Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

英国演劇と幽霊の役割

2024年08月26日 06時30分00秒 | Weblog
ストーリー「1984年、炭鉱不況に喘ぐイギリス。幼い頃に母を亡くしたビリーは、炭鉱夫の父と兄、認知症の祖母の4人暮らし。父はビリーに逞しく育ってほしいと、ビリーにボクシングを習わせるが、バレエ教室のレッスンを偶然目にしたビリーは、戸惑いながらもレッスンに参加することになる。
ウィルキンソン先生は、ビリーの才能をいち早く見抜き、ビリーもバレエに熱中していくが、父は大反対。しかし、諦めきれないビリーの夢が、やがて寂れた炭鉱町をも動かすことにーー

 3回目の日本公演だというが、私はこれを観るのは初めて。
 原作の映画からミュージカル化されたというが、映画を製作したのはイギリスの舞台関係者なので、もともと演劇的な構成・内容であったと見てよさそうである。
 ちなみに、映画とミュージカルの詳細な比較分析がある(「ビリー・エリオット/ミュージカルライブ第1幕」、「ビリー・エリオット/ミュージカルライブ第2幕」)。
 ストーリーは、アメリカン・ドリームならぬ”ブリティッシュ・ドリーム”で、炭鉱夫の息子がバレエの才能を発揮し、ロイヤル・バレエ・スクールに入学するまでを描いたもの。
 80年代に始まる世界的な「資源獲得競争」の影で、こういうサクセス・ストーリーが本当に生まれていたかどうかは定かではない。
 だが、ストーリーは、日本における小説「キッチン」などと同様に、「テストストロンの充満する社会に対するアンチ・テーゼ」(台所からキッチンへ(18))として位置づけられ、「経済(力)至上主義」への批判がより明確に出ていると言えそうである。
 実際、物語の要所要所では、亡くなったビリーの母の幽霊が登場する。
 母の幽霊は、将来のない故郷イージントン(イングランド北部の炭鉱町)に残って無益な「闘い」を続けることではなく、ロンドンのロイヤル・バレエ・スクールに入学することを選んだ息子ビリーを励ますとともに、最後にこう告げる。
 「もうたぶん会うことはないでしょう
(記憶が曖昧だがこういうセリフだったと思う。)
 ・・・それにしても、英国人はつくづく幽霊が好きである。
 先月観た「彼方からのうた」には主人公の弟が幽霊として登場するし(限りなく低い「愛」のハードル(5))、バレエ「No Mans Land」の夫役も幽霊である(ダンス月間(2))。

 「ヨークは幽霊の街として有名だ。古代ローマ人が約2000年前に要塞(ようさい)を造り、その後もバイキング、ノルマン人と次々に支配者が代わった。歴史が古い分、怪談も多く、誰が数えたか「500体」(英紙デーリー・ミラー)の幽霊がいるとされ「古代ローマ兵の霊」も出るという。映画「ハリー・ポッター」シリーズに登場する小道「ダイアゴン横丁」のモチーフとされる「シャンブルズ」通りも市内にあり、観光客でにぎわっている。
 セローブ氏によると、英国では近年、従来の宗教に代わって魔術やオカルトへの関心が高まっているという。それを裏付ける調査もあり、21年実施の国勢調査によると、イングランドとウェールズでは古代宗教や魔術的な儀式を信じる人々が増加。中でも先祖霊と交渉する原始宗教シャーマニズムの信者は、11年の650人から8000人に増え、10倍以上になった。

 この記事によれば、イギリスには長らく「幽霊好き」の伝統があり(演劇の世界では、何といっても「ハムレット」の存在が大きい。)、近年オカルト指向はますます強まっているようだ。
 ということは、今後も演劇を含めいろんなところで幽霊が登場する物語が頻出しそうである。
 
 
 
コメント
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