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SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

RAY CHARLES & MILT JACKSON「Soul Meeting」

2008年11月24日 | Piano/keyboard

最近レコードプレーヤーの針を交換した。
しばらく交換していなかったのでノイズが入るようになってしまい、数百枚はあろうかというレコードも聴けずじまいだったのだ。
私が愛用しているレコードプレーヤーは、YAMAHAのGT-2000である。
発売当時は衝撃的だった。何せ30kg近くもある巨体の持ち主だから、見た目にもすごい迫力があった。一目で欲しくなり、貯金をはたいて購入したのをよく覚えている。あれから既に25年以上も経つと思うが、未だに新品のような輝きを以て棚の上に鎮座している。
針はこれまでDENONのDL-301をつけていたが、今回SHUREのV-15TYPEIIIとaudio-technicaのAT15Ea/Gを手に入れた。どちらも個性的な音を出す針だ。

今日はそのAT15Ea/Gで、100%のブルース魂を聴く。
タイトル通り、レイ・チャールズとミルト・ジャクソンによるブルージーな対話が聞きものの「Soul Meeting」だ。
この二人だけでも充分過ぎるくらいなのに、ここにケニー・バレルが絡んでくるから、ますますこのアルバムは黒くなっていく。
しかしここではやはりレイ・チャールズの存在が際立っている。
ヴォーカルを一切披露せず、終始ピアノを弾くことに徹していながらも、そのピアノがしっかり彼らしい歌を歌っているからすごい。その溢れ出るようなメロディやフレーズに引っ張られ、ミルト・ジャクソンのヴァイヴが縦横無尽に飛び跳ねるのだ。

本物のソウルとは何か、ブルースとは何か、それを知りたい人はこのアルバムを聴くべし。
ついでにレイ・チャールズの本当の実力を知りたい人にもお薦めだ。

HOD O'BRIEN 「I'm Getting Sentimental Over You」

2008年11月21日 | Piano/keyboard

このブログ、約半年ぶりの再開である。
気が向いた時にだけ書こうと思っているので、またすぐ消えてしまうかもしれないが何卒ご容赦願いたい。

今日は肩肘張らないオーソドックスなジャズを聴きたいと思い、このアルバムを取り出した。
ホッド・オブライエン。いいピアニストだと思う。
ジャケットを見てもわかるように、彼はシカゴやニューヨークの街が似合う。こんなピアノトリオを場末の小さなジャズクラブで聴けたらいいだろうな、と思わせるような演奏だ。
実はこういった楽しみを与えてくれる人が最高のジャズメンなのだとつくづく思う。
アルバムに収録されている曲は全曲いいが、特に「I Don't Know What Time It Was」なんか聴いていると、実にゆったりとした気分にさせられる。どちらかというと突っ込んで弾きがちな「C Jam Blues」も、彼の手にかかれば余裕たっぷりなスイング感を醸し出す。このへんが職人ともいえる彼の真骨頂なのだ。
ケニー・ワシントン(dr)や、レイ・ドラモンド(b)とのコンビネーションも自然で、決して派手さはないがトリオとしての完成度は高い。

このアルバムは日本のSpice of Lifeというレーベルから出ている。
以前ここでご紹介したマティアス・アルゴットソンもここからデビューした人だ。なかなか趣味のいいレーベルだと思う。
今後もがんばって良質な作品を出していただきたいものだ。

MATHIAS ALGOTSSON 「YOUNG AND FOOLISH」

2008年04月26日 | Piano/keyboard

2~3年前から気になっていたアルバムだ。
機会があったら手に入れようと思っていたが、なかなかその機会に恵まれず時間だけが過ぎていた。
昨年の秋だったと思うが、ある日ふらりと立ち寄った街の小さなCDショップにこのアルバムがあった。
印象的な子どもの写真が使われたジャケットだからすぐにそれとわかった。
これは何かの縁だろうとすかさずレジに持って行く。
これでようやく自分のものになったかと何だかほっとした気持ちになった。アルバムコレクター?の悲しい性である。

マティアス・アルゴットソン。
これもまた印象的な名前だ。最初はドイツ人かと思ったが、正真正銘スウェーデンの若手だ。
北欧ではこうした優秀なホープが次から次へと出てくるので目が離せない。おそらく私たちが考える以上にジャズは北欧の生活の中に溶け込んでいるのだろう。
そういえば私が知っている北欧の知人もみんなジャズの愛好者だったことを思い出す。特にピアノトリオファンが多かったように記憶している。
そんなことを考えているとピアノトリオは相対的に寒い地方に似合う演奏スタイルなのではないかと思えてくる。
まぁそれだけ北欧からは優れたピアノトリオが多く出ているということなのだろう。

