SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

NINA SIMONE 「JAZZ AS PLAYED IN...」

2007年12月04日 | Vocal

このニーナ・シモンのアルバムタイトルは「Jazz as Played in an Exclusive Side Street Club」と長い。日本では「ファースト・レコーディング」といった方が通りがいい作品だ。ジャズファン以外にも有名なベツレヘムの人気盤である。
彼女の歌はもうめちゃくちゃソウルフルだ。
名曲「I Love You Porgy」などを真剣に聴いていると涙がこみ上げてきそうで怖い。これだけ魂を揺さぶるヴォーカリストはどこを探してもいないと断言できる。これはもう好きとか嫌いとかいうような次元の話ではなく、私たちは彼女の存在自体をしっかり認識しなければいけないような気にさせるからすごい人だと思う。

彼女の持つこの一種独特な疎外感はいったいどこからくるのだろう。
とても失礼ないい方になってしまうが、まず彼女の表情が見るからに寂しげだ。まるで長い間虐げられてきた黒人の悲しさを一手に引き受けているような憂いがある。どんなに豪華なドレスを着たりイヤリングを下げようとも、彼女にはなぜか孤独感がつきまとうのだ。
ピアノの弾き語りというスタイルも大きく影響しているかもしれない。ピアノを弾くことで大きなボディランゲージができなくなり、その結果、鬱積された思いは歌以外にピアノを通じても伝わってくるのである。
彼女のピアノはそうした意味でも他のピアニストとは違う音を出す。彼女がジャズ・ヴォーカリストであるという事実はこのピアノがつくり出すものであり、彼女からピアノを取り上げれば純粋なソウル歌手になってしまう。

このアルバムはそんなニーナ・シモンの魅力を余すところなく伝える傑作である。
もちろん「I Love You Porgy」も好きだが、4曲目の「Little Girl Blue」が個人的なイチオシだ。
イントロの可憐なピアノが聞こえてくる辺りでもう万感胸に迫るものがある。
彼女のジャズピアノを堪能したければ、歌なしのトリオで演奏される7曲目の「Good Bait」とラストの「Central Park Blues」がお薦めだ。ここでのピアノを聴いていると、チェット・ベイカーがトランペットを歌うように吹くのと同じであることがわかる。ピアノは彼女の分身なのだ。

朝方から降っていた雨が雪に変わってきた。この季節に彼女の歌はよく似合う。最高の一枚だ。



※明日からまた一週間ほど留守にします....