オーディオ彷徨録~JBL4331AからALTEC620A~

今までのオーディオの改良や音楽の遍歴に、今後の改善も紹介。いい音に繋がる方法を色々模索したことや、好きな音楽を紹介する。

JBL2405+ALTEC620Aの等価回路のLT Spice

2019-05-29 14:59:47 | 回路シミュレーション
 今回はJBL2405+ALTEC620Aの等価回路をLT Spiceで評価してみました。

 ■1)JBL2405のインピーダンスZの周波数依存性
 2405に直列に付けた抵抗は8Ω(実測)です。

 1ピークになっているのは、右側ですのでこれを等価回路に使うことにしました。Zピークで見たf0=6200Hzでした。尚右側の方がFFTではハイエンドは落ち気味です。
 等価回路から計算上で出てくるL,Cは。
 L=Z/ω=Z/2πf=  0.14mH
 C=1/(4π2Lf2)=  4.8μF
です。
 尚、ネット上で2405のインピーダンスのf特を測定しているサイト(JBL D123の電気特性)がありました。それによると、
 ホーンなしでZピークは、 f0=4KHz
 ホーンありでZピークは、 f0=5~6KHz
 で、当方の上記データはオリジナルディフラクションホーン有りですので6.2KHzとの結果はそんなに外れてはいないのかなと思います。

 ■2)JBL2405のインピーダンスから出した等価回路
 これは以下です。R1の上の電圧/電流を表示しています

 上の等価回路から出したLCでは、半値幅が大きくなってしまいますのでLを下げてLC積を合わせるようにしてf0を6.2KHzに合わせています。

 ■3)JBL2405+HPF(6db/Oct)の等価回路
 これに6db/Octの1次HPF(1.5μFのC)をを付けてもZは変わらないのが、以下で、R1の上の電圧/電流を表示しています。

 これの電圧の出力特性は、5.5KHzから低域が落ちています。


 ■4)JBL2405+ALTEC620Aのインピーダンスから出した等価回路
 上記と以前にアップした620Aの等価回路を繋げると、

 604-8Gのウーハーの電位は、R10の上ですが、これは青線(点線は位相)で、同軸ツイータの電位は、R1の上で黄緑線、2405の電位は、R3の上で赤線です。ウーハーの青線の平行部と同軸ツイータの黄緑線が6db下がっているのはR7(4Ω)とR6(8Ω)でできているアッテネータATTを入れているからで、その分同軸ツイータの高い音圧を下げていることを示しているので電位では6dbの差がありますが実際に聴く音圧では同じになっているということです。2405の赤線の5.5KHz以上の平坦部がもっと下がっているのは同様R8・R9でできている12dbのATTを入れている為で、これも音圧をフラットにするためです。

 ■6)上記の合成出力
 JBL2405+ALTEC620Aのインピーダンスから出した等価回路のLT Spiceで3ユニットの合成出力を出すと、

 1.5KHz以上の下がっている部分は、実際の音圧ではツイータの方が高くなっているのでフラットに近いレベルになります。その領域で凸凹しているのは、実数のRでなく、複素数のLCを導入した影響です。

 今後、このシステムのLP2020A+のZobelフィルタのオーバーシュート特性のC依存性も上記等価回路のLT Spiceで見てみようと思います。
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フェルメール展と田能農業公園

2019-05-25 13:26:11 | 日記
 5/11に妻とフェルメール展に行ってきました。5/12が最終日とのことでしたのでギリギリ間に合いました。平日行っておいたら良かったのですが大阪としては大混雑でした。東京はやはり人が多いので、過去に行ってもっと凄かったですが。確かチケットのモギリに行くまでに1時間行列だったりして会場に入ったころは既に疲れていました。

 ■1)会場前
 先ずは、会場の少し手前に黒田藩の門が残っています。

 蔵屋敷の門だったようです。会場前には、券を持っていない人の長い列が、

 私たちは前日に梅田のチケット屋で買っていたのでスルーできてよかった。会場です。

 会場に入ったところに、大きなディスプレイが。


 ■2)会場内
 大阪会場は、ライティングに力を入れているようで、大阪の会社が開発した美術作品専用のライトが初めて使われているので東京より白が綺麗に見えるとのこと。例えば、”取り持ち女”の前は、