このアルバムはとにかく全編ハートウォームな雰囲気に仕上がっている。
彼のセンスがいいのだろう、どのナンバーも好印象を持つ。とても繊細で丁寧にピアノを弾いているといった感じなのだ。優しいピアノトリオを聴きたいという方にうってつけのアルバムである。録音状態も良好だ。
なぜ今、ピアノトリオに人気が集中しているかということに対して疑問を持つ方がいるとすれば、この作品を聴けばある程度答えが出るではないかと伝えたい。
決して派手な作品ではない。しかし心に染みるような味わい深い作品である。
ピアノトリオの人気はそうした部分に支えられているのだ。


PAUL BLEY「NOT TWO, NOT ONE」

2008年04月20日 | Piano/keyboard

ポール・ブレイはなかなか手強い人だ。
そんなに難しく考えなくてもいいような気がするが、一度難しく考え出したらきりがない人なのだ。
前衛的といえばその通りかもしれないが、いたってオーソドックスな面もあって一筋縄ではいかない。
要するに自分に正直な人なのではないかと思う。
彼はその時々のインスピレーションを大切にしながら、そのひらめきを音に置き換えていく作業を黙々とやっているのだ。だからインスピレーションが乏しい時の彼の演奏はどうしてもつまらなくなってしまう。まぁこれがこういう芸術家肌のピアニストの宿命なのかもしれない。

このアルバムは旧友でもあるゲイリー・ピーコック(b)とポール・モチアン(ds)という最高のパートナーに支えられ、彼のインスピレーションが次から次へと湧き出した類い希な作品だ。
この作品はソロ・ピアノとトリオが効果的に配置されている。
ソロ・ピアノではあの名作「Open To Love」を彷彿とさせる耽美な透明感を感じるし、トリオでは3人がまるで楽器を通じて言葉を交わしているようなインタープレイが味わえる。名人芸とは正にこのことだ。
この作品の場合、どの曲がいいかなどということを記するのも憚るのだが、強いていえばソロピアノは5曲目の「Vocal Tracked」、トリオは10曲目の「Don't You Know」が優れた出来ではないかと思う。

この作品は、音楽を聴いているという感覚よりもコンテンポラリーなアート作品を観ているような感覚に近い。
従ってこういう音を素直に受け入れられない人も多いだろう。
それはそれで結構。無理して聴くこともない。ポール・ブレイやECMが好きな人だけじっくり目を閉じて聴けばいい。
ただ、受け入れられた人には研ぎ澄まされた感性が備わっているのかもしれないということを忘れてはいけない。
単純に自分の物差しでいい悪いを決めつけてしまう人は器の小さい人である。
もちろん〈理解する〉のではなく〈感じる〉ことに意味があるのだから、くれぐれも無理は禁物なのだ。
ジャズはただ楽しく聴くためだけのものであってもいいが、感じられるようにもなるとますます面白い音楽なのである。

RAY BRYANT 「LITTLE SUSIE」

2008年04月11日 | Piano/keyboard

レイ・ブライアントはリスナーの掴みがいい人だ。
有名な「Ray Bryant Trio」も、1曲目の「Golden Earrings」でリスナーを虜にする。
このアルバムも1曲目の「LITTLE SUSIE」から彼の独壇場だ。
これだけウキウキするブギウギ調の曲を何の違和感もなく弾けるのは、ジャズ界広しといえど彼だけではないかと思ってしまう。
私たちはこの明快さ・ノリの良さで一気に引き込まれてしまうのだ。
この曲は途中から絶妙なタイミングで手拍子が入ってくる。これがまた何ともいえず快感だ。
クレジットには載っていないが叩いているのはどうやらボビー・ティモンズらしい。さすがにファンキーの権化、ツボを押さえた演奏へのスマートな関与である。

レイ・ブライアントは人なつっこい性格だと思う。
来日数も非常に多い人で私も何度かステージを観たことがあるが、彼は常にサービス精神旺盛で観客をどうしたら喜ばせることができるかに気を配るタイプの人だ。
そんな彼も最近はめっきり歳をとってしまって歩く姿もぎこちないが、それがむしろ愛嬌となって親近感を覚えさせる。全盛期の頃の彼を知らなくても、ステージでそんな彼を見てファンになる若い人もいるだろう。
その存在感は現役で活躍する残り少ない大物の一人であることを実感させる。

