文屋

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●言葉は京でつづられた。 編集して書いた本の紹介

2005年02月17日 15時46分42秒 | 文学全部
ちょっと前だけど、『言葉は京でつづられた。』という本を編集執筆した。
京都モザイクという、軽装なMook本。(青幻舎刊)
遅ればせながらPRしておきます。多分全国の書店でもとめられると思います。

普通の「京都文学散歩」みたいにしたくなくて、ちょっと変わった著者も選んだ。

たとえば、西東三鬼。三鬼といえば、神戸を想起しますが、
京大俳句事件との関連から、きっと京都との関連はあるはずと、調べた。

昔、角川から出ていた、「西東三鬼読本」で、自句自解を見つけて
ある句を、京都でのできごとを材に書かれたことを特定することができ
掲載した。三鬼のことは、まだまだ謎が多い。
昨年、近しい句友、鈴木六林男も亡くなって、もう、真相を語る人が
ほとんどいなくなった。
それから、九鬼周造もとりあげた。九鬼も調べれば調べるほど、深く、
また、一時期、詩を書いていたことを知る。
この仕事で、いろんな作家の文にふれ、とても新鮮に思ったのは、
漱石と子規の絆。漱石などは「京都といえば、大きな赤提灯である」
などと言っている。なぜ、提灯?と考えて
調べてみれば、どうも、子規と来た京の思い出に根差していたことがわかった。

中也と富永太郎とのことは、前々からよく知っていたのでおどろかなかった。

もっともおもしろかったのは、
「黒髪」の作者、近松秋江。めめしき恋情が、むしろ男の男たる強さでもあるなどと
サディスティックな倒錯を感じた。
これを読んだ以後、私小説を撫でるように読みつづけて、
宇野浩二という異彩に、出会う。
「蔵の中」は、スラップスティックで落語的で
悲惨さに、笑えたほど。


「言葉は京でつづられた。」

ぜひ、読んでください。