オーディオ彷徨録~JBL4331AからALTEC620A~

今までのオーディオの改良や音楽の遍歴に、今後の改善も紹介。いい音に繋がる方法を色々模索したことや、好きな音楽を紹介する。

マイルストーンズ~マイルス・デイビス~

2017-11-22 21:03:13 | ジャズ
 前に、コルトレーンのプレスティッジのアルバムが好きだと言う話のところで、表の中でハードバップの最盛期と云える’58年2月、3月に録音されたマイルストーンズを挙げたので、それについての話です。2/12にアップした”マイ・ファニー・バレンタイン”と同様私のお気に入りです。マイルストーンズの意味は、通過点、節目ということですが、まさにハードバップからモードへの通過点という記念碑的アルバムです。

 ■1)トレーンから見た”マイルストーンズ”前後について
 これについては、前に出した表をもう一度見てみましょう。

 これで見ると、コルトレーンとしては、歴史的な名演と思っている”ブルー・トレーン”の~6ヵ月後で、これまた私の大好きな”ソウルトレーン”とほぼ同時期の録音となっていますので、ハードバップの一番熱い時期にマイルスとしては次なるモードへ突き進もうとしていた時期の変革期の名盤と思う。この流動的な時期の作品が私は色んな意味で大好きです。流動する意味は、音楽的には、単なるハードバップからトレーンはシーツ、マイルスはモードへ、人的には、麻薬や酒に溺れ遅刻したりと迷惑をかけて、マイルスの元をこの後離れていった、天才ガーランドやフィリー・ジョーが又、この時に別離を予感するような、爆発的にエネルギーを発散させたもの凄いプレイを残したからです。プレイ全体に流れる緊張感とスペース感覚。ハードバップの最高のプレーヤーによる最高のプレイと次の流れの予兆を垣間見れる快演です。

 ■2)”マイルストーンズ”について
 パーソネル:マイルス・デイビス(tp)  ジョン・コルトレーン(ts) キャノンボール・アダレイ(as)  レッド・ガーランド(p) ポール・チェンバース(b)  フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
 1958年2月4日(3曲目以降)、3月4日(1曲目、2曲目)にN.Y.コロンビアスタジオにて録音
 いやー、メンバーが凄い。いずれも、リーダー・アルバムを持っている、後のジャズ・ジャイアンツというようなメンバー達です。神童と天才の集まりをコントロールする猛獣使いのようなマイルスと言ったら良いのでしょうか。キャノンボールについては、ほぼ同時期(’58年3月9日)に名盤”サムシン’エルス”を録音しているので乗っている時期です。
 以下、ジャケットですが、表のマイルスの決めポーズが何とカッコいいんでしょう。


 ■3)”マイルストーンズ”の各曲について
 以下に、感想を簡単に。私が好きなのは、やはり表題曲”マイルストーン”と”Two Bass Hit”とガーランドのトリオでの”ビリー・ボーイ”です。

1.”Dr.Jackle”5:46(作曲:ジャッキー・マクリーン、マクリーンとの録音はゆったりしたテンポでブルージー)
 このアップテンポのブルースの聴き所は、マイルスのソロからのトレーンとキャノンボールの真剣勝負の4バース交換です。これはスリリングそのもの。丁度、トレーンとロリンズの”テナー・マッドネス”のように、どっちも譲らないぞ!という気迫を感じる。また、神童チェンバースの弓弾きのベースもスインギーで安定感のある乗っているウォーキング・ベースが聴ける。マイルスの快調なテーマに戻って、サックスが絡んでドラムも割って入ってホーンのユニゾンで緊迫したやり取りの後エンディングも痺れます。

 2.”Sid's Ahead”(ラジオのDJでマイルス出演のコンサートもプロデュースしたシンフォニー・シッドに捧げられたマイルスのオリジナル曲で、マイルスとはギャラの支払いで揉めた事も)
 マイルスとして、初めてモードをお披露目したブルース曲と思う。モードとしては中途半端で模索段階という感じ。珍しくマイルスがソロの合間にピアノを弾いているが、これはガーランドがマイルスとケンカして帰ったためとか用事で帰ったからとか真相はともかく、ガーランドはいない。しかし、いかんせん、曲が地味なので、各人のアドリブは凄いのであるが、飛ばして聴くことが多い。聴き所は、やはりマイルスのしっとりとしたクールなソロ。しんみりとした寡黙なブローとタイミング良くとったスペースとの対比が、ケニス・タインナンが言うところのDUENDEの世界に私達を連れて行きます。正に、都会の夜の世界という感じなんです。スインギーでクール。キャノンボールのソロもここでは、”サムシン’エルス”の時より秀逸なプレイをしています。”サムシン’エルス”ではリーダーアルバムということか突っ込み過ぎていました。最後の、マイルスとフィリー・ジョーの4バースも良いです。