彼の演奏はいい意味で大衆的だ。
彼はメロディアスでわかりやすく肩肘張らない雰囲気づくりを得意とする。ブルース・テクニックもかなりのものだ。
72年のモントルー・ジャズ・フェスティヴァルでオスカー・ピーターソンの代役に選ばれたこともそうした意味で極々自然なことだったのだと思う。なかなかオスカー・ピーターソンの代役をはれる人なんていないはずだ。
そんな中、彼はたった一人ステージの上でピアノに向き合って魂のこもった演奏を繰り広げた。
観客は拍手喝采。
これがレイ・ブライアントの底力である。


UPPER LEFT TRIO 「Sell Your Soul Side」

2008年04月07日 | Piano/keyboard

アッパー・レフト・トリオ。
最近最も注目しているピアノトリオの一つである。
まずこのジャケットに惹かれる。
気持ちよく晴れ上がった空に大きな観覧車。差して深い意味はないのかもしれないがずいぶん印象的だ。若さが感じられるし、大きなスケール感もある。そして何よりダイナミックな爽快感がたまらない。
彼らの音は正にこの大観覧車のようにすがすがしい。

このトリオはクレイ・ギバーソン(p)を中心に、ジェフ・レナード(b)、チャーリー・ドジェット(ds)で構成されている。
部分的には結構斬新なことをやっているにもかかわらず、全体を通して聴くと何となくオーソドックスな正統派トリオという印象を持つ。一言でいえば角があるのにそれを感じさせない演奏なのだ。ここが彼らのスマートさであり絶対的な魅力である。
ジェフ・レナードの弾くベースはウッドベースではなくエレクトリックベースなのだが、これが全体に迫力と個性を生み出している。しかしこのベース、フレットレスのお陰で違和感を感じない。チャーリー・ドジェットのドラムも鮮烈でシャープである。
この二人に囲まれてクレイ・ギバーソンの瑞々しいピアノが全編を駆けめぐる。

2曲目の「All I Want」での弾むベース音と大地の鼓動のような深いバスドラムが実に気持ちいい。
このくらい低音が伸びるとスピーカーも嬉しそうに震え出す。
とにかくいろんな面で大満足。買ってよかったと思えるアルバムだ。
しばらくは青空を見上げると思い出しそうなピアノトリオである。




WALTER LANG 「Smile(The Music of Charlie Chaplin)」

2008年04月03日 | Piano/keyboard

全曲チャップリンの曲で占められたアルバムというのも数少ない。
どの曲にもウォルター・ラングのチャップリンに対する敬愛の念が感じられる。心静かにじっくり聴きたいピアノトリオである。

このアルバムは名作モダンタイムスの主題歌であった「Smile」で始まる。
ライムライトと並んでおそらくチャップリンの曲では最も有名なナンバーだろう。優しく誰にもわかりやすいメロディである。
囁くようなイントロからテーマを経てアドリヴに入ると鍵盤の上をラングの指が踊り跳ねていく。この軽いピアノタッチがとても心地いい。またリック・ホランダーのブラシも利いている。
この曲を聴いているとゆったりと時が流れるのを楽しめる。この感覚がピアノトリオの一番美味しい部分だと思う。

このアルバムは全10曲で構成されているが、どの曲も実に美しく切ないメロディラインを持っている。この琴線に触れる優しさに、改めてチャーリー・チャップリンという人の偉大さを感じるのである。天才とは彼のような人を差す言葉なのだ。
彼は私たちの心の奥底に秘めた真の喜びや哀しみを引き出してくれる。彼の曲にはそんな力があるのだと思う。
ウォルター・ラングはその力を最大限に生かしてメロディを奏でていく。
そういう意味でこの作品はどこにでもあるような映画音楽集ではない。立派な作曲家の作品集という位置づけが相応しいと思うのである。

ライムライトのテーマがニコラス・タイズ(b)の弾くアルコで響き渡る。ぱぁっと広がる暖かい夢世界。
人はこんなに優しくなれるのかと思ってしまう。癒される一枚だ。

ELLYN RUCKER 「ELLYN」

2008年03月26日 | Piano/keyboard

エリン・ラッカーはジャケットを見てもおわかりのようにカーリーヘアがよく似合う素敵な女性だ。
彼女はピアニスト兼シンガーである。
言うなればダイアナ・クラールなんかの先輩に位置づけてもいい人だ。
なぜそう感じるかというと、ダイアナ・クラール同様にピアノが上手いからだ。
但しダイアナ・クラールは歌が70%、ピアノが30%という感じだが、エリンの場合はその逆だ。まぁ弾き語りもするピアニストなのである。

