迷狂私酔の日々(再)

明鏡止水とはあまりに遠いこの日々。

西洋の残り香【2011雲南】DAY03・沙面

2011年04月14日 | 旅する。

4月14日 木曜日 広州→(昆明)

【湖面をすべる舟の仕事は】
3日目ともなると、おなじみの道になる。いつもの横断歩道を渡り、茘湾湖公園へ。腰の入った太極拳を眺めたり、いろいろ変わったウォーキングに驚いたりしながら湖沿いに歩いていく。

老人たちがカードゲームをしていて、映画《ジョイラッククラブ》を思い出す。あの真剣さは間違いなく金を賭けているとみた。

湖面を静かに渡っていく舟。朝もやのなか、美しい景色だが、やっていることは「掃除」である。浮いているゴミを拾いながら舟は行く。

昨日は通り過ぎただけの西関大屋だが、今朝は運河に降りて水路沿いに歩いてみる。ここでもすべる舟の仕事はゴミ拾い。

故居、バニヤントゥリー、祖廟、小さな通り。風情のある遊歩道は最近整備されたと思われる。

多宝路という道に出た。南へと右折。木々に囲まれた古い道を歩くのは気持ちいい。やがて埃っぽい建設現場に出ると地下鉄「黄沙」駅があり、高層マンションが林立していた。近代が古い世界を暴力的に浸食しているような風景だ。

【旧租界、沙面へ】
歩道橋から沙面に渡る橋を見下ろす。あの橋の向こうが沙面か。 

[注]沙面は外国貿易にあてられた人工島で、運河を掘削することで珠江に面する岸を切り取るようにして作られた。西が英国、東がフランスの租界地で、初期のジャーディン・マセソン商会もこここに本社を置き、後に香港に移転した。この小さな島には19世紀の西洋文化が色濃く残っている。

ようやく沙面に上陸だ。沙面北街をはじからはじまで歩く。

歩きながら朗々と歌う老人もいる。庭で飲茶できるガーデンカフェも。公園では警察か軍隊の小規模な訓練をやっていた。太極拳もあれば、中国の歌謡曲も流れている。目の前を流れる珠江を船が行き交う。

【西洋の残り香】
いたるところに彫像が置いてある。

ちなみに、沙面にはホテルもいくつかあり、ツアーなどでよく利用されているようである。おしゃれな旅行をしたい方はどうぞ。

【茘湾仔艇粥】
沙面を出てあてもなく歩くと海産物干物系市場があった。路地を抜けていくとペット、盆栽系市場が。

ここも抜けると昨日も歩いたツーリスト向けファッションストリートだった。朝食がまだだが、ガイドブックによく出ている○○居はやたら混んでいるのでやめる。茘湾湖の水路には観光船が浮かんでいた。その名も美食園という店がある。こうしたいわゆる「観光」というものに違和感が先に立つ。目くじらをたてて「観光」を忌避するつもりもないのだが。

茘湾仔艇粥(リーワンテンジャイジョウ)なるものを食べてみた。6元。これがうまかった。薄味の粥に、味付けしながら風味を変えて食べるのがよい。艇仔粥とは海上を小舟で売って回ったことからこの名がついたらしい。小エビ、魚の皮、スルメ、落花生などが入っていることが多い(そうだ)。やっぱり中国の朝は粥に限るな。

ホテルに帰ってチェックアウトする。デポジットからおつり179元とレシートが返ってきた。

【火車站という人民の海を泳ぐ】
地下鉄(2元)で広州火車站へ。簡単には駅構内へ入れない。列に並んできっぷを見せ、荷物をセキュリティーチェックしてようやく入口ホールに入れる。電光掲示板では「K365、14:02」が「九在候」と出ているのはたぶん待合室が指定されているのだと思うが、ためしに改札できっぷを見せたら「行け」と言われたので入ってプラットフォームを探す。まだ掲示板には出ていないので番線は聞くしかない。大きな駅にしてはプラットフォームが4までしかないので、当てずっぽうに上がって駅員に聞いてみたら、黙って指を二本立て、降りて隣へ行け、という仕草をした。2番ホームですか。指示通りに2番線に上がるとちょうど隣に遵義からの列車が到着した。ここで駅員にきっぷ見せたら、頷いて隣に止まっている車両を指した。「昆明-広州」のプレートが下がっている。これか。

しばらく待って乗車。きっぷは乗務員がいったん回収し、代わりにプラスチックカード(換車票)を渡される。寝台車特有のシステムで、ヨーロッパでもかつてこういうやり方をしていたような記憶がある。各車両に担当の車掌が乗車名簿をまとめて、これを見て起こしに来てくれるシステム(のはず)である。

噂の改札でのラッシュや乗車時の混乱はうまく避けられたが、瞬く間に車両は人民の海となり、山のような荷物に埋まった。どうやら四川の旅行社によるツアーらしく、機関銃のようにかしましいおばさんが添乗員だった。

【寝台車なのに立つ】
硬臥は上中下三段なのでそれぞれの下段には3人座れるはずだが、ツアーの人々が占拠してしまってスペースがない。デッキは喫煙スペースで、補助椅子にはツアーの添乗員らが入れ代わりに座るため、寝台車なのに立っているという不思議なスタートになった。まあ、撮影をしたかったから窓際にいる事自体はいいのだが。

14:02、定時に発車。

車内販売1がやって来た。スナック、飲み物が中心。
(隙を見てようやく補助椅子に座る。)
車内販売2は果物。
(車掌が身分証を確認していく。)
車内販売3、軽食か(排骨飯みたい)。
車内販売4、鶏モモ肉飯、15元。
車内販売1が再度通る。辛ラーメンのカップ麺もあった。
車内販売2、果物はあまり売れない様子。

高速と並んで走る。大動脈という形容が比喩ではない、スケールの大きい国土開発を目の当たりにする。

車窓がダイナミックに変わっていく。

ついに、わが寝台下段は両側合わせて7人で占拠された。おばさんは踊り、健康法を披露し、大声で話し騒ぎ、おじさんはパジャマにスリッパで歩き回る。

ツアーのみなさんの話し声がたまに静まると、車内アナウンスが流れていたことがわかる。どれだけうるさいのか。

17:40、車内販売5、弁当は木須肉のような卵料理にスープ付きだった。

結局、夕食には別の弁当を購入した。さらに鶏もも肉をすすめられたが断った。スープに味がなく、弁当には炒め煮が二種、串に刺したハンバーグもどき、揚げ卵、小骨だらけの鶏肉がのっていた。これで20元(250円)は暴利だな。

上段にあがるとメモ帳に書くのも苦しい狭さだった。iPod Shuffleを聞きながら寝る。