前回最後に言っていたようにSCF(Short Cycle Feedback)的にLPFだけの評価では不十分かもしれないのでQ値の最適値追及の為HPFも入れてLT Spiceでシミュレートしてみました。今回はフィルタについてはバターワースフィルタ(BW)ではなくRDA560で使っているフィルタを対象としました。
5/31 ■8)に実測データを青字で追加
6/1 ■10)の水色字追記
6/1 ■7)に実測データを赤字追記
6/2 ■8)に緑字追記
■1)LT Spiceで用いた伝達関数 (回路は判らないので特性で記述できる伝達関数で)
RDA560のフィルタの伝達関数は(**2は2乗の表記、sは変数でwcはカットオフ角周波数)
・2次のQ指定
2次LPFは、Qを使うと伝達関数は、通常の教科書に載っているのと同じで
G(S)=wc**2/(s**2+s*wc/Q+wc**2) です。(Q=0.707で2次のバターワースフィルタ)
2次HPFは、LPFを対数スケールでwcを対象軸として周波数変換(s/wc ⇒wc/s)すれば得られるから、
G(S)=s**2/(s**2+s*wc/Q+wc**2) です。(同上)
・簡易設定(次数設定)
2n次LPFの伝達関数は、以下と推定した。(n=1(これのみBW2次)、2、3・・・・・・)
G(S)=wc**2n/(s**2+1.4142*s*wc+wc**2) **n です。
2n次HPFの伝達関数は、上記と同様で出せるので(n=1、2、3・・・・・・)
G(S)=s**2n/(s**2+1.4142*s*wc+wc**2) **n です。
4次のみ Linkwitz-Rileyフィルタで、高次はそれの分母の( )内は同じで乗数のみ変えたものすので、RDA560の次数設定フィルタは Linkwitz-Rileyをベースにしたフィルタと言えます。
一応LT Spiceでもスロープとカットオフ点でのゲインがRDA実機と合うのは確認済みですので単体での動作は推定できるが合成での動作まで合うかは?
尚下記で用いたパルスや矩形波の入力波形のピーク電圧は10Vです。
■2)単独ゲイン
前回はBWと比較してRDAのフィルタは肩が丸まっており弾み感で有利としましたが、今回はRDAについて詳細に。以下。カットオフは全て1800Hz。点線は位相ですが、左側の2次Q指定ではLPFは上でHPFは下にあり全周波数で180度の差があるので反転していることが分ります。
左側が2次のQ指定でカットオフ点が上からQ=0.707、0.634、0.577、0.5となります。カットオフ点でのゲインは、上から順に、ー3、ー3.96、ー4.8、ー6dbとなります。これはRDA実機と合致。
右側は次数指定で、カットオフ点が上から、2次、4次、6次、8次です。カットオフ点でのゲインは、上から順に、ー3、ー6、ー9、ー12dbです。これもRDA実機と合致。
尚、4次のみはLinkwitz-Rileyフィルタであり、カットオフ点でー6dbですがLPFとHPFの位相差は0であるので、次の■3)で判るように加算するとフラットになる。図の点線で20Hzで0度で20KHz端でー345度のものが4次のLPFとHPFの位相で、重なっています。
同様に8次もLPFとHPFの位相差は0です。図の点線で20Hzで0度で20KHz端でー692度のものが8次のLPFとHPFの位相で、重なっています。
2次は、位相差が~180度あります。LPFは図の点線で20Hzで178度で20KHz端で8度のもの。HPFは図の点線で20Hzで0度で20KHz端でー172度のもの。
6次も、位相差が~180度あります。LPFは図の点線で20Hzでー3度で20KHz端でー519度のもの。HPFは図の点線で20Hzで178度で20KHz端でー339度のもの。
■3)合成(LPF+HPF)ゲイン 加算
これは以下。
左側が2次のQ指定ですが、カットオフ点では位相が反転してゲインが等しいのでディップします。(位相は常に180度の差があるがカットオフ点以外ではゲイン差が出るのでディップ量が減る)
右側は次数指定で、緑線の2次と赤線の6次は位相差が180度でディップ(ー40db)しますが、青線の4次は位相差=0でフラット、水色線8次では位相差=0ですのでカットオフ点ではゲインはー6dbです。
■4)合成(LPF+HPF)ゲイン ディップ分のみ減算