 この状況ではヴェールの白の綺麗さは判りませんが。しかし混雑しているので中々近くへは近づけません。
 これだけ混雑していると通常一方通行で場合により強制排出の鑑賞を強制されることが多いですが、ここの係員さんはそういうことはせずに”最前列の方は止まらずに進んで下さい”のみの緩い指示で割り込みも随時可で皆さん上手く鑑賞できていたように思います。余り強く強制されると気分も良くないですから。

 ■3)フェルメール作品
 フェルメール以外にも良いなと思うものは有りました。例えば戦う船を描いたのが雰囲気を上手く伝えていて部屋に欲しいなと思いました。これは、コルネリス・ファン・ウィーリンヘン作の”港町近くの武装商船と船舶”という作品でした。
 フェルメールでは、やはり”取り持ち女”でしょう。フェルメールが風俗画家へ移行する転機となった作品で日本初上陸。

 取り持ち女とは売春斡旋する婆さんで中央に居ます。赤い服の客が右手に金貨、左手は今にも黄色い服の娼婦の胸を弄ろうとする瞬間を捉えています。これから起こることを暗示しています。一番左にいる黒い服の男はフェルメール自身らしいとのこと。これは他に自画像が残されていないのでそうであれば、唯一、貴重ですね。しかし会場で見ていると、この顔が何かくすんでいます。ワザとぼかしているような書き方です。向かって左側に立たないと顔が光ってちゃんと見えないのです。この絵を紹介しているという客観的な立場にいるようです。
 次は、唯一の宗教画と言われる”マルタとマリアの家のキリスト”。”取り持ち女”と同じく画角が大きいので迫力があります。

 新約聖書の一場面イエスが訪れた時熱心に説教に聞き入る妹マリアと、手伝いをしない妹を咎める姉マルタ、イエスは”マリアは正しい方を選んだからだ”と妹を擁護する言葉を呟きます。姉マルタはマリアがぜんぜん手伝わないという訴えをイエスに呟くのにに対し、イエスは答えた。「マルタ、マルタ、あなたは多くのことに思い悩み、心を乱している。しかし、必要なことはただ一つだけである。マリアは良い方を選んだ。それを取り上げてはならない。」 これはマルタを叱責している言葉ではないということです。うーん、まあ人は色々な任務や仕事があるので一概に一方を責めてはいけないということですかね。イエスやマリアの表情が豊かです。宗教的な意味より、当時の人の風貌を見ることができると言う観点では面白いです。
 その次に良かったのは”手紙を書く婦人と召使い”。

 窓の方をぼんやり見る召使いですが、中央に居るのでまるで主人公のようです。一方で熱心に筆を走らせる婦人がいますが、床に物が散乱してることから、慌てて書き始めたという感じです。そこに好対照の空間が作られる。召使いの視線は内心の苛立ちと退屈を意味し、自身が届けに行かなければならない手紙の書き終りを待っているという自分の立場に、不満を抱いていることを示しているという説と、召使いの思わせぶりな態度が、女性が書いている恋文に関してこの二人が何らかの共犯関係(夫人の不倫?)にあることを暗示していると言う説に分かれている。
 フェルメールは、若冲のような人の手で描ける限界を超えたような絵の精細さの方向性ではなく、絵の裏側に隠れていることを想像させるように描き込んでいる点が人気の秘密かもしれません。例えば婦人に内在する相手を含めた事情、召使との関係性、娼婦と客のその後と当時の風俗に対する周りの認識・寓意・教訓や戒め等色々想像させます。

 ■4)田能農業公園
 5/17にクーちゃんを散歩させるのに近くにある田能農業公園に妻と行ってきました。近くに田能遺跡があり弥生時代のほぼ全期間に大集落があったようで、弥生時代の確実な木棺墓の発見は、田能遺跡が初めて。バラが満開でした。入口に入ると白いバラが

 クーちゃんも満足そう。ピンクのバラも綺麗でした。

 左側の周りが赤い輪になっているのも

 クーちゃんをアップに

 橙に近い赤も美しい。

 クーちゃんのドアップ、あ~疲れたと言っています。

 手軽に行けて、犬も散歩できるので助かっています。
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RDA-520のダンピング・ファクターDF測定

