ。
脇役陣もベテラン揃いで安心して聴ける。
ピアノはハロルド・メイバーン、ベースはジョージ・ムラーツ、ドラムはビリー・ドラモンドである。
アーチー・シェップの場合、メンバーにこれくらいの名手を持ってこないと極端にバランスが崩れるはずだ。
いうなればアーチー・シェップは暴れ馬。バックを務めるジャズメンの手綱さばきがキーポイントになるということである。

とにもかくにも、ヴィーナス・レコードの典型的アルバムだ。
ジャケットの妖艶な雰囲気(これは好きじゃない)、優秀な録音(これはすばらしい)、無国籍のような不思議なムード(録音はニューヨークなのに...)、これ全部がヴィーナス・レコードの特徴だ。
日本のレーベルも今や世界トップクラスになったといえる。