RDA560では実際には何らの処理をしており大きくディップしないので、とりあえず大きくディップするケース(2次、6次)のみは位相差=180度ですので減算しました。
左側が2次のQ指定ですが、カットオフ点ではQ=0.707、0.634、0.577、0.5の順に、ゲインは、+3、+2、+1.25、0dbとなりQ=0.5のみフラットになります。
右側は次数指定で、カットオフ点でのゲインは2次、4次、6次、8次の順に、+3、0、ー3、ー6dbです。RDA560の実機ではカットオフ点での合成ゲインは2次、4次、6次、8次の順に、0,ー1,ー2、ー3dbですのでLT SpiceでのシミュレーションとRDA560の実機とは若干合成時のフィルタ特性が違う。
■5)合成(LPF+HPF)矩形波応答 (入力矩形波の立上りは35μs、立下りはー35μs、オンタイム2mS)
■4)と同じくディップ分(2次、6次)のみ減算で矩形波応答を出した。
左側が2次のQ指定ですが、LPFの場合とほぼ似ていますが、Q=0.707の緑線はオーバーシュートが大きく、逆に薄い青線のQ=0.5ではアンダーシュート気味です。丁度良いのは、0.577(赤線)付近と考える。
右側は次数指定で、180度位相差があってー側になっている緑線が2次、赤線が6次、位相差=0で+側になっている青線が4次、薄い青線が8次です。次数が大きくなるにつれて立上りが遅れてきます。2次が最良で、2次の中で最適Qを選ぶのが良いと判断できます。
■6)合成(LPF+HPF)矩形波応答
単純な加算も出してみました。
これはF特にディップが出るものもあるので参考です。
■7)単体(LPF HPF)矩形波応答
単体も出してみました。
LPF出力は矩形波状に、HPF出力は+⇒ーのパルス状にでますが、■5)と同様、右側の高次では立上がりの遅延が大きく、左側の2次では上から2番目のQ=0.634程度が立上がりが素直(オーバー&アンダーシュートが少ない)です。
実機の実測データでも下記のように次数が高くなると立ち上がり時間が伸びていきます。8次は実測で0.55mSでシミュレーションで0.7mS、6次では実測0.46mSに対し0.54mS、4次は実測0.41mSに対し0.4mS、2次は実測0.32mSに対し0.28mSなので、大きな差はなく4次はほぼ合う。
実測で2次のQ変化ではシミュレーション程顕著では無いですが、Qが下がると立ち上がりが鈍るので傾向は同じ。Q=0.5で実測0.48mSに対しシミュレーション0.43mS、Q=0.577で実測0.41mSに対し0.37mS、Q=0.64で実測0.36mSに対し0.32mSと若干低く出るが傾向は把握できる。
■8)単体(LPF・HPF)パルス波応答
単体のパルス波応答を出した。使用した入力パルスは、WGで出したパルスの実測に近似した、立ち上がり35μs、立下りー35μs、トップ5μsです。
左側が2次のQ指定ですが、LPFの出力は0V以上で出ているの~+1.5Vの山になります。HPFのの出力は最初に+8V弱のピークが来て、次に~ー4.5Vのディップが出ているものです。
右側は次数指定で、これは2次~8次が重なって複雑になっていてよく分からないですが、高次になると付帯波が出ています。
実測でも同じ波形を観測しています。この時代はオリジナルパッシブネットワークでウーハーが2次、同軸は3次です。
この時代はタイムアラインできていないので水色の〇で囲んだウーハー波が前に来ていますが今は以下のようにデジチャンでタイムアラインしているので重なります。
現使用レシピーは右上の右上の③位の遅延をかけていますので、付帯波Bが丁度消えている状態です。尚ウーハー波はー側ですがCで示します。
■9)合成(LPF+HPF)パルス波応答
単純に加算した場合の(LPF+HPF)の合成パルス波の応答を出しました。
これも8)とほぼ同じです。
■10)合成(LPF+HPF)パルス波応答
ディップ分(2次、6次)のみ減算した場合LPF+HPF)の合成パルス波の応答を出しました。
これも6)とほぼ同じですがF特でディップの少ない状態なのでより現実に近いのかなと思います。4次以上の高次は付帯波が出てきて良くないのが判ります。
左側の2次は、■8)の一番下の実測の②③辺りと似ていますのでシミュレーションに近いのでLT Spiceでもある程度は評価できる。
結論的には、LPFでSCF的に調べたもので判断しても結果は概ね同じ。4次以上の高次は矩形波の立上りが遅れるのとパルスで付帯波が多くなりNG.
