Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

言葉を超える(1)

2023年05月31日 06時30分00秒 | Weblog

 クリスタル・パイトは、個人的に最も注目している振付家である。
 その彼女が率いるKIDD PIVOTが、初来日公演を行った。
 彼女は今や最も委嘱依頼の多い振付家の一人であるが、その理由は、彼女が「言葉」を起点として振付をつくるところにあると思う。
 というのは、「音楽」を起点として振付をつくる手法は、"See the music, hear the dance. "のバランシン(共通感覚と共感覚)以降既に飽和状態に達していると思われるものの、「言葉」を起点とする手法は、まだ究められていないからである。
 
 「まずジョナサン・ヤングが原作をもとに脚色した茶番劇の台本があって、それをベースに8人のダンサーたちがボイスオーバーの録音をしました。その声はまさにこの作品のサウンドトラック、つまり音楽として使われ、各キャラクターに扮したダンサーたちが、そのラジオのように流れてくるボイスオーバーの言葉にリップシンクをします。口だけでなく、全身を使って。
 場面が進み茶番劇と言う仮面が剝がれると、ダンサーたちの動きはとても抽象的になっていきます。それが何を示しているのかひと目で認識できるようなジェスチャーからはどんどん遠ざかり、極限まで達する身体の探求に入っていきます。この作品は言語を使っていますが、それを極端に抽象化することにより、新たな意味が生まれます。私たちは言葉を超えた表現を目ざしていて、表現できないものを表現しようとしているのです。」(公演パンフレットより)

 「茶番劇」段階の状況については、実際の映像(Kidd Pivot | Revisor | Marquee TV)を観ると分かりやすい。

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残忍性(2)

2023年05月30日 06時30分00秒 | Weblog
 「ゴール入線後、ルメールを背にフラフラと歩いたが、スタンド前で下馬すると、そのまま内ラチ沿いへ倒れ込んだ。鞍上が心配そうになでていたものの微動だにせず、その後、急性心不全のため息を引き取ったことが分かった。


 大観衆の目の前で、2番人気の馬が急性心不全で亡くなるという、なんとも後味の悪いダービーとなった。
 スキルヴィングが息を引き取った直後の、大観衆による歓声と拍手が余りにも強烈で、どうしても「残忍性」という言葉が浮かんでくる。
 私などは、職業柄、ブラック企業に入ってしまったばかりに過労死・過労自殺に追い込まれる労働者の姿と重ね合わせて見えてしまう。
 ニーチェ先生ではないけれど、「スキルヴィングよ、どうか人類を許してください」と許しを請いたくなった。
 合掌。
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空を飛び、海を駆ける

2023年05月29日 06時30分00秒 | Weblog
 この25年間における富士五湖の観光産業の変化について、私は、ハイキングをしながら調査するという、一石二鳥の方法を選んだ。
 今回用いたのは、「YAMAP山登りベストコース」の「石割山・大平山・飯盛山縦走コース」(p217)で、定番コースと言って良い。
 ハイキングコース周辺を見る限り、山中湖ではテニスは今も盛んなようで、登山口付近にリゾート施設関連のテニスコートを2つ見つけた(新しく整備されたもののようである。)。
 そればかりか、これも新しく整備されたと思われる大きなサッカー場やドッグキャンプまである。
 まだまだ開発可能な土地と相応の資金力が残っているのだ。
 さて、YAMAPの最新の地図と、25年前のJTBのガイドブックの地図を見比べると、ちょっと驚く違いを発見した。
 通常であれば、25年で山の地図が変わるなどということはないはずだが、実は、大きな違いがある。
 25年前の地図では、「大平山」山頂付近に存在した「パラグライダースクール」の記載が、現在の地図では見当たらないのである。
 実際、山頂付近にそれらしきものは見かけなかったが、単に「まだシーズンではない」ということかもしれないので、存在しないとまでは言い切れない。
 そう言えば、25年前、山中湖ではパラグライダーを、河口湖では水上スキーをよく見た記憶がある。
 ところが、今回のハイキング(調査?)では、少なくとも山中湖周辺ではパラグライダーも水上スキーも見なかった。
 この25年で、「空を飛び、海を駆ける」日本人は消滅したのだろうか?
 と思いきや、ハンググライダー専門店(忍野スカイスポーツクラブ)が誕生していた。
 ちなみに、帰りの特急「富士周遊」は、9割ほどが外国人で占められていた。
 「富士山」は日本観光の目玉だが、次の目的地(大阪・京都)には、一旦東京に戻り、新幹線で向かう人が多いのかもしれない。
 河口湖駅から御殿場アウトレットモール行きのバスがあるので、御殿場方面に抜けて大阪方面に向かうルートもあるのだが、メジャーではないようだ。
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「温泉」化現象

