徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
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PAXのひとりごと
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RVSM: Reduced Vertical Separation Minimum

 これまで何度か登場している RVSM: Reduced Vertical Separation Minimum (和訳すると「短縮垂直間隔」となります)について簡単に説明します。

先ず、RVSM は IFR (計器飛行方式)が対象となります。その上で、FL: Flight Level 290以上においても 1000 feet の垂直間隔(高度差)を適用する方式です。

非 RVSM 空域においては、FL290 以上における IFR の垂直間隔は 2000 feet ですから、RVSM はその 2000 feet の垂直間隔を 1000 feet に短縮した方式である訳です。

表にすると以下のようになります
*** 非 RVSM 空域 ***
西行き東行き
FL410
VFR(FL400)
FL390
VFR(FL380)
FL370
VFR(FL360)
FL350
VFR(FL340)
FL330
VFR(FL320)
FL310
VFR(FL300)
FL290


*** RVSM 空域 ***
西行き東行き
FL410
FL400
FL390
FL380
FL370
FL360
FL350
FL340
FL330
FL320
FL310
FL300
FL290


この表からも解るように、非 RVSM 空域には割り当てのあった FL290 以上における VFR (有視界飛行)用の高度設定が、RVSM になると設けられていません。
つまり、RVSM 空域では FL290 以上での VFR は認められないのです。
これは、ICAO: International Civil Aviation Organization (国際民間航空機関) Annex 2 (国際民間航空条約第2付随書)にも以下のように記されています。
 Authorization for VFR flights to operate above FL290 shall not be granted in areas where a vertical separation minimum of 300m (1000ft) is applied above FL290.

もう一点、RVSM が導入されると FL290 以上において、“西行き”と“東行き”の高度の割り当てがこれまで(非 RVSM であった頃)とは劇的に変わります。

FL310, FL350, FL390 と言えば、West bound (西行き)の Traffic に assign されていた高度ですが、RVSM 導入以降は East bound (東行き)の Traffic に assign されることになります。

これは、ずっと非 RVSM に慣れ親しんできた航空路管制の管制官の方々やパイロットの方々には、最初のうちは違和感をおぼえることでしょう。

さて、RVSM 空域を飛行するためには、機体が RVSM 適合機である必要があります。垂直間隔が短くなっているので、機体側の高度計測および高度維持により正確さが求められるからです。

Boeing747-400_Cockpit_at_cruise
具体的には、独立した2系統の高度測定装置、自動高度維持装置および高度監視警報装置を装備し、登録国もしくは運航者の国の承認を受けなければなりません。

そして飛行計画、いわゆる Flight Plan の所定の項に“ RVSM 適合機”であることを示す「W」の文字を記入します。

RVSM 適合機が RVSM 空域を飛行するにあたっても、幾つかの制限事項があります。例えば、assign された高度から 150 feet を超えて逸脱してはいけません。
また、次のような場合、パイロットは管制機関に速やかに通報する必要があります。
 (1)機器の故障により航空機が RVSM に適合しなくなった場合
 (2)高度測定装置の redundancy (冗長性)を失った場合
 (3)高度維持装置の性能に影響を与える気流の擾乱(要は激しい乱気流)に遭遇した場合

このような通報を受けた管制機関は、当該機に対して RVSM の適用を一時中断し、2000feet 以上の垂直間隔を設定することがあります。

我が国では、これまで東京 FIR、那覇 FIR の洋上管制区域で RVSM を適用・運用していました(洋上管制区においては、FL410 を超える高度は非 RVSM として運用されている)。

明日、9月30日からは東京 FIR、那覇 FIR、そしてお隣韓国の INCHEON FIR で RVSM が実施されることになります。
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コメント
 
 
 
質問なのですが・・・ (RYO)
2005-12-26 09:35:30
 Flight Simulator 2004をやっていて高度について知りたくてこちらのブログにきました(実際の飛行に少しでも近づけたいのもので(..)(^^)(^。^)(*^o^)(^O^))。こんなに分かりやすく旬な情報を載せていらっしゃるサイトは他に見たことはありません。今後も毎日拝見させていただきます。

 ところで、RVSMの導入が今年9月30日から東京 FIR、那覇 FIR、韓国の INCHEON FIRで始まりましたが、世界ではどのくらい導入されているのでしょうか?具体的なFIRを挙げていただけるとありがたいのですが・・・。
 
