徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

今度はノースウェスト機 前脚トラブルで事故@GUM

 歳のためなのか、最近は以前にも増して意地が悪くなったオヤジは、引用記事の見出しタイトル“前のめり着陸”に、昨今の本邦での航空関連記事の見出しとは雲泥の差を感じ、「やはり奴らは内弁慶か」と思ってしまうのです。
誇張もせず適切な表現をしているのは外交辞令なのでしょうか。

米国領で発生した米国籍機の事故であり、いくら本土から離れているからと言っても、ちゃんと NTSB: National Transportation Safety Board (米国国家運輸安全委員会)が事故調査にあたるので、日本のマスコミ諸氏には喜ぶようなネタが期待できないかもしれません。

前日も同一機材が Autopilot に不具合を起こして成田に引き返し(ATB)していたらしく、NW社の整備体制を叩くことは出来るかも知れませんが....。

本件、事故の内容はそれなりに深刻なものであり、調査結果によっては全世界を飛ぶ Boeing747 在来形機、あるいは -400 までが緊急点検または改修を迫られることにならないとも限りません。

第一報のときには、「いきなりポッキリいったか」と心配しましたが、その後の報道内容を見るに、当該便は着陸前に Low Pass を行なっていたようですし、Runway に(火災の発生を想定して)泡消化剤を散布した中を降りたようなので、 Cockpit 内の Landing Gear Indicator で Nose Gear (前脚)の表示が Down Lock (緑色のランプが点灯する)にならず、ギアが下りていないか、下りていても Lock がかかっていない(赤色灯が点灯する)旨の表示が出たのでしょう。

飛んでいる飛行機から自機の脚の状態を調べることは困難(床下のハッチを開けて潜り込み、懐中電灯を頼りに前脚の状態を調べることは出来ますが、そこで目視したところで、あまり役には立ちません;床下に潜り込んでゴソゴソ調べるというと、マイアミでのL1011の事故を思い出してしまいます)なので、空港上空を低空で通過(ローパス)し、 地上から脚の状態を双眼鏡で調べてもらうことが普通です。

また、記事内に“空港上空を2回、旋回し”とありますが、これはやや steep な turn をすることで発生するGにより、Gear の Lock が機械的にかかることを期待した Cockpit Crew の操作かもしれません。あくまでも推測です。

目撃者談として“「機首を持ち上げたような姿勢で着陸した。その直後、ザザザーという音とともに機体をこすりつけて止まった」”とあることから、Tail Hit しないギリギリの機首上げ姿勢で16本のタイヤがある主脚を接地させ、そのまま出来るだけ前脚の接地を遅らせるように機首上げ姿勢を保ったまま減速し、もう揚力が耐えられないとなった時点で、おそるおそる前脚をつけたのでしょう。
で、やはり前脚のロックがかかってなかったので、前脚部分の胴体を滑走路にこすり、停止したものと考えられます。

Yahoo.com より Photo (c) Reuters
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Yahoo.com より Photo (c) Reuters
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この類のギア絡みのトラブルは稀ではありますが過去にも事例があります。中には、センサの不良で実際は Lock がかかっていたものもありますし、脚や脚を格納する部分の扉が原因で、脚そのものが出ないこともあります。

昔、羽田発南紀白浜行の東亜国内航空YS11が2つある主脚の一つにトラブルが発生、機体に格納されたままとなってしまい、機長の卓越した操縦技術により、羽田に見事な片脚着陸を行なった事例があります。YS11には燃料投棄の装置がないため、房総半島沖上空で旋回を続け燃料をギリギリまで消費させてからの着陸でした。当該便のT機長は、安全に着陸させることと同時に乗客の不安を取り除くため、様々な状況を想定した見事な危機管理能力を発揮しました。

気になる点としては、記事中の乗客の話として“「前輪が着陸したとき(中略)体が前のめりになったが、多少、衝撃を長く感じる程度で”とあるのですが、当該便の乗客は着陸に際して「衝撃防止姿勢」をとらなかったのでしょうか。これだけの事態なので、運航乗務員は客室乗務員に「 Brace Position (衝撃防止姿勢)をとるように」と指示して、客室乗務員も「 Brace for impact!! 」と叫んだと思われるのですが、果たして周知徹底されたかどうか気になる点ではあります。

某社は社是よろしく今回も乗客のコメントを掲載していますが、流石に「もうNWには乗らない」とか「NWに殺される」といった過激なコメントはお相手がお相手だけに載せていませんね。



