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『獅子』 池波正太郎

2017-01-07 21:24:14 | 真田丸

 

「40歳を過ぎたら人間は死を見つめて生きなくてはならない」

数多ある池波正太郎の名言の一つです。

その池波氏40歳代後半~50歳頃に書かれたのがこの『獅子』。去年さんざん追いかけた真田信繁(幸村)の兄、信之の物語です。

90歳を超える長寿を保ちながらお家騒動に巻き込まれて穏やかならぬ最後の日々を送る信之ですが、その揺るがない生き様(死に様)は末期を迎える人間のあり方の一つの理想です。

『真田丸』の余韻もあり、真田といえば華やかに散った弟に目が行きがちですが、腹を据えて領民に身を捧げ続け、真田の家を残すために艱難辛苦に耐え続けた、地味だけれど、とても根気のいる生き方をした信之の実直さを池波氏は愛したのだと思われます。

『太平記』を読んだ方ならご存知でしょうが、腹心の部下であり、竹馬の友である「あの」右近が80歳を過ぎて元気に登場するのが嬉しいです^^ 文字通り身も心も信之に捧げ、こちらも美事な生き様を見せてくれます。

この世に生を受けた限りは、常に前向きに生きるべきではありますが、さりとて永遠の命を授かったわけでもなく、時が来れば、身じまいをしてこの世からおさらばするのも世の習いです。「その時」をどう迎えるか。真摯に死を見つめながら命を燃やす池波氏の姿が浮かんでくる小説でした。

 


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