徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


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後方乱気流区分

 きょうは七草粥、と聞いて、ふと昨年晩秋の健康診断を思い出してしまいました。メタボ検診とやらで腹まわりを計測されるとあって、一所懸命腹式呼吸の練習をしたものの徒労に終わったでありました。

さて、後方乱気流の投稿が続いていますが、今回は後方乱気流区分についてのお話です。

初回の投稿で、wake vortex の強さは
 - 重量
 - 主翼の大きさ Wingspan
 - 速度
が関係すると書きました。

“デカク”て“重い”飛行機ほど、後方に形成される渦は強くなる訳ですが、ICAO: International Civil Aviation Organization (国際民間航空機関)では、後方乱気流区分 Wake Turbulence Categories を定めています[@ Doc 4444 ATM/501 PANS ( Procedures for Air Navigation Service ) ATM ( Air Traffic Management ) 4.9 WAKE TURBULENCE CATEGORIES ]。

そこには、
4.9.1 Wake turbulence categories of aircraft


4.9.1.1 Wake turbulence separation minima shall be based on a grouping of aircraft types into three categories according to the maximum certificated take-off mass as follows:

a) HEAVY (H) ― all aircraft types of 136 000 kg or more;

b) MEDIUM (M) ― aircraft types less than 136 000 kg but more than 7 000 kg; and

c) LIGHT (L) ― aircraft types of 7 000 kg or less.

と記されており、最大離陸重量により Heavy, Medium, Light の3つに区分されています。

下の図のように、136トン、7トンがそれぞれ境界値となっています。



後方乱気流区分が、何故に ICAO PANS ATM で定義されているかというと、それは後方乱気流が管制間隔に影響するからに他なりません。

飛行に際しては、計器飛行,有視界飛行に関わらず、飛行計画、所謂フライトプランを提出しなければなりませんが、そのフライトプランにも、“後方乱気流区分”を記載する欄がちゃんと用意されています。

下は、ICAO フォーマットのフライトプラン(本邦の飛行計画書もこのフォーマットに準じています)の当該部分です。
(わかりやすくするため、勝手に着色しました)

ICAO FLT PLN ITEM 9 portion

この部分に、航空機の型式と共に“後方乱気流区分”を示す H, M, L の何れかを記入しなければなりません。
書き方説明書 ?にもちゃんと書いてあります。

日に沢山の便を運航するエアラインでは、一便ごとに1枚のプランを提出していたのでは、作成する方もそれを処理する方も大変ですし、何よりも貴重な紙資源を消費してしまうので、 Repetitive Flight Plans (RPLS) という形式で(乱暴ですが、空港のカウンタや旅行代理店などで見かける ○○○ △月時刻表のようなもと思えば良い)予め提出しておきます。その提出フォーム RPL listing は下のようなものですが、



こちらにも、後方乱気流区分を記載する欄があって、こちらの 書き方説明書 ?にも、後方乱気流区分についての記述があります。

以上、後方乱気流区分は、最大離陸重量に基づき、 HEAVY, MEDIUM, LIGHT の3段階に区分されていますよ、とのおはなしでした。


【余談】

『 RPLS で予めフライトプラン提出しておく、って言ったって、その日のお天気やお客さんの状況によって巡航高度(や速度)あるいはルートだって変わるだろうし、ときどき機材変更だってあるじゃないか 』と疑問に思ったあなたは鋭い。

RPLS は後から訂正がかけられるようになっています。

例えば、機材変更やそれに伴う後方乱気流区分の変更、巡航速度,巡航高度を RPLS で提出済みのそれから変更する場合は、可及的速やかに出発予定時刻の30分前までに管制機関に連絡すれば良いことになっています。
さらに、変更が巡航高度だけであれば、パイロットが管制にクリアランスをもらうための initial contact 時に伝えればOKです。

それと、 RPLS への記入項目には、代替飛行場、搭載燃料(持久時間)、搭乗人数、緊急装備品などが含まれていません。これらの項目は「お問い合わせ先はこちら」(例えば AAL Briefing Office みたいに....)を記入すればOKです。

RPLS は、 Repetitive の名が示すとおり、繰り返し・定期的に運航される計器飛行方式でのみ使われるもので、これを提出してもらうことで、管制機関側は、フローコントロールの戦略が立てられる訳ですね。
Comment ( 1 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
厄介者・・・ (speedbird)
2009-01-08 23:38:00
おじゃまします。PAX様。後方乱気流、ほんと厄介者です。後続機は"心穏やかに静まるを待つ"心境ですね。
A380は・・・、次回のテーマでしょうか(笑)。
しっかし、A380が航路上に増えてくると困ったもんですね~(今はそう問題にならないでしょうけど)。管制官も疲れますね(笑い)。
おっと、私も職場の"やっかいもの"扱いされないようにしないと(もう遅いっ!)。


 
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