久しぶりに面白い時代小説に出合いました
青山又平氏の『つまをめとらば』。
連作短編集なのですが、どれも粒ぞろいです。
端正で切れ味鋭い文体は、一見ドライな印象ですが、その中にハッとするような抒情的な表現があって、久々に出合った美しい日本語に感激し、じっくり味わいたいと時間をかけて読み進めました。こんなことは本当に久しぶりです。
ご本人曰く、「銀色のアジ」を目指しているとのこと。マグロでも鯛でもない庶民的な魚であるアジは青魚と呼ばれますが、実はそれは死後の色であって、生きたアジは銀色をしている。つまり、「生きた大衆」を描くことを心がけているのだと。
どれも面白いですが、なかでも印象に残ったのは『逢対(あいたい)』。人生の塩辛さと少しのファンタジーの配合が絶妙で、ままならない世の中で、愚鈍なくらいまっすぐに生きていくのも悪くないと思わせるお話でした。
折あるごとに読み返したい、そんな短編集です
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