文屋

文にまつわるお話。詩・小説・エッセイ・俳句・コピーライティングまで。そして音楽や映画のことも。京都から発信。

●まだ、この露地は惚けているようだ

2005年02月25日 19時33分52秒 | 日録雑感


露地の角に若者がふたり、べったりと座り込んでいた。
わたしを見通すように、もしくはどこも見ていないそぶりで。
わたしもどこも見ていないような姿勢で過ぎる。
浅い、春やねえ。
きもちの奥底が、冬の最中で
木々の芽だけが騒がしい。
とんと抜ける。
天もまだ、この春の空気を知らない。
いとおしいことも、季節のあいだに挟まれて
身動きとれない。
なんどか出会う、たぶん男の猫も
わたしの、次の空気を知らないのだろう。
もちろん、この露地には
夏も来る、秋も来る。
知らない季節が、幾度も幾度も。
男の猫の、かわいい欲情を
石の面に、露といっしょに
流すだろう。