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SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

KENNY BARRON 「THE MOMENT」

2009年02月08日 | Piano/keyboard

あの寺島靖国さんが絶賛しているアルバムである。
寺島さんが大推薦している理由は、「FRAGILE(フラジャイル)」という曲の表現と、ルディ・ヴァン・ゲルダーによる録音である。
本を読むと、氏はルディ・ヴァン・ゲルダーの自宅まで行って、このアルバムにサインをしてもらったというから、すごい熱の入れ用だ。
確かに「FRAGILE」におけるルーファス・リードのベース音はすごい。
私のチープなオーディオ装置でも、地響きが起きるようなものすごい低音が部屋中に響き渡る。寺島さんが持っているオーディオ装置で鳴らしたら、さぞかしすごい音がするんだろうなとこれを聴く度に思ってしまう。

さて録音はさておき、この作品はケニー・バロンが「FRAGILE」という曲を選曲したことにより価値が高まったことも事実である。
この曲は皆さんご存じ、スティングの曲だ。
もともとスティングはジャズに近いテイストを持った人である。彼がつくる曲はどれも美しくもの悲しいメロディラインを持っており、ジャンルを飛び越えて万人の心を打つ魅力に溢れている。
ケニー・バロンも単純に「自分が好きだから」という理由で選曲したようだが、ジャズメンはこうしたロックの佳曲をもっともっと取り上げてもらいたいものだ。
実際にこういう曲を取り上げて成功した事例はたくさんある。
例えば、キース・ジャレットの「Somewhere Before」に収録されている「My Back Pages(ボブ・ディラン)」や、ブラッド・メルドーの「Anything Goes」に収録されている「Still Crazy After All These Years(ポール・サイモン)」、アラン・パスクァの「Body & Soul」の中の「A Whiter Shade of Pale(プロコル・ハルム)」などは忘れられない。
コール・ポーターやジョージ・ガーシュインなどが作曲したスタンダード曲もいいが、それ一辺倒だとやはり飽きてしまう。
アルバムの中にたった1曲でいいから、こうした曲を挟み込んでもらいたいのだ。
但し、ロックといってもビートルズはダメだ。ビートルズのカバー曲で感動した試しがない。
おそらく原曲が持つイメージが強すぎるのだろう。ビートルズの曲はビートルズが演奏してナンボの世界なのだ。

そういえばブルーノートに録音されたスティングの曲ばかりを集めたコンピレーション盤、「Blue Note Plays Sting」というアルバムも出ている。
ジャズメンにはスティングファンが多いということの現れかも知れない。
なぜかちょっと嬉しい気持ちだ。

ERIC HARDING 「CAPELTON ROAD」

2009年02月03日 | Piano/keyboard

先日、日本海に浮かぶ小さな島に渡ってきた。
3~4日は時化のためにフェリーも出なかったのだが、何とか天候も落ち着いて久々の出港となったようだ。
そのお陰で港の小さな待合室も比較的多くの乗客で混んでいた。
但し、冬場は日に一本しかフェリーが出ないため、例え10分で済む用事だったとしても必ず宿泊しなくてはいけなくなる。
都会に住む人間には考えられないことかもしれないが、これが離島ならではの時間感覚なのだ。
しかも天候が荒れ、波が高くなると、船の運航はすぐ止まる。
私の友人は1週間も行ったっきり帰って来られないことがあった。
そんなわけで、この時期はある程度の覚悟を持って出かけなければならない。
そこで私は着替えを2日分、文庫本を2冊、そして数十枚のジャズアルバムが入ったiPodを持って船に乗り込んだ。

