Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

限りなく低い「愛」のハードル(5)

2024年08月11日 06時30分00秒 | Weblog
(引き続きネタバレご注意!)

 「話がしたい」と思っているのは、主人公だけではなかった。
 再会した姉(?)ニーナは、
 「みんなどこかでお前のことを考えてたんだよ、ウィレム。お父さんもお母さんも毎日あんたのことを話してるわ
と告げる(何と、開幕から50分ほど経ってようやく主人公の名前が「ウィレム」であることが判明!)。
 そういうニーナもウィレムに饒舌に話しかけてくるし、ニーナの子供のアンカに至っては、すっかりウィレム叔父さんになついてしまい、やたらと話しかけるだけでなく身体をもたせかけてくる。
 ウィレムいわく、
 「俺に身体を預けて息を整えようとしている感じが好きだった。
 家族みんなが、ウィレムと「話がしたい」と思っているのである。
 そして、久しぶりに会う息子のために、母はオムレツを焼きに行く。
 記憶では、この前後あたりのタイミングでウィレム役は3人目の大石継太さんに交代したと思う。
 この後、ウィレム役の3人でセリフが2~3巡したという記憶である。
 もともとは約75分間の一人芝居だが、本公演ではセリフが4人に分割されているので、一人で全てのセリフを覚えなくて済むわけである(これも一人芝居を四人芝居にしたメリットの一つか?)。
 久しぶりの家族との再会だったが、忙しいウィレムはすぐニューヨークに戻らなければならない。
 実家を後にして空港に向かうウィレムを、ニーナとアンカが車で送るという。
 ウィレムはアンカの横に坐りたかったが、ニーナが助手席に座るよう命じたので、ちょっとむくれる。
 空港に着くと、
 「別れ際にニーナは、すごく優しいハグをした。
 私などは、この言葉に強く心を動かされる。
 これは、単なる「地の文」ではなく、パウリに宛てた手紙の中の一文、つまりメッセ―ジだからである。
 何もしなければ自分ひとりだけの経験にとどまる美しい瞬間が、言葉で表現することによって客観化され、他者とも共有可能な出来事となるのである。
 この芝居は、随所でこんな風に、「美しい出来事を美しい言葉で表現すること」の重要性を再認識させてくれる。
 また、このあたりになると、ウィレムの内面の変容が、観客にも見えるようになる。
 こうした現象は、小説では決して実現出来ないものである。
 一人になったウィレムが空港のバーで酒を飲んでいると、突然目の前にギターを抱えた若い男が現れる。
 ウィレムは思わず、
 「お前を見たんだ!
と叫ぶ。
 
 
 
コメント
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