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迷狂私酔の日々(再)

明鏡止水とはあまりに遠いこの日々。

最後に飲茶【2011雲南】DAY14・広州へ飛ぶ

2011年04月25日 | 旅する。

4月25日 月曜日 香挌里拉(中甸)→昆明→広州

【大きな本屋で】
雲南を離れる日になった。今朝は古城ではなく新市街へ北上していく。昨夜のサム教授の話では、その辺に大きな本屋があるらしい。

店内は暗いが開いていた。1階(旅行者向けか地図、写真集)、2階(辞書、教科書)、3階(文学、実用書、他)と、その店舗の大きさと品揃えの傾向からいって公営かそれに近い経営ではないかと思う。

中国地図15元と雲南地図10元を買った。

【逆光に輝くタルチョ】
店を出て古城に戻る。いい天気だ。空は透き通って高く、どこまでも青い。駐車場の客引きたちを笑顔であしらい、何度も歩いたはずの通りでいくつか新しい発見をする。いまさら迂闊な話だが。

強い逆光で人々がシルエットになる。今日もタルチョがはためく。昨日のチベタンチョコレートのカフェを通りがかると、ちょうど女性が外に出てきたところだった。挨拶して、朝食を食べようかと店内へ。暖炉そばでなくあえてテーブル席を選ぶ。

【ヤクのチーズで朝食】
トーストにヤクチーズ載せ20元と、別にコーヒー15元を頼む。

米米クラブ好きのダンナが起きてきた。寒くないか? と聞くので「BECAUSE I WAS BORN IN YAMAGATA、YOU KNOW.」と答えると、彼は「ああ、そうだったね」と山寺の思い出を語りはじめた。

【BLACK POTTERY】
この近くに温泉があるそうだ。「妻の姉妹たちやシェフもいるし、温泉にランチを楽しむハイキングはどうだい? 妻の親類がやってるから安く行けるよ」と誘ってくれたが、残念ながら今日の飛行機で帰ることになっている。
「昆明から広州か。暖かくて、おいしいところだね」
女性は尼西(ニシ)の出身で、そこは昨日バラクソンへの往復で通ったところだ。このカフェの名前でもあり、展示しているBLACK POTTERYは地元の特産。染めて黒いのではなく、二度焼くことでこの色が出るという。

【小さな本屋で】
カフェを出てさらに東へ。また広場にやって来た。孫を子守りしている祖父母らしき風景に心を和ませる。

ゆるやかな笑顔が青空に映える。やることがないので、再び朝陽楼まで登る。石屋根の波、はためくタルチョ、巨大なマニ車。

帰り際に小さな書店に寄ってみた。曼荼羅の図版集があればいいな、と思ったが、適当なものが見つからない。さっきの大きな書店と違い、チベット仏教、文化に関する書籍類が多い。ここでJames Hilton "LOST HORIZEN"(英語版)を購入、25元(約313円)。

【タクシーをシェアして空港へ】
11時30分にはパッキングを終えて宿の中庭へ。

中庭でストーブを囲んでiPadを開く。メールチェックをして、iPadに入れてある旅行写真をアンドレに見てもらう。「ナーリ(ここはどこ)?」と聞くしぐさがかわいい。

アンドレのすすめで同宿の客とタクシーをシェアすることになった。実は早めに出たいのだが、「TOO EARLY(まだ早い)」と制される。客はカップルで、昆明に住んでいるそうだ。時間になると二人でタクシーを捕まえに行ってくれた。
「OK、LET'S GO!」
宿を出る。アンドレに「謝謝、再見!」と手を振って別れる。

車内で「タクシーには僕たちが払うから、僕たちに10元を」と耳打ちされた。ドライバーと20元か30元かでせめぎ合いしている様子だ。もちろん任せる。空を切り取るような稜線がきれいだ。10分もしないでシャングリラ空港に到着した。実に近い。