いくら天候が少し落ち着いたとはいえ、フェリーが港を離れ外海に出ると、船体は大きなうねりのため猛烈に揺れた。
とても立ってなどはいられない。本を読むことはもちろん、こんな状態では眠ることも不可能だ。約1時間半、ただじっとがまんして横になっているしかないのである。
そこで私はできるだけ心休まる音楽を聴こうと、iPodの中からエリック・ハーディングのこのアルバムを選び、ボリュームを最大にしてスタートボタンを押した。
タイトだが、どこか懐かしくて、寂しくて、暖かいピアノがイヤホンを通して響いてきた。
目に浮かぶのはこのアルバムのジャケットにある風景だ。
この土の道を馬車に揺られながら走っていく感じが、船の揺れ具合とダブっていく(もっとも、船の揺れ具合の方がはるかに大きかったが......)。
ちょうどいい曲が「Song For James」というエリック・ハーディングのオリジナル曲だ。
どことなく牧歌的で優しい雰囲気を漂わせつつ、ミディアムテンポで曲が進行する。
最近のピアノトリオの善し悪しは、このくらいのスピードの曲にいい曲があるかどうかで判断している。
熱くなりすぎない、もったいぶらないテンポが重要なのだ。

船はようやく島の入口にさしかかり、到着のアナウンスが船内に流れた。
立ち上がって船内から島の南東部を見ると、島を周遊する一本の道が見えた。
道はまっすぐだった。


CHRISTIAN JACOB 「CONTRADICTIONS」

2009年01月21日 | Piano/keyboard

ペトルチアーニで思い出し、このアルバムをかけている。
これはクリスチャン・ジェイコブによるミシェル・ペトルチアーニ作品集なのだ。

私も一頃はペトルチアーニに凝って彼の作品を買い集めた。
コンサートにも行った。
ステージに上がった彼は、あの小さな身体からは信じられないほどパワフルでダイナミックな演奏を行った。硬い音質のピアノが会場いっぱいに流れると、観客の興奮も一気に盛り上がったのをよく覚えている。
私を虜にしたのは、同じリフレインの後で急速に流れ落ちるようなフレーズが出てくる瞬間や、時折見せるいたずらっ子のようなユーモア精神だ。
私はそんな人間味溢れるペトルチアーニが好きだったし、そうしたフレンチジャズの自由なムードが好きだったのだ。

クリスチャン・ジェイコブもペトルチアーニを敬愛するフランス人だ。
但し、ピアノの音質はまるで違う。もっとまろやかだ。
しかもドライで、北欧のピアニストのような湿った感じがない。
そんな彼がペトルチアーニの曲を演奏する。当然、曲の雰囲気が変わっていく。
この作品で私が特に好きなのは、ラストの「My Bebop Tune」である。この軽快な曲はペトルチアーニの演奏と比べると、明らかに角が取れて丸くなっているのがわかる。
もちろんどちらがいいかなどと比べるつもりはない。その時々の気分で双方を楽しんでいる。
それよりも大切なのは曲そのものが持つ力である。これは変わらない。
ペトルチアーニの曲は、光が差し込む明るいテラスのようだ。
この明るさ、暖かさがクリスチャン・ジェイコブのピアノからも伝わってくる。
いつの時代もジャズが古びないのは、こういった感覚が持てるからである。


DUKE JORDAN 「FLIGHT TO DENMARK」

2009年01月12日 | Piano/keyboard

この季節になると聴きたくなる一枚。
今朝は薄日も差して、窓の外にはこんなジャケットのような世界が広がっている。
こういう景色は雪国に住む私たちにとって半ば日常的なものだが、真っ白になった木々を見ているとやっぱり感動する。
こんな休日は、暖かい部屋にいてゆっくりデューク・ジョーダンのピアノを聴いて楽しもうと思う。

とにかくハートウォームな演奏だ。
もっと突っ込んだデューク・ジョーダンを聴きたければ、彼が若い頃の作品を聴けばいい。パーカーと組んでいた40年代後半から50年代までの彼は、ここでの演奏からは想像もできないくらいアグレッシヴだった。
でも最近は、枯れた味わいのジョーダンに勝るものはないと思っている。
このアルバムと対をなす「Two Loves」でも実にいい味を出している。歳をとったらとったなりの弾き方があるんだよ、というかのように穏やかだ。
特に大好きなのが3曲目の「Everything Happens to Me」と、続くオリジナルの「Glad I Met Pat」。
これを聴いていると、心がじわ~っと温かくなってくるのがわかる。
日頃のイヤのことも忘れて優しくなっていくような気がするから、このアルバムは私にとっては大変な特効薬だ。

