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SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

BUD SHANK 「THE BUD SHANK QUARTET」

2007年05月09日 | Alto Saxophone

私が泊まった山小屋に置いてあったのが、今日ご紹介するアルバムだ。
この山小屋、見た目は古くかなり年期が入っているが、中に入ると床板や柱などが黒光りしていて、オーナーの手入れが行き届いていることが容易に見てとれる。
玄関の大きな靴棚にはスノーシューやクロスカントリー用の板もいくつか並んでいて、この山小屋利用者の顔も目に浮かぶようだ。
食堂兼娯楽室兼居酒屋になる1階の部屋には、ピアノとギターそして簡単なオーディオ装置があった。
そこに置かれていた何枚かのCDの中に、この「THE BUD SHANK QUARTET」があったのである。
こんなところにもいたのかと、古い友人と再会を果たしたような気分だった。それもそのはず、このアルバムは以前毎日のように聴いていた愛聴盤の一枚だったからだ。

バド・シャンクといえば、西海岸の軽快なアルト&フルート奏者であると同時に、あのアントニオ・カルロス・ジョビンにも影響を与えた人だ。彼はローリンド・アルメイダと組んで早くからブラジル音楽とクールジャズの融合を試みた人であり、その功績はもっともっと評価されるべきだ。
演奏はというと、とにかく吹きっぷりがいい。おそらく楽天的な性格なのだろう。それがバド・シャンクという人だ。
そんな彼をまた聴きたくなってこのCDをかけてもらった。
「All this and heaven too」の優しいバラードが薄暗い部屋の中に流れていくと、部屋の奥で談笑していたご夫婦がこちらを振り向いてにっこり笑った。
たぶん気に入ってくれたのだと思う。
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JACKIE McLEAN 「4 5 and 6」

2007年05月03日 | Alto Saxophone

最初の曲でちょっと肩すかしを食う。
悪い意味ではない。いきなりこんなにリラックスした演奏から始まるとは思わなかったから意外だったのだ。
ジャッキー・マクリーンというと、ちょっと濁った音でドライヴ感たっぷりの突っ込んだ演奏を聴かせるアルト奏者という印象が強い。事実彼が評価されているのはパーカーばりの回転のいいアドリヴにあるのだから、いきなりこんな曲を冒頭に持って来られると「あれ? かけ間違いだったかな?」と一瞬思ってしまうのだ。
これは、そんな彼の一面を見せてくれるプレステッジ時代に発表した初期の傑作である。
ただこのメンバーの演奏全てがいいかというとそれは大いに疑問だ。マル・ウォルドロンのピアノは軽快感に欠けるし、ダグ・ワトキンスに長いソロをとらせていることも少々不満だ。彼は主役の脇でウォーキングベースをただズンズンズン唸らせてくれればそれだけで充分なのだ。ただアート・テイラーの正確なドラミングと、マクリーンの快調なアドリヴは全てのマイナス面を差し引いても余りあることには間違いない。

このアルバムはマクリーンのワンホーンで構成されたカルテット、そこにドナルド・バードが加わったクインテット、さらにハンク・モブレーが加わったセクステットという3つの演奏形態が味わえる。アルバムタイトルもそこからつけられた。要するに「4 5 and 6」とは演奏形態の演奏者数を差しているのだ。
私は4が一番いいと思う。


【しばらく留守にします...】
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CHARLIE PARKER 「THE SAVOY RECORDINGS」

2007年04月26日 | Alto Saxophone

聴かなくてもいいが、持っていなければいけないアルバムがある。それがこれだ。
一応、パーカーのことはちゃんとわかっているという顔をしていなければ、一般的に正しいジャズファンとはいえない。好き嫌いの問題ではないし、そんな理不尽なとかいわれても、それが現実なのだから致し方ない。
じつはこうしたことがジャズをオタクっぽくさせている最大の原因だ。
私自身、チャーリー・パーカーはこのアルバムを含め数点は持っているものの、ほとんどちゃんと聴いたことがない。ただ頭の中にパーカーがいかにすごい人なのかといった極々当たり前の知識があるだけだ。

で、久しぶりにこの立派な2枚組のケースを開けて聴いてみた。
音はやっぱり悪い。演奏の後ろでパチパチ・シャリシャリいっている。最初は1944年の録音ものだからそれも致し方ない。
4曲を聴いて次は45年の録音だ。メンバーも替わってマイルスやガレスピーらが登場してくる。曲によっては明らかにノイズが減っている。聴きやすくなった分だけパーカーのアドリブは快調に聞こえるし、アンサンブルもきれいに聞こえる。
6曲を聴いて次は47年の録音。ドナ・リーから始まる4曲ではバド・パウエルも参戦してくる。何だか全員、前に前にせり出してくる感じがする。ビ・バップは本当に熱い。全員が思う存分アドリブを楽しんでいる感じがして、古くなっていた頭の中は少しずつ新しいものに変化していくのがわかる。
2枚目に移って今度は47年プラス48年の録音になる。ここではデューク・ジョーダンやジョン・ルイスが登場し、ちょっと落ち着きを見せる。全体にゆったりした演奏に聞こえるのは、そうした脇役たちのせいかもしれない。

いやはやとにかく楽しませてもらった。初めて聴いたアルバムのような気さえする。
こういうブログを書いていなければ、この作品はいつまで経っても「ただ持っているだけ」のアルバムだったかもしれない。
今度はパーカーの演奏だけに集中して聴いてみよう。きっと何か新しい発見があるはずだ。