2019-05-21 11:50:21 | アンプ
 前回記載しましたが、RDA-520は特に低音が弾む。以前導入直後の感想でウィスリーのチェンバースのベースのダンピングがRDA-520の方が効いていて少し弾みが出やすいというか弾んでいる響きが強いという気がすると書いたが確かにベースのダンピングは小気味いい。これに関して、ダンピング・ファクター(以降DF表記)を測定してみました。

 ■1)DF測定方法
 以下に示す ON/OFF法で測定しました。

 前回LP2020A+やSA8800を測定した時は、実測2Ω台の負荷抵抗RLを用いました。石のアンプは出力インピーダンス(Z)が低いので抵抗分割で出る出力Z側の電位を上げるためにはRLは小さくないと、分解能が悪くなる。ということで今回は手持ちで最も抵抗値の低い定格1.2ΩをRLとして使いました。

 (上)測定風景で、テスターはACで0.132Vで、RDA-520のSP端子に繋がっている白いセメント抵抗が1.2Ω定格です。RDA-520の右端の入力は一番下ですのでUSB入力でPCから入れています。(下)実測は手持ちテスターで1.4Ωでした。


 ■2)DF測定結果
 これは以下で、

 左右は殆ど同じで低域(概ね300Hz以下)を見たいと言う観点で言うと、DF=1.5(AT RL=1.4Ω)ですので、8Ω換算では、8.6です。この値は、2231Aの低域に使っているLP2020A+のDF=31(AT RL=8Ω)に比べても1/3.6程度で、真空管レベルと言えます。出力インピーダンスでいうと、0.93Ω程度ですので石のアンプとしては比較的高いです。出力回路の何が0.93Ωに効いているのか知りたいですね。また、左右の特性がほぼピッタリ揃っていると言う点は設計・製造・品質管理面で優秀と思いますがメーカー(ラステーム)は無くなっていますのが残念。

 ■3)DF=1.5の意味するところは、
 620Aのユニットである604-8Gは、m0=59gと38cmユニットとしては異例の軽さで、しかも磁束密度が低域13000Gaussとアルニコの超強磁界で強制的に制動を掛けているのでダンピングが強力に利いています。従って、石のDFが大きいアンプで鳴らすと低域がプアーになってしまいます。当時(’70年代)は球のアンプが主流で、DFの低い球のアンプに最適化してスピーカーを作っていたと思うのでそういう点ではDF=8.6というのはこの604-8Gの低域にとってはベストマッチングと思います。
 604-8Gの低域LFのオーバーダンピングなことは以下のコンプライアンス実測値Cms=0.15mm/Nで非常に硬いサスということからも判ると思います。

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DACの出力反転

2019-05-17 11:32:34 | アンプ
 RDA-520は特に低音が弾む。以前導入直後の感想でウィスリーのチェンバースのベースのダンピングがRDA-520の方が効いていて少し弾みが出やすいというか弾んでいる響きが強いという気がすると書いたが確かにベースのダンピングは小気味いい。あるデータを取っていてその理由の一端が判ったような気がする。620Aのウーハー密閉化したのでコンプライアンスCms≒0.14[mm/N]と比較的硬いサスになっておりこれに巧くマッチしている。またそれについては別途上げてみます。
 5/3にアップした時に、■4)の最後にDACで出力が反転しているかもしれないとFFTを見て予想しましたので今回はそれについて上げます。
 2020.1.9赤字追記

 ■1)評価しているアンプシステム
 これは以下です。

 赤で示しているRDA-520の出力端子はメインの620Aに繋いでいます。RDA-520からはもう一つ低域用出力が必要ですのでこれは同軸出力で出して緑で囲んだDAC+CX2310経由で70Hz以下をD級アンプから2231Aにに繋いでいます。

 ■2)上記のアンプシステム場合のFFT
 これは以前アップしたように

 全て正相で繋いだ時に~⑨のようにFFTがおかしかったので、D級アンプのみ逆相にしたら⑩のように以前D級アンプ2台を正相に繋いだ時と同様のFFTになったのでDACで反転していると考えました。前提としては、RDA-520のSP出力端子と同軸出力が同相としていますがこれが反転していることは無いでしょう。