以前一度だけこのデューク・ジョーダンのステージを観たことがある。
いかにも地味な感じの人で、ステージ・パフォーマンスもほとんどなかったのだが、最後にちょっとだけ観客に向かって手を挙げ、「うん、うん」と頷くような仕草をしたのが印象的だった。
それから数年後、ジョーダンはデンマークで息を引き取った。84歳だった。
こんな生き方、死に方をしたいと思う。

JESSICA WILLIAMS 「THIS SIDE UP」

2008年12月26日 | Piano/keyboard

ジェシカ・ウィリアムス、MAXJAZZにおける初のレコーディング作である。
彼女くらいの実力があると、いきなり第1音からその世界を創り出す。
女性だからといって少しも甘くない世界だ。
ピリッと張りつめた緊張感が、曲が替わっても持続していく。そこにはまるで組曲を演奏しているかのような一貫性があって、彼女のアルバムづくりに対する拘りが見て億れる。
言い換えればスタジオ録音なのに、連続して演奏を行っているライヴのような感覚に陥るのだ。
私たちはこの世界にぐいぐい引き込まれていく。

気がつくと4曲目辺りから、緊張感もとれていっていつしかリラックスできるようになる。
5曲目の「セレナータ」は感動ものだ。レイ・ドラモンドのベースも弾けている。
但しこのアルバムで特筆すべきは、その後に登場する3つのトリビュートナンバーである。
6曲目の「マイルス・トゥ・ゴー」はもちろんマイルス・デイヴィスに捧げたナンバー。ところどころでピアノの弦を指で押しつけてトリッキーな演奏を見せる。キュイ~ンと伸びた音が何だかマイルスを暗示しているように感じる。
7曲目はローランド・カークに捧げた「ユーリピアンズのテーマ」。この曲は劇的な構成になっており、タンゴ調のリズムに乗ってカークの思い出が通り過ぎてゆく。
そして8曲目が「アイ・リメンバー・デクスター」。
これはデクスター・ゴードンに捧げた曲で、曲名だけ見ればベニー・ゴルソンの「アイ・リメンバー・クリフォード」を連想してしまうが、ここはデクスターの性格に合わせて、ジメジメしない明るい展開にしている。
彼女はサンフランシスコの〝キーストーン・コーナー〟で、実際にデクスター・ゴードンのバックを務めていたこともあり、デクスターの喜びそうなツボを心得ていたのではないだろうか。
そして9曲目の「イノセンス」。これがまた涙ものだ。ラストの「オフ・ブルー」もいい。
どちらもここまでの出来事を振り返るかのような仕上がりになっている。

ここまで読まれてお気づきだろうと思うが、このアルバムはなかなかに計算されたストーリーになっている。
もちろん誰もが私と同じような感慨を覚えるわけではないだろう。
しかし1曲1曲の出来もさることながら、アルバムはやはり全体を通しての価値を生み出せるか否かが重要なのだと思う。
そういう点でいえば、このジェシカ・ウィリアムスは実に立派なアーチストなのである。

IGOR PROCHAZKA TRIO 「Easy Route」

2008年12月16日 | Piano/keyboard

今年リリースされたこのアルバム、なかなかの評判だ。
知らないのもしゃくに障るので早速手に入れたのだが、聴いてみてすぐに見せかけだけのシロモノではないと感じた。
イゴール・プロチャツカ(読み方に自信なし)の弾くピアノはそれほど前に出てこない。
時々、印象に残るフレーズが出てくるものの、全般的に奥の方で流れるようなメロディを刻んでいる。
飛び出してくるのはクリスチャン・ペレスの強烈なベース。
もう最初から終わりまで〝ぶいぶい〟いわせている感じだ。この迫力がアルバム成功の一因である。
フェデリコ・マリーニが叩くドラムスもコントロールが効いていて実に好印象。この人〝おかず〟の入れ方が上手い。しかも気がつけばいつの間にか4ビートのリズムではなかったりする。新しい風を感じるのはこの人のせいかもしれない。
とにかく3人の若さがとびっきり新鮮なピアノトリオなのである。