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PHIL WOODS 「WOODLORE」

2007年03月27日 | Alto Saxophone

1955年、フィル・ウッズ、若干24才の録音である。
アルトがもっともアルトらしい音色で軽快に響く。
この時代のウッズによるワンホーンの作品といえば「WARM WOODS」と本作になる。両方とも私の大のお気に入りではあるが、何といっても本作には「On a Slow Boat to China」が入っている分、どうしてもこちらをターンテーブルに乗せることが多い。
「On a Slow Boat to China」(邦題:中国行きのスローボート)という曲が一躍有名になったのは、ソニー・ロリンズのデビューアルバム「ソニー・ロリンズ・ウィズ・ザ・モダン・ジャズ・クァルテット」での名演があったからだ。おそらくフィル・ウッズもその演奏を聴いて「よし! オレも」と思ったに違いない。結果はソニー・ロリンズに負けない出来映えとなった。

そういえば村上春樹も「中国行きのスローボート」という短編小説を書いている。彼はジャズマニアとしても有名だが、この小説はそんな曲からのイメージを彼なりの思いでストーリー化したものだった。それくらいこのタイトルから受けるインパクトは大きい。
我々は音楽に限らず、どんな作品でもタイトルやネーミングの重要性をもっともっと認識すべきだと思う。
人の心に入り込むワンセンテンス、ワンフレーズにキレがなくてはダメだ。
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CANNONBALL ADDERLEY QUINTET「in Chicago」

2007年03月17日 | Alto Saxophone

呪縛から解き放たれた開放感でいっぱいの傑作だ。
メンバーはキャノンボール・アダレイ(as)の他、ジョン・コルトレーン(ts)、ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds)、...とくれば、誰の呪縛かわかろうというもの。
マイルスだ。全員、当時のマイルス門下生である。
マイルスの存在感は大きく、いつもあのだみ声で自信たっぷりの指導力を発揮していた。
そんなシカゴでのツアー中に、誰が言い出したか、マイルスのいないことを見計らっての「いっちょ、やるか!」に、「よし!」とばかり、他のメンバー全員が乗ってきて実現したスタジオ録音がこれだ。

注目すべきはキャノンボール・アダレイとジョン・コルトレーンのサックス・バトルで、聴き応え充分だ。
それと面白いのはアルバムの全体構成である。1曲目とラスト6曲目に全員の息が合ったブルースを配置し、2曲目と5曲目にはそれぞれの持ち味を生かしたバラードを挿入、3曲目はアダレイの作品である「WABASH」を、4曲目にはコルトレーンの作品である「GRAND CENTRAL」を配置している。ある意味当然かもしれないが、「WABASH」では圧倒的にキャノンボール・アダレイのプレイがすばらしく、「GRAND CENTRAL」ではジョン・コルトレーンの力強さが印象に残る。
楽観的なアダレイと神経質なコルトレーン、対照的な二人ではあるが、実力はかなり高いレベルで伯仲している。
おそらくマイルスもこのアルバムを聴いて、「あいつら、なかなかやるじゃないか」と思ったに違いない。
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PAUL DESMOND 「EASY LIVING」

2007年03月11日 | Alto Saxophone

「サックス奏者は誰が好き?」と聞かれると、まず最初に「ポール・デスモンド」と答えていた。
彼は私がジャズを聴き始めた頃のあこがれだった。
最初の頃は彼の吹く楽器がサックスだとは思っていなかった。クラリネットか何かだと思っていたのだ。それくらい彼の吹くアルトは角が丸い音色をしている。ジャッキー・マクリーンあたりの音色と比べてみると歴然だ。とても同じ楽器だとは思えない。
彼はそっと囁くように吹いているが、それでこれだけしっかりした音を出せるのは、ジャズ界広しといえど彼一人だけだろう。

久しぶりにこの「EASY LIVING」を聴いてみた。
女房役のジム・ホールによる音あわせのようなイントロから、まるで口笛のようなポール・デスモンドのアルトが入ってくる。このアンニュイな雰囲気にはピアノレス編成、大正解だ。
驚いたのはコニー・ケイの見事なシンバルワークと、ユージン・ライトの強靱なベースだ。これまではポール・デスモンドのアルトばかり聴いていたようで、こんなにもバックがしっかりしていたとは気づかなかった。
しばらく棚に眠っていたアルバムも、改めて聴くと新譜のように感じられることがある。これがその典型例だ。
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LEE KONITZ 「KONITZ」

2007年02月17日 | Alto Saxophone

いわずとしれた「海岸のコニッツ」である。ジャケットデザインは最愛のバート・ゴールドブラッド。
うーん、海岸もこんな風にダブルトーンにするだけでカッコよくなるんだ。と単純に考えて実際に真似をしてみたことがある。今でこそパソコンを駆使すればそれほど難しくないが、パソコンなどなかった時代は大変だった。こんな微妙な色合いを出すのは至難の業なのだということがよくわかり、私の中でバート・ゴールドブラッドの株は急上昇。あこがれのグラフィックデザイナーになった。
というわけで、このアルバムの購入動機もやっぱりジャケットだったのだ。
その後、「Subconscious-Lee」「In Harvard Square」も買い求め、クールなコニッツの魅力にもますますはまっていった。
ただ師匠ともいえるレニー・トリスターノの難解な理論などに興味はない。ジャズをつまらなくするだけだ。
ジャズは感性で聴くに限る。視覚と聴覚、そしてわずかな嗅覚を駆使するのだ。

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