梅田阪急の文楽展で展示されていた丸本。
次は何か書こうかと考えていた折、大阪(正しくは大坂)を語るうえで欠かせない人物にまだ触れていないのに気が付きました。近松門左衛門です。
「演劇を学ぶ上で必ず読まなければいけない作家は、西洋がシェイクスピア、そして日本は近松です」
学生時代に履修していた演劇学の講師の言葉ですが、それほどまでに重要な作家なのに、案外、東京ではその作品の上演機会は多くありません。
くらべて関西は浄瑠璃でも歌舞伎の演目でもよく目にします。やっぱ大阪やねえと感心しきりです。
義太夫節には大阪弁のアクセントが反映されているという話もありますから、ナマな手触りは関西人の方が強く感じるのでしょう。
というわけで今月は、ちょいちょい近松ゆかりの場所を紹介していきたいと思います。
まずは、近松門左衛門と組んで数々のヒット作を送り出した竹本義太夫が開いた竹本座跡。道頓堀にあります。近松が活躍した元禄時代(赤穂浪士討ち入りの頃ですね)、道頓堀は有数の劇場街でした。
今は石碑をとどめるのみ。
現在の道頓堀。
おそらく当時もエネルギーに満ち溢れた場所だったと思われます。さまざまな人間の欲望がひしめく街で、人間の情念渦巻く芝居が上演されている。1960年代の東京のアングラ演劇全盛を思わせる熱量だったのでしょうか。観る人にとっては、この上なく刺激的な体験だったにちがいありません。