 3.”Two Bass Hit”5:11(ディジー・ガレスピー作曲。ビバップが盛りの1947年の作品。 )
 イントロでは、マイルスとサックスが交互に出るが、ここでの聴き所は、フィリー・ジョーのドラムスとシンバルのバッキング。バックで超絶のテクニックでパルシブでスインギーな演出をしています。世界一のドラマーですね。次の聴き所は、次に続くトレーンの疾走するアドリブライン。得意のイデオムも随所に見せ、乗っているのが判る。続くキャノンボールもハードバップの好演。短いドラムソロを挟んで、ソロを採らないマイルス主導でエンディング。

 4.”Milestones”5:42 (マイルスのオリジナル曲)
 タイトルチューンですが、最初に発売された時の曲名は、”マイルス”だったが、後でタイトル名と同じななったとか。ここでの聴き所は、最初にソロをとるキャノンボールのエレガントなアドリブ。私の大好きなアドリブラインで目まぐるしく変わるアイデアで展開される。ここでのキャノンボールは、珍しく上手く抑制を効かせている。次の聴き所は、マイルスのシンプルだが印象深いソロ。モードの定義は、『決められた音階で演奏する。その音階の音を使ってアドリブせよ』と云うことらしいが、識者によると、実際にはこの曲では音階外の音もかなり出ており、音階の音だけだとジャッジーにならないようです。それはともかく、マイルスのソロが秀逸。緊張感溢れる静寂のDUENDEの世界に痺れます。続くトレーンのアドリブも、キャノンボールに負けず劣らず、シーツの香りのアドリブを、これでもかと繰り出します。最後のユニゾンでのフェードアウトも粋ですね。

 5.”Billy Boy”(米国の伝統的なフォークソング)
 今までの曲では、ガーランドは、珍しくソロをとっていません。この曲は、その分ピアノトリオになっています。マイルスが、”俺のグループにはこんなに凄いピアニストがいるんだぞ”ということを誇りたかったからトリオになったとか。また、喧嘩していたガーランドが”こんな凄いピアニストがもうじき居なくなるんだよ、マイルス”と反発して熱演したとか、真相はともかく、素晴らしいプレイです。この疾走感は堪りません!私の超お気に入りの超絶の疾走感を味わえる、フィ二アスのCABUに勝るとも劣らない好演”神技の連続”です。もう一つの聴き所は、チェンバースの弓弾きのプレイで、超乗り乗りでガーランドにインスパイヤーされて、スインギーでスピード感溢れる超絶ソロを聴かせてくれます。更にもう一つの聴き所は、その後のフィリー・ジョーとの4バース。これは、生唾もので凄い!4バース毎に両者共に異なるアイデアが光る。ピアノもそうだが、ドラムスもバネの利いた切れ味鋭い切れ切れの4バース。不思議なことにこの曲の快演を聴いているといつの間にかボリュームが上がっています。そうすると録音が非常に良いのでライブで聴いている感じになります。

 6.”Straight, No Chaser”(セロニアス・モンクの作曲のブルースでですが、完全にマイルス流にアレンジされており、モンク自身はこの解釈を”好きではない”と言ったとか)
 スリーピーの”HOT JAZZ”の1曲目にも良いプレイが残されていますが、やはりマイルスの方が一枚上です。ソロの順番は、キャノンボール⇒マイルス⇒トレーン⇒ガーランドですが、マイルスは、”聖者が町にやってくる”の一節を引用したり遊び心も加えて、他のホーンとは対照的なクールな演奏をしています。ここでのガーランドは、少しトーンを抑えた演奏となっています。これは、最初のうちは普通にアドリブしているが、最後にコードだけで弾いていて、その部分のメロディは、マイルスが1945年にパーカー・バンドの一員として録音したソロの完全コピーであるとか。ガーランドはリーダーのマイルスにおべっかを使ったのだとか、逆に反抗心でそうしたとか、真相はわかりませんが、ビリーボーイの熱演に比べ、最後のほうはトーンダウンしています。

 ■4)You Tube
 今は、フル・アルバムが上がっています。
コメント
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