 ■3)トーンバースト評価1
 ということで1波のトーンバーストで反転しているかを確認しました。簡易的に評価したかったのでPCオシロで電気的にSP端子電位を測定したためフローティングでオスーオスのステレオジャックを測定用として使用。周波数はチャンデバ70Hzで評価できるように50Hzです。

 ①は■2)の構成図でCX2310を通さずにDACからLP2020A+に繋いだ場合で上の赤線がLP2020A+の+側のSP端子、青線がRDA-520のSP端子です。確かに反転しています。②はLP2020A+とDACの間にチャンデバCX2310を入れた場合で、これも反転していますが、CX2310で1/4波長ディレーしています。
 しかし、RDA-520の青線のパルスがノイズが多くー側のパルスがサチっています。1パルスでは評価できていないのかと思って4波トーンバーストにしたのが、③ですが同じです。連続波にしたのが④ですがこれもー側がピークカットされています。
 
 ■4)トーンバースト評価2
 オスーオスのステレオジャックの+側のどちらかに問題があるのかを切り分ける為にジャックの先端と中間から取っていたオシロ入力を逆転させてみたのが下記。

 今回は赤線(これはPCのマイク入力から繋いでいるイヤホンジャックの先端をRDA-520に繋いだが■3)では先端をLP2020A+に繋いだ)がRDA-520ですが、やはりRDA-520の波形がノイジーでー側が①②③共にサチっています。オスーオスのステレオジャックの+側は2ポジション(先端&中間)共正常というか等価だと判りました。尚、反転しているのは同じです。

 音的にはRDA-520はノイズは全く聴こえませんし音質的にも問題ないのでこの波形は単に測定の問題なのか、実際の波形がこうなっているかは不明です。
 以上の結果からすると、DACかLP2020A+のどちらかで反転している。
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LT Spiceによる70Hzのディップ検証・オスマン帝国外伝

2019-05-10 11:36:51 | 回路シミュレーション
 前回からの続きで、 70HzのディップをLT Spiceで検証することにしました。

 ■1)検証する回路
 低域のみの解析ですので620A(604-8G)のLFと2231A(4331Aの密閉化後)を繋いだと言う想定です。

 左の回路は、70Hz両側クロスと題していますがBlue Moonさんが提案されたLF・HF両方を24db/Octのフィルタでクロスさせた場合で、チャンデバはアクティブですが簡単化のためパッシブでLPFは赤〇、HPFは緑の〇で囲んでいます。クロスは70Hzで計算しました。
 右の回路は、70Hzアドオン方式(片側クロス)と題していますが現状使っているものでLFのみを24db/OctのLPFフィルタでクロスさせた場合です。LPFのクロスは70Hzで計算しました。

 ■2)単体出力(604-8GLFと2231A)のLT Spice
 これは以下です。

 左の回路は70Hz両側クロスで、右の回路は70Hzアドオン方式です。
 黄緑の実線が2231Aで赤の実線が604-8GのLFの電位で、回路上では2231AはR3の上の電位、604-8GのLFはR4の上の電位です。位相は点線になります。左のグラフで黄緑の実線と赤の実線の交点がクロスですが、70Hz付近になっています。
 左の70Hz両側クロスの位相に注目しますと、黄緑(2231A)の点線も赤(604-8GのLF)の点線もほぼ同じ変化で近い値です。
 右の70Hzアドオン方式の位相に注目しますと黄緑(2231A)の点線はフィルタを通っていますので両側クロスの場合と似たような経路で下降し40Hzと90Hz辺りで急降下しますが、赤(604-8GのLF)の点線は問題の100Hzまでは0度で一定です。従って位相は両ユニットで特に40Hz以上で乖離が大きいことになります。