「昆明はいいところだって? 工事中ばかりでよくないよ。でも5年後には、ね。地下鉄は3年後だし」未来への疑いを知らない自信がみなぎっていた。

空港はむやみに広く、巨大な空間ゆえに逆に空疎さが際立つ。カウンターで昆明乗り継ぎ広州までのチェックインを済ませ、トランジットカードを渡される。キャリヤーは中国東方航空。

【50分遅れで飛行機はラサからやってきた】
2階には土産物屋が並ぶ。シンギングボウルがあった。

滑走路の向こうに銀嶺がそびえる。

搭乗開始予定時刻は過ぎたが、まだ搭乗は始まらない。ラサから飛行機はかなり遅れて到着した。

搭乗してすぐに離陸したが、およそ50分遅れになったので、昆明から広州に乗り継ぐコネクションフライトについて機内で質問した。尊大な構えだったCAが急に深刻な顔をしてコクピットへ急いだ。戻ってきて説明することには「昆明空港でのトランジットをアレンジする」という。係員が待っているそうだ。

【乗り換えは裏口から】
昆明空港に着陸。機内通路で人民は我先にと争うが、空港ターミナルまではバスに乗って移動するので急ぐ意味はあまりない。バスを降りて係員に搭乗券を提示すると「ここで待って」と言われ、他の乗客の誘導が終わってからその係員について行く。

「staff only」の通用口から客のいないカウンターに回り、トランジットチェックインの手続きをすませた。つづいての指示が中国語なのでわからないが、仕草を読み取ってエレベーターで2階へ。そこが搭乗ゲートへの回廊だった。空港の裏側から搭乗ゲートまで近道をショートカットしたもよう。

搭乗開始2分前にGATE50についた。土産物屋では雲南小粒珈琲を4桶100元で売っていた。麗江では1桶10元だったのに。携帯茶飲みポットの中に茶葉入れがあるタイプは100元だった。「高い!」と買わなかったのだが、広州白雲空港ではさらに高かった。

【機内食は隣人と同じ】
搭乗ゲートに行列ができていた。今度は定刻らしい。バスに乗り、搭乗、タキシング、すぐに離陸。著しく眠い。しかし、このフライトでは軽食が出る。まずオレンジジュース、機内食のチョイスが不明なまま、隣席が「ミーファン!」(米飯!)と頼んだら、私にも同じものが来た。隣は連れではないし、連れだとしてもチョイスはフツー聞くものだが。

中身は牛肉飯とミニパックの松茸、なめこ(佃煮のようなもの)、りんごチップなど。すぐにドリンクが回ってきたので「coffee! 」と叫んだら、置いてあったオレンジジュースを飲んだカップにそのままミルクコーヒー(砂糖入り)を入れてくれた。この大雑把さが何ともいえない。

【ホテルがあまりに高いので】
18時13分、広州白雲空港に着陸。飛行機が停止するや機内はみんな立ち上がり、携帯で話す大声が響く。荷物をピックアップして出口からホテル紹介のカウンターへ回る。最後の夜なので、ちょっといいホテルで休んで飲茶なんかしたいという思惑は見事にはずれた。

「いまはFAIR(交易会)があって最低でも800元(約1万円)だ」
ただでさえ高い広州のホテルがさらに高くなっている。
「エアポートホテルの方が安い、例えばここなら200元(約2500円)」
空港近くの宿で送迎してもらう方がラクだし、時間も節約できるし、市内への交通費もいらない。明日朝は早い。市内までバスで行って安宿をこれから探すのは面倒だし、飲茶は諦めてゆっくり寝るだけにするか……。川は低きに流れ、人間は怠惰に傾く。エアポート近くの200元のホテルに決めた。ちなみに200元は今回の旅行ではいちばん高い宿代になった。