2023年05月28日 06時30分00秒 | Weblog
 さて、”フィールド・ワーク”の結果は以下のとおり。
(1)合宿
 「合宿」を謳い文句にしていた3軒は今も営業中。
 だが、民宿A(かつやま民宿の1軒)と民宿B(河口湖町大石地区の1軒)は、ホームぺージを見る限り、テニスコートが見当たらない。
 その代わり、(会社などの)「研修」、「セミナー」などといったフレーズが目に付く。
 対して、「根場民宿自然村」は、施設内容は25年前とほぼ変わりなく、学生団体などの「合宿」向けを売り物にしている。
 やはり、少子化の時代にあっては、よほど強い集客力がない限り「合宿」に特化するのは難しいのかもしれない。
(2)温泉
 25年前、「寛ぎ」をキーワードとする温泉は3軒あった。
 だが、うち2軒(いずれも下部温泉)は休館。
 「深山の趣が漂う寛ぎの宿」を謳っていた「旅館 田中屋」は営業中だが、現在のホームページには「寛ぎ」という言葉が見当たらないようで、イメージが変わったようである。
 
 現地調査で面白かったのは、外国人観光客で溢れかえる河口湖が、「富士河口湖温泉郷」を熱心にPRしていることで、富士急バスにも河口湖多佳美のポスターが貼られている。
 ちなみに、25年前のポケットガイドでは、河口湖の箇所で温泉に触れているのは1か所のみで、しかも「野天風呂天水 」であった。
 それにしても、「富士山」だけでも圧倒的なアドバンテージだというのに、「温泉」まで手にしてしまえば、鬼に金棒といったところだろう。
 周辺の温泉郷は脅威に感じていることだろう。
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合宿と温泉

2023年05月27日 06時30分00秒 | Weblog

 忙しくて旅行に出かける余裕がないときなどは、ガイドブックや地図を眺めながら「ヴァーチャル・トリップ」を楽しむことがある。 
 これは、野口悠紀雄先生が「「超」旅行法」で提案していたものだが、結構楽しい。
 個人的には、上に挙げた古いガイドブックをランダムに読むのが好きで、「トイレで読む本」の一つになっている。
 手元にあるのは改訂6版で、1998年5月1日発行のものである。
 当ブログでは何度か強調したが、1998年は、日本の戦後史において非常に重要な年である。
 すなわち、日本史上、かつてないほどに自殺者が増えた年なのである(特集:自殺は防げる データで見る日本の自殺)。
 さて、当時、旅行産業はどうだったのだろうか?
 最終ページを開いてみると、3ページ分が旅館の広告となっている。
 6軒掲載されているうち、3軒は何とテニスコート併設で「合宿」向けと謳っており、それ以外の3軒は「温泉」(「寛ぎ」がキーワードである)を売り物にしている。
 なんだか私には、この2つが当時の世相を反映しているように思えてきた。
 依然として集団志向が強く、「合宿」が盛んに行われる一方で、犠牲強要競争に苦しむ人々は「寛ぎ」を求めている・・・。
 この状況は、現在はどうなっているのだろうか?
 というわけで、週末は富士五湖に出かけて確認してみることとする。
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第3ラウンド開始(2)

2023年05月26日 06時30分00秒 | Weblog

 「第3ラウンド開始」が本格化しつつあるが、やや意外な方向に進みそうである。
 維新が先に動くのではなく、自民党と公明党の衝突が先に生じたからである。
 しかも、この問題はかなり尾を引きそうである。
 というのも、公明党は、自民党の有力者である荻生田氏の逆鱗に触れたと思われるからだ。
 仄聞するところでは、荻生田氏の人望すこぶる厚く、統一教会の問題さえなければ次の首相候補の筆頭に躍り出ておかしくないそうである。
 公明党がその人物を怒らせたとなると、今後の流れ次第では、連立解消の可能性も出て来るだろう。
 但し、当然のことながら、自民党も一枚岩ではない。
 岸田首相とその周辺は、荻生田氏とは違う考えなのかもしれず、公明党との関係を巡って今後内部対立が激化する可能性もある。
 いずれにせよ、「第3ラウンド」の鍵を握っているのが維新であることに変わりはなく、その維新が先に動くことなくして、敵失によってアドバンテージを獲得したかのように見える。
 大阪は圧勝だろうし、東京で都民ファと連携という手もありそうだ。
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組織防衛(2)

2023年05月25日 06時30分00秒 | Weblog
 「團藤氏は1981年に伊丹空港の周辺住民が夜間飛行の禁止を国に求めた「大阪空港公害訴訟」の審理を担当しました。團藤氏が在任中に記したノートには、国の意向を受けた当時の最高裁長官が「判決前に介入した」として、「この種の介入は怪しからぬことだ」と怒りを露わにした内容が記されています。大阪空港公害訴訟の審理について元最高裁長官から「介入」があったことについて、調査チームは「三権分立に関わる重大な記述」だと分析しているということです。