 ■3)合成出力(604-8GLFと2231A)のLT Spice
  これは以下です。

 左の回路は、70Hz両側クロスですが位相が上記で判るように揃っていますので、■2)の黄緑(2231A)と赤(604-8GのLF)が単純に加算されたカーブが■3)の赤線でf0の共振影響の40Hzのピークとかはありますが音圧はf0共振点では上がらない(電気的なもの)のでディップはないカーブです。
 しかし、右の70Hzアドオン方式では、38Hzでピークが発生し50Hzでディップが発生しています。これは実際のディップと周波数は若干違いますが傾向は似ています。上記■2)の位相の乖離が原因と言うことが推測できます。
 実測のFFTで言うと、以下の⑩或いは⑪を再現できているのではないかと思います。


 勿論、通常は両側クロスにするのですがチャンデバをHF側も通すと現状のCX2310では音が鈍ってしまいます。ダイナミックレンジ+SNが不足していますのでもっと良いチャンデバを導入すれば両側クロスも可能ですが良いチャンデバは中々無いようです。

 ■4)アナログチャンデバ使用のアドオン方式でディップが位相差でできることが出ているブログ
 私が尊敬するLEANAUDIOの著者”はちまる”さんが以下の”チャンデバの位相遅れ”のタイトルページで同様の解析をしておられます。アドオン方式の正相どうし、でそれを示されています。 ”位相に急激な変化(約180°の段差)が見られます”という記述です。

 http://cheapaudio.blog23.fc2.com/blog-entry-506.html 

 ■5)オスマン帝国外伝

 残念なことにシーズン2が5/3で終わってしまった。お楽しみが一つ無くなって非常に残念。調べてみたらシーズン3、4までトルコ国内では2011~2014年に放映したようです。世界で90カ国8億人が視聴したとのこと。トルコはドラマ輸出額ではアメリカに次いで世界2位。最初はトルコの国内の大河ドラマ程度と考えていましたが違うんですね。シーズン3,4もBS日テレで放映してくれないかなあ・・・

 このドラマでのお気に入りポイントは、
 ①スレイマン大帝 この役者(ハリット・エルゲンチェ)が威厳が有って渋くて陰りもあり上手い。スレイマン1世は哲学などの学問や芸術を好み、「ムヒッビー(恋する者)」の筆名で詩作を行う詩人であった。ドラマでも正妻ヒュッレムに語りかける時にも詩的なことばが溢れる。現在ならノーベル文学賞の候補にもなろかとも思う。また宝石細工を自分でもやるなど多趣味である。トルコ国内では余りに軟弱な遊び人に描いており実際には遠征に殆どの時間を費やした武勇の英雄を堕して描いていると批判されたが、このドラマはエンターテインメントであり歴史が知りたいなら歴史書を見ろ、と言う反論は正しい。

 ②栄光の時代の物語であること。
 スレイマン大帝の時代は軍事的に成功が続き、オスマン帝国がヨーロッパ諸国・イスラム諸国を圧倒したスレイマン1世の治世は栄光の時代として記憶されている。トルコが凋落した後の時代にスレイマン時代に帰ろうというスローガンが出る位勢いがあった良い時代の記憶があるのでしょう。日本で言えば、血湧き肉躍る戦国時代(スレイマンの全盛時代の~50年後)にあたると思う。そうそうスレイマン大帝は、歴史家(マトラークチュ)を配下に置いていました。何時どこの国を攻め落として支配下に置いたと言うのを記録させるためです。秀吉もそういう人を配下に置いていたと言うことですので英雄の考えることは似ているのかもしれません。

 ③女優が皆美しく品性がある。
 ・ヒュッレム:第三婦人。文句なしの美人。鼻っ柱が強く行動派で権謀術数を屈指し、時には第二婦人マルデブランの息子のムスタファを毒殺しようとします。ドラマではムスタファはまだ生きていますが歴史上では1553年にイラン遠征の最中に長男ムスタファを謀反の罪でスレイマンが処刑したとあります。ヒュッレム役の女優メルイエム・ウゼルリさんは恋人と別れた後にその子供(娘さんは大変可愛い)を妊娠したことが判って自殺も考えたと言う波乱の人生を歩んでいます。その為かどうかは判りませんがこのドラマでブレークして世界的に有名になったのに、シーズン4の途中で降板するというアクシデントを起こしています。表向きは健康上・燃え尽き症候群という理由ですが、翌年娘を産んでいるので妊娠の為かもしれません。ドラマは暫らくの間はヒュッレムをスルーして進めたとのこと。元々トルコ人とドイツ人のハーフでドイツで育ってトルコに移ってきたようで独語、トルコ語、英語のトリリンガルです。お姉さんのカナンさんは僕好みの美人でジャズミュージシャンです。メルイェムさんは2014年12月に中東のお金持ちの家族から500,000ユーロ(6250万円)で夕食に招待を受ける。「そのお金を子供たちを助ける団体に寄付してくれたら行きます」という回答をメルイエムさんがしたら家族側が「それなら、もっと払います」ということでその夕食会が実現したとのこと。中東の家族も受ける彼女も、いやはや豪快。