しかし何といってもこのアルバムはジャケットが人を惹きつける。
場所がスペインだからこういう眩しいくらいの風景はあちこちで見られそうだが、これをそのままアルバムジャケットにしようとするところに斬新さがある。
私がこのアルバムジャケットを最初に見たときは、すぐにエルンスト・グレルムの「OMNIBUS ONE」を連想した。
そう、あの印象的なレトロバスの写真が使われた作品だ。
その時もハッとしてすぐに買い込んだが、中身の演奏もこのアルバム同様、なかなかのものだった。
やっぱり中身の善し悪しは「顔」に出るのだ。

このアルバムの特徴的なもう一つの部分は、僅か35分という全体の演奏時間の短さである。
「あれ、もう終わったの?」ってな感じだが、私はこれくらいが腹八分目でちょうどいい。
これ以上聴いていると無駄な贅肉が付くというものだ。


WYNTON KELLY 「KELLY BLUE」

2008年12月13日 | Piano/keyboard

外で聴くジャズと家で聴くジャズは違う。
このところは家にいるとヨーロッパ系のピアノトリオなんかをターンテーブルに乗せる回数が多い。
本当はそうでもないのもしれないが、あくまでイメージするとそんな気がしてくるのだ。
実際家ではジャズ喫茶のように大音量で聴くことが難しいというのがその理由かもしれない。
だからといってヘッドホンなんかで聴きたくない。難聴になる原因だし、何よりヘッドホンだと音を身体で受け止めるという醍醐味がない。ただ単に音がでかければいいというものでもないのだ。
だから自ずとかけるジャズはおとなしめのものになってくる。
しかしそんな毎日を過ごしていると、やっぱりジャズは大音量でなければダメだ!という感情がむくむくと頭を持ち上げてくる。
で、おもむろにかけるアルバムはというと、バリバリのハードバップである。
このハードバップ・ジャズは大音量で聴いてナンボのものなのだ。
私にとってのジャズ喫茶は、そんな欲求を満たすためだけにあるといってもいい。

このウィントン・ケリーの代表作「KELLY BLUE」は、正にジャズ喫茶の花形だった。
マイルス・クインテットの「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」やジャズ・メッセンジャースの「モーニン」等と並び、ジャズ喫茶で最初に思い浮かぶアルバムがこれだ。実に当たり前なことを書いているが、このアルバムからはジャズ喫茶で出される珈琲の匂いがするといっても過言ではないのである。
1曲目のイントロを聴いただけでぞくぞくする。ケリーはもとより、ポール・チェンバースのかっこよさにもノックアウトされた。
さらに2曲目の「朝日のようにさわやかに」。この水がしたたり落ちるようなシングルトーンがたまらなかった。
この曲はソニー・クラークの演奏が有名かもしれないが、私は断然ケリーの演奏が好きだったし、この曲のベストがこれだと今でも思っている。
この曲はピアノトリオで演奏されているが、明らかに今流行りのヨーロッパ系の音とは違う。大音量で聴きたいピアノトリオなのだ。
だからこれが気持ちよくかかってさえすれば、そこはちゃんとしたジャズ喫茶なのだった。
私にとってのジャズ喫茶はアメリカそのものなのである。

ANAT FORT 「A Long Story」

2008年12月07日 | Piano/keyboard

いかにもECMの音だ。
ある程度ジャズをかじった人なら、それだけで「そうか~」と思うはず。
はるか遠くから聞こえて来るようなナチュラルな感覚と、そこはかとなく寂しいイメージ、これがECMの音である。

このアナ・フォートという女性、どうやらイスラエルのテルアビブ出身らしい。
全体にヨーロッパ的な雰囲気はあるものの、どことなく国籍不明な感じがするのはそうした彼女の生い立ちによるものかもしれない。
タイプとしては私の好きなトルド・グスタフセンに近い静穏なピアノを弾くが、アルバム全体としてはトルド・グスタフセンよりも表現方法に幅がある。
表現を3度変える静かな「just now」という曲の印象を軸にしながら、時にはクラシカルに、時にはフリースタイルで演奏を繰り広げている。中にはクラリネットやオカリナが登場する曲もあるが、ひょっとするとこのへんが好き嫌いの分かれ道になるのかもしれない。但しこうしたストーリー仕立ての作品は一曲一曲を取り上げて云々いうより、アルバム全体の印象を通じて評価すべきであろう。