彼女のピアノは歯切れがいい。
録音がどちらかというとソリッドだからそう感じるのかもしれないが、少なくともねっとりするような弾き方はしていない。一音一音の鍵盤をしっかり打ち下ろしている。
そんな彼女の魅力を知るにはラストのソロ・メドレーを聴くといい。
このメドレーは「Prisoner of Love~Body & Soul~Wonder Why」と続く。
最初のPrisoner of Love~Body & Soulでは優しくしみじみとメロディを弾き、Wonder Whyに入るとテンポが変わってリズミカルになり、メロディラインに合わせた魅力的なスキャットを弾き語る。
彼女の声はどちらかというと曇っている。だから純粋に詞を歌い込む歌よりこうしたスキャットに魅力を感じてしまうのだ。

このアルバムにはエリン・ラッカー(p,vo)の他、ジョン・クレイトン(b)、ジェフ・ハミルトン(ds)、そしてピート・クリストリーヴがテナーサックスで参加している。
ピアノトリオあり、ワンホーンあり、ヴォーカルあり、ピアノソロありと実にバラエティに富んでいて私たちを飽きさせない。
もっともっと知名度が上がってもいいはずの人である。寡作なのが原因かもしれない。

JEAN-MICHEL PILC 「CARDINAL POINTS」

2008年03月22日 | Piano/keyboard

年度末ということもあって、もうメチャクチャな忙しさだ。
残念ながらゆっくりジャズを聴きながらこのブログを書いている暇がない。それはそれでストレスになるから厄介だ。ここは「エイヤッ!」とばかり仕事の手を止めて、今夜はじっくり良質なジャズを聴いてリラックスすることにした。
そこでCD棚から取り出したのがジャン・ミシェル・ピルクの「CARDINAL POINTS」だ。

私は最近このジャン・ミシェル・ピルクというフランス人にぞっこんなのだ。
軟弱なピアノトリオばかり聴いていると、こういうガツン!とくる作品がやたらと新鮮に思えてくる。
タイプはちょっと違うがエスビョルン・スヴェンソンやブラッド・メルドー、ヘルゲ・リエンなどを初めて聴いたときも同じような印象だった。
要するに「新しい」感覚なのだ。
では何が新しいのだろうか。
彼ら全員にいえることは、アグレッシヴな部分とリリカルな部分が絶妙な形で同居していることにある。その微妙なずれとギャップが心地いいのである。それに加えて彼らは独特のリズム感覚を持ち合わせている。緩急のつけ方も上手い。それと何より独創性のある曲の展開方法が斬新なのだ。
但しどなたにも薦められる作品かといえば、それはNOである。
プログレッシヴなフィーリングを素直に受け入れられる人にだけお勧めしたい。

ジャン・ミシェル・ピルクの演奏の特徴は、最初静かにメロディアスに入っていって徐々にハイテンションになっていく展開が多いように思う。ライヴではそれが顕著に出ているようだ。そこが彼の持ち味であり、観客をエキサイティングに盛り上げる最大の要因なのだ。
まだ聴いたことのない人は一度お試しあれ。私のようにやみつきになるかもしれない。




RALPH SHARON 「The Ralph Sharon Trio」

2008年03月07日 | Piano/keyboard

とっておきのピアノトリオだといいたい。
最近のピアノトリオブームに乗って続々と出てくる新譜もいいが、このラルフ・シャロンのベツレヘム盤は地味ながら名作中の名作だと思う。
何がいいかってまずこのリラックスした大人のムードである。
何の気負いもなく淡々と、しかもスインギーにピアノを弾いていく。正に職人芸という言葉が一番ぴったりする人だ。これはブロック・コードと転がるシングルトーンのバランスがやたらといいからではないかと思う。こう弾いてほしいと思った時に、ちゃんとその通りに弾いてくれる。リスナーにとってこれはまったく嬉しいことなのだ。
彼はトニー・ベネットやクリス・コナーといったジャズ・ヴォーカリストの伴奏者として活躍した人だ。
おそらく相手が望むことを察知する能力が自然に備わっているのではないだろうか。
要するに絶妙のタイム感覚の持ち主なのだ。だから伴奏者として重宝がられた人なのだと思う。
但し全く派手さのない人だ。
自分が主役になることを必ずしも「よし」としなかったのではないかと勘ぐりたくなるくらいの人である。もしそうだとしたら彼は私が思っているとおりの人に違いない。

ジャケットはベツレヘムのお抱えカメラマン兼デザイナー、バート・ゴールドブラッドの作品である。
こちらも泣けてくるほどの出来映えだ。
ジャケットの左下に特大の虫眼鏡で見ないと見えないくらいの大きさで、彼(バート・ゴールドブラッド)の名前が刻まれている。こちらも職人芸だ。
ラルフ・シャロンはまるで学校の先生のような眼鏡をかけて、煙草を薄く銜えている。その口元を見つめていると彼の弾く旋律が聞こえてくるようだ。弾いているのはマット・デニスの名作「ANGEL EYES」のような気がしてならない。