成田発NW機が前のめり着陸 グアム、邦人含む3人けが (朝日新聞) - goo ニュース
 19日午後2時20分(日本時間同1時20分)ごろ、グアム国際空港に着陸しようとした成田発の米ノースウエスト航空74便ボーイング747―200(乗客・乗員341人)の前脚に異常があり、機首を滑走路に接触させたまま、前のめりの状態で滑走した。同航空日本地区広報部などによると、機体は滑走路上で停止したが、脱出用シュートで機外に逃げる際などに3人が軽傷を負った。

 着陸前に操縦席下にある前脚に不具合があり、着陸時の衝撃で機体にしまい込まれるか、折れるかしたと見られ、米国家運輸安全委員会(NTSB)が原因を調べている。

 日本領事館などによると、けがをした3人のうち1人は静岡県の男性(71)で、「脱出シュートで降りる際、他人とぶつかって頭を打った」と話し、病院で手当てを受けた。残る2人は米国籍乗員と米国人女性という。

 夏休みを利用して4日間、グアムに滞在する予定だったという東京都の男性会社員(33)は「前輪が着陸したとき、振動がかなりがーっと来た。通常の着陸より、かなり大きな揺れだった」と話した。体が前のめりになったが、多少、衝撃を長く感じる程度で大きな悲鳴などはおきなかった。

 その後、前方からゴムが焼けるようなにおいとともに煙が漂い、前方の乗客が後ろに移ってきた。「このままでは爆発するかもしれない、と思った」。機体から脱出して空港を出るまで4時間以上かかったという。

 現地の航空関係者によると、74便は着陸前、空港上空を2回、旋回し、その間、ノースウエスト航空の整備士らが地上から機体を確認していた。前脚や、主翼下の主脚が、着陸時になっても、機体にしまい込まれたままになっていることを示す表示が出た時の「ローパス」と呼ばれる確認作業と見られる。

 また着陸直前、滑走路に消火剤がまかれたという。

 着陸時は主脚で接地した後、前脚を接地させる。前脚が支えるのは機体重量の約1割で、主に操舵(そうだ)を担っている。

2005年 8月19日 (金) 22:33
前脚壊れ邦人ら3人けが グアム空港でNW機 (共同通信) - goo ニュース
 【ロサンゼルス19日共同】グアム国際空港で19日午後2時15分(日本時間同1時15分)ごろ、成田発のノースウエスト航空74便のジャンボ機が着陸した際、前脚が壊れ、機首の下部を滑走路にこすり停止した。2歳未満の乳幼児7人を含む乗客319人、乗員16人は全員、非常用脱出シューターで機外に避難した。

グアムの日本総領事館などによると、日本人1人と米国人2人が軽いけが。日本人は静岡県の男性(71)で、シューターを滑り降りた際に他の乗客とぶつかり、頭に軽傷を負った。乗客の大半は夏休みの日本人観光客。無事だった乗客も荷物やパスポートが機内に残されたため、空港内に長時間足止めされた。

空港当局や米連邦航空局(FAA)によると、前脚に何らかの故障が発生し、着陸のショックで破損したとみられる。

2005年 8月19日 (金) 21:06
グアムでNW機が前のめり着陸、邦人男性ら3人負傷 (読売新聞) - goo ニュース
 19日午後2時20分(日本時間同1時20分)ごろ、成田発グアム行きノースウエスト航空74便(ボーイング747―200型機)がグアム国際空港に着陸する際、前につんのめり、胴体前部を地面にこすりつける形で滑走路上に止まった。
 乗客と乗員は非常用シューターで緊急脱出したが、日本人男性(71)を含む3人が軽傷を負った。

 同社日本地区広報部によると、同便には乗客乗員計341人が乗っており、多くは日本からのツアー客だった。グアムの日本総領事館によると、日本人男性は脱出時に人とぶつかって頭を打ち、現地の病院で手当てを受けたが、入院する必要はないという。他のけが人は、米国人の女性乗客と客室乗務員だった。米国家運輸安全委員会(NTSB)が原因を調べている。

 事故を目撃した現地企業勤務の川上剛さん(30)は読売新聞の電話取材に、「機首を持ち上げたような姿勢で着陸した。その直後、ザザザーという音とともに機体をこすりつけて止まった」と話した。