ベストなQ値は2次の中にあり、■5)の波形で考えるとQ=0.577(赤線)附近と考えますが■7)の単体のLPFで見るとQ=0.634附近。最終的にはHPF含めた群遅延時間まで考慮して次回結論を出します。
5/31 ■8)に実測データを青字で追加
6/1 ■10)の水色字追記
6/1 ■7)に実測データを赤字追記
6/2 ■8)に緑字追記
■1)LT Spiceで用いた伝達関数 (回路は判らないので特性で記述できる伝達関数で)
RDA560のフィルタの伝達関数は(**2は2乗の表記、sは変数でwcはカットオフ角周波数)
・2次のQ指定
2次LPFは、Qを使うと伝達関数は、通常の教科書に載っているのと同じで
G(S)=wc**2/(s**2+s*wc/Q+wc**2) です。(Q=0.707で2次のバターワースフィルタ)
2次HPFは、LPFを対数スケールでwcを対象軸として周波数変換(s/wc ⇒wc/s)すれば得られるから、
G(S)=s**2/(s**2+s*wc/Q+wc**2) です。(同上)
・簡易設定(次数設定)
2n次LPFの伝達関数は、以下と推定した。(n=1(これのみBW2次)、2、3・・・・・・)
G(S)=wc**2n/(s**2+1.4142*s*wc+wc**2) **n です。
2n次HPFの伝達関数は、上記と同様で出せるので(n=1、2、3・・・・・・)
G(S)=s**2n/(s**2+1.4142*s*wc+wc**2) **n です。
4次のみ Linkwitz-Rileyフィルタで、高次はそれの分母の( )内は同じで乗数のみ変えたものすので、RDA560の次数設定フィルタは Linkwitz-Rileyをベースにしたフィルタと言えます。
一応LT Spiceでもスロープとカットオフ点でのゲインがRDA実機と合うのは確認済みですので単体での動作は推定できるが合成での動作まで合うかは?
尚下記で用いたパルスや矩形波の入力波形のピーク電圧は10Vです。
■2)単独ゲイン
前回はBWと比較してRDAのフィルタは肩が丸まっており弾み感で有利としましたが、今回はRDAについて詳細に。以下。カットオフは全て1800Hz。点線は位相ですが、左側の2次Q指定ではLPFは上でHPFは下にあり全周波数で180度の差があるので反転していることが分ります。
左側が2次のQ指定でカットオフ点が上からQ=0.707、0.634、0.577、0.5となります。カットオフ点でのゲインは、上から順に、ー3、ー3.96、ー4.8、ー6dbとなります。これはRDA実機と合致。
右側は次数指定で、カットオフ点が上から、2次、4次、6次、8次です。カットオフ点でのゲインは、上から順に、ー3、ー6、ー9、ー12dbです。これもRDA実機と合致。
尚、4次のみはLinkwitz-Rileyフィルタであり、カットオフ点でー6dbですがLPFとHPFの位相差は0であるので、次の■3)で判るように加算するとフラットになる。図の点線で20Hzで0度で20KHz端でー345度のものが4次のLPFとHPFの位相で、重なっています。
同様に8次もLPFとHPFの位相差は0です。図の点線で20Hzで0度で20KHz端でー692度のものが8次のLPFとHPFの位相で、重なっています。
2次は、位相差が~180度あります。LPFは図の点線で20Hzで178度で20KHz端で8度のもの。HPFは図の点線で20Hzで0度で20KHz端でー172度のもの。
6次も、位相差が~180度あります。LPFは図の点線で20Hzでー3度で20KHz端でー519度のもの。HPFは図の点線で20Hzで178度で20KHz端でー339度のもの。
■3)合成(LPF+HPF)ゲイン 加算
これは以下。
左側が2次のQ指定ですが、カットオフ点では位相が反転してゲインが等しいのでディップします。(位相は常に180度の差があるがカットオフ点以外ではゲイン差が出るのでディップ量が減る)
右側は次数指定で、緑線の2次と赤線の6次は位相差が180度でディップ(ー40db)しますが、青線の4次は位相差=0でフラット、水色線8次では位相差=0ですのでカットオフ点ではゲインはー6dbです。
■4)合成(LPF+HPF)ゲイン ディップ分のみ減算
RDA560では実際には何らの処理をしており大きくディップしないので、とりあえず大きくディップするケース(2次、6次)のみは位相差=180度ですので減算しました。
