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迷狂私酔の日々(再)

明鏡止水とはあまりに遠いこの日々。

甍の波を見渡す部屋【2011雲南】DAY11・麗江

2011年04月22日 | 旅する。

4月22日 金曜日 麗江

【早朝は美しい】
朝、パッキングしておいてから出かける。部屋に鍵をかけていたら宿の娘に「今日はどうするの?」と聞かれた。「香挌里拉(シャングリラ)」と答えておく。今日はいい宿を見つけたら麗江に泊まり、なければ香挌里拉に行くつもりだ。

早朝、大半の観光客が目覚める前の麗江の街並みは美しい。獅子山方向へ甍の波がつづいている。昨夜迷い込んだあたりには安い朝飯屋が多い。朝食は「早点」や「早餐」が目印。

【玉龍雪山】
四方街から万古楼をめざして登る。獅子山公園の入場料は15元だった。双景台から玉龍雪山を望む。

いまの中国における旅行ブームは日本なら昭和30年代に旅行とカメラがブームになったころを思わせる。東京オリンピックが1964年、北京オリンピックが2008年。感覚的には符合する。

遊歩道からまっすぐ上る階段の先に万古楼があった。入るときに帽子を脱いで礼したら線香を渡されかけた。あまり丁寧にお参りするのも考えものだな。楼を上がる。北に玉龍雪山、東に麗江の街並みが見える。屋根に延びる隅棟には神獣が並んでいる。

【甍の波がつづく】
広い公園には万古楼からさらに先があるが、西側は省略して山を少し戻る。石段を降りるときにラジカセ(あるいはCDラジオか、もしかしたら音楽プレーヤーかもしれないが、サイズと見た目はラジカセ)を鳴らして歩く中国人観光客に何人か会う。音楽はイヤホンではなく、回りに音を拡散するのが中国流らしい。

ナシ族の祭祀の場らしく、「東巴祈福地」と書いた角をがタープの下に安置されていた。石碑には小さな鐘が取り付けられていて、道の両側に角穴の空いた高い柱が並び、赤や黄の布がたなびいている。

眼下には甍の波。調子に乗って撮影する。南へ向かう。獅子乳泉にはなぜか小鳥が多数いた。双景台には徐霞客の文が石碑に刻まれている。ここは木府(ムーフー)を見下ろす位置にある。

木府に降りる入場口は閉まっていた。戻るしかない。

【木府見物に60元】
坂の途中に朝飯屋があり、五一街よりやや高い。包子が6元だが、五一街では5元だった。四方街から四方客桟脇の路地を南へ行く。途中、路地と紛れてどこかの客桟の中に入ってしまう。ちょっとした迷宮のような道だ。

官院巷を抜け、天雨流芳の篇額の下をくぐると忠義坊前だ。木府への入場チケットは60元もする! 逡巡したが入ることにする。ここでも古城維持費レシートの提示は求められなかった。こういういい加減な運用だから逃票(チケットなしで入場する)を試みる輩が増えるのだと思う。 

木府は背後の獅子山に向かって直線上に建物が配置されている。

議事庁、万巻楼とめぐる。回廊、庭園も整備されている。

精緻な天井彫刻や、独特な屋根のカーブ。2階にあがればさっき登った万古楼がある獅子山がすぐそこにあり、遠くに玉龍雪山を眺める。護法殿、光碧楼と次第に斜面を上っていく。中にはいろんな売り場があって、観光客の財布を緩めようとしている。

玉音楼を見下ろす。団体をやり過ごして休憩。回廊はさらに山を巻いて上り、途中にあずまやがある。

三清殿からさらに上っていくと獅子山公園への入口があった。さっきは閉まっていたところだ。どうやら8時30分ごろから開くらしい。ここが開いていれば、いったん山を下りずにすんだのだが。玉音楼にはけっこう充実したナシ族民族文化の展示があり、ここで麗江の観光は終了ということにした。ふう。