 
 
簡単にご回答します (PAX)
2005-12-26 11:17:51
「RYO」さん、はじめまして、こんにちは。

“簡単に…”とさせていただいたのは、具体的なFIRを挙げたらすごい分量になってしまうからです。

然程、世界的には導入が進んでおります。実施計画が未だ無いのは、旧ソ連、中国本土、北朝鮮、および交通量が輻輳していない一部の洋上くらいのものです。

いささか古い資料で恐縮ですが(Japan/Koreaが未だPlanned)↓をご参照下さい。

http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/44/c6/f660cec0d5514713933d4e57b1e20e6f.png



RVSMは1997年に北大西洋のFL330-370で導入が始まりました。その後、徐々に範囲を拡大し、今ではRVSM非適合機が肩身の狭い思いをしているのではないでしょうか。



わかる範囲で適用開始日と適用高度範囲を下に記します。



North Atlantic: Jan 24, 2002 // FL290-410

※West Atltanic Rt Syst (WATRS)も同様

South Atlantic: Jan 24 2002 // FL290-410

Europe-wide: Jan 24, 2002 // FL290-410

Pacific: Feb 24, 2000 // FL290-390

※FL410以上はnon-RVSM空域です

Australia: Nov 2001 // FL290-410

Canada Northern Domestic: Apr 2002 // FL290-410

Canada Southern Domestic: Jan 20, 2005 // FL290-410

Domestic US: January 20, 2005 // FL 290-410

Caribbean/Central/South America: Jan 20, 2005 // **FL290-410

Western Pacific/South China Sea: Feb 21, 2002 // **FL290-410

Mid East: Nov 2003 // **FL290-410

Asia-Europe/South of Himalayas: Nov 2003 // **FL290-410

Japan/Korea Domestic: Sep 30, 2005 // FL290-FL410



**印の領域の高度範囲は各国が公示するAIPによりFIRごとに異なる場合がある。



と言ったところでしょうか。
 
 
 
予想外でした・・・ (RYO)
2005-12-26 21:24:36
 こんなにご丁寧に回答していただき、心より感謝申し上げます。



 RVSMを導入しているFIRはまだまだ少数だと思っていたので、とても驚きました。



 ところで、飛行する区間により高度やルート(エアルート・SID・STAR)は予め決まっているのでしょうか(天候による変更はあると思いますが・・・)?もし決まっているのであれば、それを公表しているサイトはご存知ありませんでしょうか?どこ探しても見当たらないんですよね(*゜。゜)m。★.::・'゜☆
 
 
 
Re: 予想外でした・・・ (PAX)
2005-12-26 23:00:43
「RYO」さん、こんばんは。

仰るとおり、エアルート・SID・STARは予め決まっております。ICAO Standardに則り、各国の当該機関(我が国では国土交通省航空局)がAIP: Air Information Publication (日本では「航空路誌」と言います)により公示しています。

残念ながら、それらの情報を体系だてて載っているサイトを私も知りません。あれば、私も知りたいです(経費節減のために....;JEPPESENやAIPの購読費用を財務大臣へ予算申請するのは常に頭痛の種)。

PACOTS等の洋上ルートは、天候を考慮し、毎日NOTAMで公示されますが、それらは原則TELEXで配信されるものです。このあたりは、若干touchyなのでご勘弁下さい。お役に立てず申し訳ありません。

このブログでは、稚拙ではありますが、私が知る範囲で出来るだけの情報発信心掛けておりますので何卒ご勘弁下さい。

北太平洋の航空路はNOPACルートに加え、日々の天候(主にジェットと悪天域)を考慮して日米双方で公示しています。随分と古い投稿で恐縮ですが、

 http://blog.goo.ne.jp/boeing777-346er/e/6fd42cec94a6fcf5569e1d60fd5905e1

 http://blog.goo.ne.jp/boeing777-346er/e/837b18aacb45aeba04cee14e8650c0f2

 http://blog.goo.ne.jp/boeing777-346er/e/382bc3b42f3b7971c9463c0839be05b3

 http://blog.goo.ne.jp/boeing777-346er/e/7519fd36cd6ed294eac33d51fa5b48fc

あたりが参考になるかもしれません。



国内の航空路やSTAR・SIDに関しては、イカロス出版から参考になる雑誌やムックが出ていると思います。
 
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