 AP通信によると、事故でグアム国際空港は閉鎖され、同空港への到着便は急きょ、グアム島内の米空軍基地とサイパン島の空港に目的地を変更した。

2005年 8月19日 (金) 16:50
<NW機着陸事故>前日もトラブルで成田に引き返す (毎日新聞) - Yahoo! ニュース
 19日午後1時18分ごろ、成田発グアム行きノースウエスト航空74便(ボーイング747ー200型機、乗員乗客335人)がグアム島のグアム国際空港に着陸した際、前輪の軸が折れたため、機首の底部を滑走路にこすりながら停止した。乗客は緊急脱出用シューターで機外に逃げたが、日本人1人と米国人2人の計3人がけがをした。
 現地の日本総領事館によると、けがをした日本人は、家族4人で旅行に来た静岡県の男性(71)。シューターで避難する際、ほかの乗客と接触して頭を打ち、軽傷を負った。
 また、この事故の影響で滑走路は閉鎖され、グアム空港に向かう飛行機は近くの米軍基地を利用している。
 ノースウエスト航空日本支社広報部によると、同機は着陸の際、前輪が降りたものの、滑走路を走行中に前輪の軸が折れ、前のめりの状態になったまま停止した。火災や煙は出なかった。乗客のほとんどは日本人で、夏休み中のためほぼ満席。乗客のうち7人は乳児だった。【川上晃弘】
 ◇前日もトラブルで成田に引き返す
 今回事故を起こした航空機は前日の飛行でも、自動操縦装置の不具合を理由に成田空港に引き返すトラブルを起こしていた。
 国土交通省航空局によると、同機はノースウエスト航空74便(乗員乗客453人)として18日午前9時53分、グアムに向けて成田空港を離陸したが、同10時17分ごろ、異常が見つかって急きょ引き返した。けが人はおらず、機体の損傷もなかったが、同省国際運航課は「同じ機体でなぜ続けてトラブルが起きたのか、ノースウエスト社に原因の報告を求めたい」としている。

2005年 8月20日 (土) 03:02
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コメント
 
 
 
NW (たけし)
2005-08-20 07:59:11
NWにはそれほど珍しくも無い事故ですね。

車輪が降りずに胴体着陸をしたのを、

何度か聞いたことがあります。

アメリカでNWといえば、

事故で有名な会社です、多分。

あ~、またNWか・・・っていう反応なのでは?!

去年、成田でランオーバーがありましたよね、確か。

事故の種類も様々なようですね。

でも、パイロットが熟練(笑)のためか、

死者を出すような大事故はあまり聞きません。
 
 
 
なるほど (PAX)
2005-08-20 08:26:51
「たけし」さん、こんにちは。

アメリカ国内での評判?は知らなかったので、参考になりました。「やはり....」という感もありましたが(笑)

一時期は成田でもTire Burstでかなり有名でして、NWの後に回されないよう色々と努力していたようです。

今では本邦のマスコミ各社の努力の甲斐あって、NWさんのインシデントやイレギュラー運航での知名度は下がりつつありますが。



米国人のパイロットは、飛行経験もさることながら操縦経験が豊富だ、と、小生のとある師匠から聞いたことがあります。降下中などは多少バタバタしていても、いざ着陸となると機体を安定させスムーズに着陸させる、と。

NWで747を担当するくらいなのですから、操縦経験はかなり豊富なパイロットだったのではないでしょうか。
 
 
 
うーん (のぞみくん)
2005-08-20 21:57:13
もう少し情報が入ってから記事を書くべきだったかな…という気が^^;。

ちなみに、ノースもお気に入りの私としては、事故が多い話は耳が痛い(多いのは事実ですが^^;)のですが、着陸は実にスムーズですね。

シルキーとまでは行かないけれど、かなりソフトランディングだったと記憶しています。
 
 
 
ごめんなさいね (PAX)
2005-08-21 06:35:10
「のぞみくん」さん、おはようございます。

NWもお気に入りとのこと。耳が痛い話題とコメントでごめんなさい。次回からは少しソフトタッチで書くようにしますね(メモメモ)。

って、瞬間湯沸し器のような小生には無理そうですから、これまで同様の不躾な書き方になると思います。

が、何ら責めたてる気持ちで書いている訳ではないので、ご理解をお願いします。不快にさせてしまっているかもしれませんが、そこは文才が無く、気の利いた言い回しが出来ないことに起因しているので、何卒ご容赦下さい。



NWにしても、他の欧米系の航空会社では、パイロットは、小型~中型~大型(Boeing機を例にすると、737~757,767~747,777)と経験を積むキャリア・パスが普通で、自然な流れで操縦経験を豊富に積むことができるようです。また、小型や中型にも大御所は残っており、彼らが若い連中をある意味上手に鍛え上げているようです。



ご指摘のように離着陸は概して上手です。上昇・降下じにはかなりダイナミックな舵をあてますし、Thrustもあまり燃費にはこだわらない使い方をしますが、Finalでは風の読み方も上手で、機をピタッと安定させますね。このあたりが「操縦経験豊富」といわれる所以かもしれません。
 
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