【売れ筋は毛沢東】
官院巷、七一街を北へ。小さな骨董屋があった。 

途中、よさげなシャツを見つけたが65元の値札は予想より高いので買わず。民族衣装の老人ふたりが路地をゆく。

【眺めのいい部屋を探して】
四方街をすぐ抜けて五一街へ、さあ宿探しだ。ちなみに以下の宿を選んだ基準はとくにない。どこも英語はほとんど通じなかった。

1.高家客桟:納西(ナシ)人家ということに惹かれて入ってみた。奥まった部屋が70元、シャワートイレテレビ電気ポットと設備は十分なんだが窓の外が作業小屋で、いかにも場所も作りも低級。
2.苹果樹客桟APPLE TREE HOUSE:部屋はよさげ、シャワートイレは近代的、中庭を囲む2階で気に入ったが、老板(あるじ)が留守で値段がわからず、気のいいにいちゃんと待つことにするが、客が来ても対応できない留守番にまかせる時点で宿のオペレーションとしてまずいんじゃないかと考え直し、他の宿を当たることにする。
3.幸福水岸客桟:掃除中のおかみさんに案内してもらった。80~110元、部屋も設備もいいが、眺めがちょっと。インターネットはあるそうだ。
4.牡丹園客桟OLD TOWN PEONY GARDEN INN;英語はまるっきりダメだが素直そうな娘が真面目に対応してくれた。2階奥のツイン、テレビの代わりにPCがある。設備は普通だが、窓からのながめが甍の波。130元と高いが、ここにする。

「30分で荷物を取ってくる」と言いおいて早足で坂を下る。古月坊の部屋からバッグかついで出たら娘がドアのすぐ外で待っていたので、鍵を渡す。おかみさんが「バイバイ」と手を振る。

【電話中のおかみに炒飯を指定される】
その足で牡丹園客桟にチェックイン。カードキーの代わりに名刺を差して解錠する。いいのか、それで? 宿帳はなく、自分で領収書に氏名、誕生日、住所を書いた(今までの宿もかなり適当だったが)。デポジット70元を加えて200元を支払い、レシートをもらっておく。庭では白い大きな犬2匹が縄でじゃれて遊んでいた。

部屋でiPadで試すと無線LANもあるようだが、せっかくなので部屋の中のPCを立ち上げる。メールをチェック、ニュースに「20km圏内に立ち退き勧告」「田中好子、乳ガンから他臓器に転移で亡くなる」など。

宿を出て目の前にある天和餐庁のメニュー看板を見ていたら、携帯で電話中のおかみさんにいきなりテーブルを指定された。座ると「ツァーファン(炒飯)?! チンジャオロースー(青椒肉絲)?!」と言い渡され、頷いたらそれで決まりだった。メニューによれば8元のはず。

青椒肉絲炒飯は油っぽいがいける。辛くないのが意外。おかみさんは相変わらず電話中で、電話を離さないまま10元札見せて勘定したら2元のおつりをくれた。

さらに東へ歩いてみる。現代アートのような彫刻の店があった。アフリカ風の模刻にも見える。なんでもありの観光客向けかもしれないし、民族伝統の様式を受け継いでいるのかもしれない。

【広州便が高い理由】
格安の値段を掲示している旅行社で、香挌里拉→昆明→広州の値段を聞いてみた。ここは1900元とさらに高い。どうやら広州で大きなイベント(たぶん見本市)があってこの時期だけ高くなっているそうだ。そういうことか、時期が悪かった。

【結婚文化展示館】
崇仁巷を東へ行く。

王家庄にナシ結婚式文化展示館があった。たぶん式場として営業していた、あるいはしているのだろうが、閑散としている。ここにはさっき見た木彫の店と同様の彫像があった。そうするとあれは伝統様式なのかもしれない。

牡丹園客桟に戻って、無線LANのパスワードを教えてもらう。
「謝謝(ありがとう)」
「不客気(どういたしまして)」
なんでもない会話だが、うまくいくと気分がいい。ネットしているあいだに眠くなり、昼寝する。

【汽車客運站まで予行演習】
16時35分、外出。明日朝、汽車客運站(バスターミナルに)歩いて向かう予行演習のつもりでまっすぐ南下する。しかし、南下しているなら西日の影が左側にできるはずだが正面に来る。つまり、東に向かっている。どうやら自然に東側へと湾曲して出る道だったようだ。右手に折れると石橋(南門橋)に出た。幼稚園のお迎えか、大量のクルマが路上駐車していた。

南下、のち西へ。城外から古城南辺へ出入りする道が何本かある。古城南大門を過ぎた先にクラウンプラザホテルがあってそのあたりはタクシーたまりになっていた。さらに西へ歩き、バスターミナルへの分岐標識を確認する。宿からここまで30分くらいか。このへんで戻ることにしよう。

