まちの図書館で紹介されていた一冊。
角野栄子さんの「トンネルの森 1945」。
私は角野栄子さんという方をこの本で知りました。
あの「魔女の宅急便」を書かれた作家さんなんですね。
道理で、子どもの視点で描かれた、微笑ましい中にもビシッと一本筋が通っている。
この本は10歳の女の子のお話し。
5歳で実母を亡くし、父の再婚相手とはどこか互いによそよそしく気を遣い合う関係。
戦局が悪化し、そんな継母と幼い弟の3人で田舎の小さな村へ疎開。
屋根もボロボロで畳の上敷きにはノミだらけの家。
大きな桶に板を2枚渡しただけのトイレは家の外の離れ。
すぐそばには暗くじめじめとしたした恐ろしげなトンネル。
そのトンネルを抜けた先に鎮座している、道祖神と思っていた石碑は実は小さなお墓。
何年も前に脱走兵が逃げ込んだままという噂の鬱蒼とした暗い森。
子どもの足で片道1時間の通学路は、毎日が恐怖との戦い。
食べ物のないひもじさ。
「おなかすいた」と言いたい、今日あった学校での出来事を話したい、もっと素直に甘えたいのに、継母には気を遣ったままの寂しい毎日。
大好きだったお婆ちゃんも亡くなり、単身東京に残ったままのお父さんとももうずっと会えていない。
そんな中、お父さんがいる東京は大空襲に見舞われ・・・・・・
「わたし、怖くなんかない!」
「同じ教室の、お父さんが死んじゃったあの子に比べたらまだずっとまし。だってわたしのお父さんは、きっとどこかで無事に生きている。」
そんな風に自分だけの小さな世界に一生懸命生きる、ちょっとだけおませさんで想像力豊かなイコちゃんは本当にいじらしくて可愛い。
はらはらしながら。
ほっこりしながら。
毎日に一生懸命なイコちゃんの物語をさらりと愉しませて頂きました。