左側が2次のQ指定ですが、カットオフ点ではQ=0.707、0.634、0.577、0.5の順に、ゲインは、+3、+2、+1.25、0dbとなりQ=0.5のみフラットになります。
右側は次数指定で、カットオフ点でのゲインは2次、4次、6次、8次の順に、+3、0、ー3、ー6dbです。RDA560の実機ではカットオフ点での合成ゲインは2次、4次、6次、8次の順に、0,ー1,ー2、ー3dbですのでLT SpiceでのシミュレーションとRDA560の実機とは若干合成時のフィルタ特性が違う。
■5)合成(LPF+HPF)矩形波応答 (入力矩形波の立上りは35μs、立下りはー35μs、オンタイム2mS)
■4)と同じくディップ分(2次、6次)のみ減算で矩形波応答を出した。
左側が2次のQ指定ですが、LPFの場合とほぼ似ていますが、Q=0.707の緑線はオーバーシュートが大きく、逆に薄い青線のQ=0.5ではアンダーシュート気味です。丁度良いのは、0.577(赤線)付近と考える。
右側は次数指定で、180度位相差があってー側になっている緑線が2次、赤線が6次、位相差=0で+側になっている青線が4次、薄い青線が8次です。次数が大きくなるにつれて立上りが遅れてきます。2次が最良で、2次の中で最適Qを選ぶのが良いと判断できます。
■6)合成(LPF+HPF)矩形波応答
単純な加算も出してみました。
これはF特にディップが出るものもあるので参考です。
■7)単体(LPF HPF)矩形波応答
単体も出してみました。
LPF出力は矩形波状に、HPF出力は+⇒ーのパルス状にでますが、■5)と同様、右側の高次では立上がりの遅延が大きく、左側の2次では上から2番目のQ=0.634程度が立上がりが素直(オーバー&アンダーシュートが少ない)です。
実機の実測データでも下記のように次数が高くなると立ち上がり時間が伸びていきます。8次は実測で0.55mSでシミュレーションで0.7mS、6次では実測0.46mSに対し0.54mS、4次は実測0.41mSに対し0.4mS、2次は実測0.32mSに対し0.28mSなので、大きな差はなく4次はほぼ合う。
実測で2次のQ変化ではシミュレーション程顕著では無いですが、Qが下がると立ち上がりが鈍るので傾向は同じ。Q=0.5で実測0.48mSに対しシミュレーション0.43mS、Q=0.577で実測0.41mSに対し0.37mS、Q=0.64で実測0.36mSに対し0.32mSと若干低く出るが傾向は把握できる。
■8)単体(LPF・HPF)パルス波応答
単体のパルス波応答を出した。使用した入力パルスは、WGで出したパルスの実測に近似した、立ち上がり35μs、立下りー35μs、トップ5μsです。
左側が2次のQ指定ですが、LPFの出力は0V以上で出ているの~+1.5Vの山になります。HPFのの出力は最初に+8V弱のピークが来て、次に~ー4.5Vのディップが出ているものです。
右側は次数指定で、これは2次~8次が重なって複雑になっていてよく分からないですが、高次になると付帯波が出ています。
実測でも同じ波形を観測しています。この時代はオリジナルパッシブネットワークでウーハーが2次、同軸は3次です。
この時代はタイムアラインできていないので水色の〇で囲んだウーハー波が前に来ていますが今は以下のようにデジチャンでタイムアラインしているので重なります。
現使用レシピーは右上の右上の③位の遅延をかけていますので、付帯波Bが丁度消えている状態です。尚ウーハー波はー側ですがCで示します。
■9)合成(LPF+HPF)パルス波応答
単純に加算した場合の(LPF+HPF)の合成パルス波の応答を出しました。
これも8)とほぼ同じです。
■10)合成(LPF+HPF)パルス波応答
ディップ分(2次、6次)のみ減算した場合LPF+HPF)の合成パルス波の応答を出しました。
これも6)とほぼ同じですがF特でディップの少ない状態なのでより現実に近いのかなと思います。4次以上の高次は付帯波が出てきて良くないのが判ります。
左側の2次は、■8)の一番下の実測の②③辺りと似ていますのでシミュレーションに近いのでLT Spiceでもある程度は評価できる。
結論的には、LPFでSCF的に調べたもので判断しても結果は概ね同じ。4次以上の高次は矩形波の立上りが遅れるのとパルスで付帯波が多くなりNG.
ベストなQ値は2次の中にあり、■5)の波形で考えるとQ=0.577(赤線)附近と考えますが■7)の単体のLPFで見るとQ=0.634附近。最終的にはHPF含めた群遅延時間まで考慮して次回結論を出します。