【水路に花、橋に祭列】
まっすぐ北へ。水路沿いにきれいな花が咲いていた。

七一街に出たあたりでなにやら鳴りものつきの行列に遭遇し、橋までついていく。お祭りにしては少人数だが、服装からは少数民族の儀礼のようにも思える。あるいは新興宗教か。

麗江の地理は十分把握したので、違う道を南下してみる。その途中、真美客桟で左手(東)に抜ける。ゆるやかに曲がる道筋、長屋のように続く建物。茶馬街道だなあ、と感慨に耽る。この辺は店の数が多いが、さらに南下すると店が少なくなってきた。

【再び雲南特色菜館にて】
右手に入ると見たような食堂街にぶつかった。ブロックの東側、北側が丸ごとレストランが並ぶエリアになっている。ぐるっと回ると西側も、さらに南のブロックもそうだった。

見覚えがあるのも道理で、一昨日に遅いランチを食べた雲南特色菜館だ。西日で見にくいメニューを読んでいたらオヤジに呼び込まれた。また同じあの娘がメニューを持って来た。

納西烤[火+考]肉28元、納西砂鍋米線8元。メニューを指さして「ミーシェン」と言うと、確認して「ミーシェン」と正しい発音で言ってくれる。大理脾酒6元、「ピージュ」も「ピージュ」と復唱してくれる。オーダー確認作業で発音を習う。どうやらコツはアクセントの位置と高低、口を思い切り動かすことにあるようだ。

お茶がポットで出てきたかと思うと、ビール、肉(揚げた薄切り肉)、米線(土鍋煮込み酸辣スープに極細麺)が素早く揃った。ここの娘は誰かに似ていると思っていたが、いま気づいた。安達祐実そっくりだ。

店のすぐそばではモデル撮影(変身写真)が進行中。カメラマンはあえて逆光で狙って背景をとばし、髪の上に光の輪を作るんだろう。

揚げた薄切り肉はややパサパサで油っぽいが、米線の酸辣スープにつけるとうまい。日が傾いてきた。買った地図がかなりいい加減なことに今さらながら気づく。マイタン(勘定)すると43元だった。夕食ではお茶は1元らしい。

【手書きトンパ文字のTシャツ】
ぐるっとこのグルメ街を回る。ストアーも多く、南大門からツーリストが続々やって来て、店からはメニューを持った客引きが声をかける。これからが書き入れ時だ。

日が沈んで麗江古城の街が賑わいはじめる。あるいは騒がしくなってくる。七一街を抜け、三眼井近くのトンパペーパーの店に入ってみた。ここには水車や祭祀のポールがあり、壁にはトンパ文字(生きている象形文字)が英語と対照表になっている。売っているおみやげのトンパ文字関連商品は300元から。あまりに高い。

手描きTシャツ屋があった。XLしかなく、35元もしたが、手書きのトンパ文字にひかれて買ってみる。

右折、万子橋から崇仁巷へ、左折、くねくねと曲がっていく。公衆トイレに係員がいたが無料だった。しかもニーハオトイレではない個室で、麗江は中国では異質な都市との感を深くする。外国人観光客に向けたショーケースのような。

最後の坂を上れば、日光傾城で昨日と同様にライブをしていた。

【謎の相席】
もうすっかり暗くなっている。日光傾城に入って窓際に座ろうとしたら、拒絶された。なぜか一人では窓側の席はダメらしいのだが、理由が分からないので聞く。やはり要領を得ない。結局スタッフの上司らしい女性と相席であればいいらしい。これはこれで意味がわからない。この女性と少し会話したが、あまり英語は得手ではないようだった。

デザートが欲しい気分だったのでベイリーズを頼んだが、45元(約563円)と驚異的な高価格。今回の旅行で最高の贅沢(という名の失敗)だ。

【ライブの罠】
窓際の端の席では昨日と同じ男がナイロン弦ギターをピックで弾き、アンジェラ・アキに似た女が通りに甘い歌声を振りまいていた。曲は夜来香、スカボローフェア、などなど。店内の客向けではなく、通りの客を呼び込むためのライブだった。

相席の女性に「THANK YOU FOR SHARING THE TABLE.」と礼をいって店を出た。

【タクシーを毎日チャーターして「貧乏旅行」?】
すぐ隣が牡丹園客桟だ。iPadで香挌里拉(シャングリラ)を検索する。あまり参考になる旅行記がない。タクシーを毎日チャーターしておいて「貧乏旅行」と卑下してみせる人もいて、勘違いもいい加減にしてほしいと思う。