 ・二ギャール:女官長。但しその後は大宰相イブラヒムの不倫の子供を妊娠したので妻の八ティジェ(この女優も4ヶ国語が話せ、医学も学んだインテリ)に牢屋に放り込まれます。実在の女官ではなく架空の存在。この人も賢女の女官を演じていますが品があって魅力的です。現実の女優はフィリズ・アメフットさんでマケドニア出身でマケドニア語、英語、スウェーデン語、トルコ語等7ヶ国語が堪能な才女で大学は医学部です。

 ヒュッレムは、向こう意気が強く奔放で豪快で行動派なので付き合うとこちらが疲れ果てる愛人タイプ、二ギャールは賢女なので妻にしたいタイプでしょうか。

 ④パルガ人イブラヒム(大宰相) 男優の名はオカン・ヤラブク 声優としての仕事も多く「良い声」というポジションをトルコで確立している。
 ギリシャ北部エピルスのパルガのギリシャ正教の家庭に生まれた。父親はパルガの漁師だった。子ども時代に海賊に誘拐され、奴隷として西アナトリアのマニサ宮殿に売られた。 そこでは皇太子スレイマンがいた。 そこで彼は、同年代のスレイマンと親しくなった。 イブラヒムは宮廷で教育を受け、博学者となった。1520年、スレイマンのオスマン帝国皇帝(スルタン)即位に際し、イブラヒムも皇帝の鷹匠頭を筆頭に、さまざまな地位を得た。 彼は軍事面や外交面で手腕を発揮して、異例の早さで昇進した。 イブラヒムの謙虚な態度に満足したスレイマンは、自分がスルタンの座についている間は決してイブラヒムを処刑しないと誓ったと言われる(信長にも噂がありますが男色関係だったとも)がシーズン2では生きているが、歴史上は最後はスレイマンの命で大宰相に指名されて13年目の1536年に処刑された。
 イブラヒムの処刑の陰には、スレイマンの皇后ヒュッレムの暗躍があったことを示唆する情報もいくつか存在する。 彼女の策略と、スレイマンに対する影響力の増加、また特にスレイマンの長男で王位継承者の1人ムスタファを、イブラヒムが支持していたことが関連すると考えられている。 ムスタファは1553年10月6日、父スレイマンの命により反逆罪で絞首刑となった。 ヒュッレムは、マヒデヴランの産んだムスタファではなく、自身が産んだ子の誰かが次期帝位に就くことを望み、さまざまな策略を巡らせたと言われる。結果的にはヒュッレムの次男セリム2世が帝位に付いたのでヒュッレムの野望は叶った。しかしヒュッレムの死後その弟バヤジット一族をスレイマン(セリム2世を帝位に付かす為)の命でバヤジット一族を匿っていたサファビー朝が処刑してのことだった。

 スレイマンはイブラヒムの処刑を後悔していた。 20年経って彼が自作した詩の中にイブラヒムと思われる人との友情と信頼について強調した部分がある。

 ドラマでは、このイブラヒムとヒュッレムの対立が一つのポイントになっている。奴隷からスレイマンに次ぐNo2の大宰相まで上り詰め、密かに大帝の地位も夢見ている野心家であるが、スレイマンへの思慕と恐怖も混在する難しい役どころを上手くこなしている。自身の将来の不安な航路を示唆するように少し遠い所を見るような視線で見つめる彼に感情移入してしまう。
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