彼女に大きな影響を与えているのは、師匠ともいえるポール・ブレイだ。
彼女のインプロヴィゼーションは正しくポール・ブレイから受け継がれたもので、このアルバムもところどころでポール・ブレイ的な表現方法が顔を出す。そうした意味でベースやドラムスとの感覚的な掛け合いも良好だ。
特に大ベテランであるポール・モチアンの知的なドラムには一聴の価値がある。アルバムのイメージを決定づけているのは、このポール・モチアンかもしれない。やっぱり一時代を築いた人の底力は計り知れないものがあるのだ。
これは明らかにベテランと若手のコラボレーションが成功している一枚だ。聴いてほしい。

JELLY ROLL MORTON 「Red Hot Peppers,...」

2008年12月05日 | Piano/keyboard

ライナーノーツを見ると、ジェリー・ロール・モートンは1885年生まれというから、私が知っているジャズメンの中ではスコット・ジョップリンの次に古い人だ。
しかも亡くなったのが1941年だから、それからでも既に67年の歳月が流れている。
しかしこんな前の人が残した音楽にもかかわらず、今の時代の人間が聴いても充分楽しめる。これはこの上もなくハッピーなことだ。

私が今聴いているのは1927年吹き込みの「Wolverine Blues」。
曲はもちろん彼の自作だ。
このアルバムは全23曲も納められている。そのほとんどが彼のグループであるレッド・ホット・ペッパーズの演奏で占められているのだが、この曲と「Shreveport Stomp」、「Turtle Twist」がトリオでの演奏である。
しかし今のピアノトリオとは違い、ピアノ、ドラムス、クラリネットによるトリオ演奏だ。
主役はあくまでクラリネットかもしれないが、ここでのジェリー・ロール・モートンのピアノは生き生きしている。
ラグタイムピアノの神髄ここにありき、である。
この絶妙なスイング感は、いい時のドロシー・ドネガンの演奏にも通じており実に楽しい。

ジェリー・ロール・モートンはジャズメンとして決して恵まれた人ではなかったようだ。
時は折しも世界大恐慌時代。契約していたレコード会社ともうまくいかず、結局はひとり寂しく病に倒れ亡くなったと聞く。
考えてみれば、今も世界大恐慌になりつつある世の中。
せめて彼の演奏するディキシーランド・ジャズのように、暗いもやもやをハッピーに吹き飛ばしたいものだ。


MATT RAY 「LOST IN NEW YORK」

2008年12月01日 | Piano/keyboard

お薦めのピアノトリオである。
決して派手な曲があるわけではないが、一曲一曲に品があり、マット・レイという人のセンスの良さを感じる。
洗練された都会のイメージだ。
特に印象的なのは、ラストの「Last Call on the Lower East Side」。
短い曲だがとてもおしゃれに仕上がっており、一度聴いたら忘れられない旋律だ。最後にこういうメロディアスな曲が入っていると、やっぱりアルバム全体のポイントが高くなる。何かグッとこちらに近づいてくるような気がして愛おしくなるのだ。
この他、抜けるような青空を連想させる「Where Were You When I Needed You ?」や、明るくテンポのいい「Pent-up House」、ゆったりとくつろげる「El Bosque」「Central Park West」「The Makings of You」なども忘れられない。

最近は私の周辺でもピアノトリオファンが増えている。
つい先日も友人が家に遊びに来て、「ねぇ、何か聴いていて気分がよくなるピアノトリオを聴かせて?」というのでこのアルバムを聴かせてやったら、とても気に入ってくれて、早速メモを取っていた。
こういう風に相手の要求にピタリとはまるとこちらも嬉しい。このアルバムを買ってよかったとも思う。
ついでにニューヨークつながりで、アキコ・グレースの「Manhattan Story」をかけたら、こちらにも感激してくれた。
お陰様で、その後も気分のいい夜を過ごさせてもらった。
めちゃくちゃ単純な性格だ。