【100元の使い道はあるか?】
ホテルは広州人和怡東酒店、GOOD EAST HOTEL。カウンターでずいぶん待たされたあと、愛想のない警備員のような女性に無言で誘導されて出発階の3階へ。すぐ外の駐車ラインにホテル名を書いたバンが停まっていた。荷物を抱えて乗り込む。出発客を空港に送ったクルマを動かさずに乗る人間の方を移動させるのが中国式か。高速を人和で降りるとすぐそこがホテルだった。パスポートと明日朝の航空券を見せ、空港へのトランスポートは朝8:00、モーニングコールは7:30にしてもらう。デポジットは100元。明日朝このデポジットを返してもらって空港で使い切れるかどうか。

【窓のないカビくさい部屋】
エレベーターに向かう。オヤジがひとり先に乗っていたが、待つこともなく扉を閉めて平然と上がる。もはやそんなもんだろうと驚きもしないが、ひと呼吸おいてボタンを押したらすぐに扉が開いて、ひとりで先に上がろうとしたオヤジを止めるかたちになった。意図せず、マナー知らずに逆襲した気分。

カビくさい、窓のない部屋だった。広く、ダブルベッドで浴室にはバスタブもあるが、普通の時期ならこの部屋に200元は払わないだろう。後学のために宿の案内とルールを読む。空港送迎無料に加え、市内へのトランスポートも1回は無料らしい。1階にレストランとカフェ。CHINA NETのWiFiもあるが、ログインが必要だったので試さなかった。

【物流の街】
夕食に行こう。階段を降りると右手に「餐庁」のドアがあったが、無視して外へ。今ごろになってカーゴパンツのポケットから20元札を2枚発見した。たぶん60元の買い物に100元出した時のお釣りだろうが、いつだろう?

「超市(スーパーマーケット)」という名の小さな売店があった。日本にも時々「○○スーパー」という名の個人商店があるけれど。隣に大きなスーパーもどき(百貨超市)があり、道路に面して大型テレビが並ぶ。そこに人々が集まっていて、まるで街頭テレビのようになっている。暑い地域では日が暮れてから外で涼む習慣があるので、その延長かもしれない。

食堂がいくつか並んでいて、意外に繁盛している。「空港に近い」と聞いて閑散としたエリアを想像したが、どうやら高速道路の近くで物流拠点や工場が進出しているようだった。郊外住宅地とは明らかに客層が違う。

通りを大きなバスが行き交っている。泊まっているホテルの隣が不夜城のように賑わっていることに気づいた。道を戻ってみれば、さっき無視した「餐庁」のドアを通って行くホテル付属のレストランが、この界隈で一番人気だった。

【最後に広州の飲茶】
システムがわからないまま、席に座る。とりあえず、皿や箸のセットとお茶はきた。菜単(メニュー)を請求するが、要領を得ない。蒸籠や点心をのせたカートが来て、小皿を見せられる。あ、飲茶か!  と今さら気づく。

チャーシューを一皿、タケノコを一皿もらう。いずれも柔らかくて歯ごたえがあり、滋味がにじみ出る。タケノコがしみじみと辛く、ビールを頼む。銘柄がわからないので隣席の瓶を指差して、珠江の生ビールにする。

蒸籠から海老焼売と翡翠焼売を取る。これがまた至福のうまさ。味、歯ごたえとも申し分なく、噛む度に芳香が立ちのぼり、脳髄に沁み渡る。

中国最後の夜、しかたなく泊まった空港ホテルに地元で人気の飲茶があったとは。思わぬご褒美だった。米飯(ミーファン)を頼む。客の回転はよく、夜も遅いのに空いたテーブルが次々と埋まっていく。蒸籠からもうひとつ、焼売系でひと籠に3個の高そうなやつを取って、これで打ち止めにする。できれば、こうした飲茶は大勢でわいわい食べたいものだ。

勘定は計62元(試算例:蒸籠から6元×2、8元×1、チューシュー14元、タケノコ14元、茶2元、飯3元、巾[ティシュ]1元、ビール8元)におさまり、どーにか予想の範囲内だった。

ホテルに帰り、バスタブに栓がないことに気づく。それはシャワーで済ませればいいから問題ないが、どうやら排水に問題があるようで浴室床に水がたまり、なかなかひかない。