 「裁判官枠が6人あり、高等裁判所長官を経て平均6年勤務するとすると、同期の中で最高裁判所判事になれる裁判官は1人しかいません。
 刑事畑の裁判官が、ちょうど2倍有利です。民事畑、刑事畑が人数で2対1、最高裁判事は民事畑、刑事畑が各3人ずつですから。

 團藤先生のお怒りはごもっともだが、裁判所に限らずどんな組織も、程度の差こそあれ「組織防衛」を図るものである。
 実際、裁判所がこの20年ほど裁判員裁判に注力してきたのも、見方によっては「組織防衛」の一環ということが出来るだろう。
 というのは、民事事件の新受件数は減少傾向が続いており、裁判員裁判と家事事件くらいしか、もはや予算獲得が期待できる分野が残っていないのである(今後しばらくは家事事件の制度改革が目玉になるかもしれない)。
 このため、裁判所内部では、刑事畑(刑事部と家事部を行き来することが多い)の裁判官が幹部の多くを占める現象が続いているように思える。
 だが、組織がじり貧になると、團藤先生が指摘したような「介入」も増えてくると思われる。
 この件は、「昔の話」と言ってすまされる問題ではなさそうである。
 
 
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自殺、他殺、病死

2023年05月24日 06時30分00秒 | Weblog
 (チャイコフスキー「悲愴」)「本作の最も特異な点は第4楽章。フィナーレ楽章が速度の遅いアダージョであるばかりか、暗い感情に覆われたまま消えゆくような終わり方は、当時までの交響曲としてはかなり異例だった。あたかも死を悟っていたかのような音楽だったこともあり、かつては自殺説も出現したが、やはり病死で間違いないというのが現在の通説である。
 (ペトレンコ氏)「少なくとも私の個人的な考えでは、この曲の最後は、人間は死んだらそれで終わりだ、というメッセージだと受け止めています。」(公演パンフレットより)

 チャイコフスキーの死因については、かつては自殺説や他殺説もあったが、現在では病死ということで動かないようである。
 最近話題になっている「生まれ変わり」についても、彼はどうやら信じていなかったようだ。
 さて、今年はラフマニノフ生誕150周年・没後80周年ということで、ラフマニノフの曲の演奏が多いが、辻井さんはコンチェルト3番をチョイスしており、秋に開催される「河口湖ピアノフェスティバル2023」でもこの曲を演奏する予定とのこと。
 私は最前列の第一ヴァイオリン側に座って聴いていたが、この位置だと、多重音声の全体を味わうのが難しい代わりに、自分がオケ団員に紛れ込んだような一体感を味わうことが出来る。
 「木を見て森を見ず」という言葉があるけれど、「木になれば森と一体化できる」という言葉が浮かんできた。
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原作の改良

2023年05月23日 06時30分00秒 | Weblog
 「【リゴレット】ロベルト・フロンターリ
  【ジルダ】ハスミック・トロシャン
  【マントヴァ公爵】イヴァン・アヨン・リヴァス

 主役3人の歌手が完璧で、ケチのつけようがない。
 これを上回る「リゴレット」は、今後当分聴くことが出来ないのではないかというくらいである(それにしても、ペルー人の歌手を見つけてきたのはやはり大野芸術監督なのだろうか?)。
 さて、ヴェルディは、ユーゴ―の原作「王は楽しむ」のストーリーを結構改変しているらしい。

 「なお、検閲と関係なく行われた次の2つの変更は、ヴェルディによる改良と言ってよいだろう。1つ目は第1幕第7場(第3曲)、リゴレットがスパラフチーレと出会う場面である。・・・時系列から見れば原作の方が自然なのかもしれないが、ドラマの上では夜とする方が明らかに効果的だろう。
 2つ目は、大詰めである。・・・原作ではその場所になかったキーワード「呪い」を繰り返す大詰めは、オペラと言うジャンルに極めて適したものである。ヴェルディはおそらく、ユーゴ―以上にこのドラマの核心を理解していったのではないだろうか。」(公演パンフレット・園田みどりさんの解説)

 なるほど。
 「椿姫」では原作の大事なところをカットしてしまったヴェルディだが(傑作の欠点)、「リゴレット」ではなんとユーゴ―の原作に手直しを加えて「改良」したのであった。
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魔と天使

2023年05月22日 06時30分00秒 | Weblog
 「裁判官の父のもと裕福な家庭に生まれ、20歳でコロンビア大学ロースクールを卒業した超エリート。だのに、どこかコンプレックスの影も見える。ユダヤ系なのに反ユダヤ的言動をとり、民主党支持のはずが共和党の政治コンサルタントをしたり、自身ゲイなのを隠すのみならずゲイを圧迫したり。不思議なのは、嫌われ者だったはずが妙な人気もあったこと。人気のクラブに出没するなど、意外にヒップな面があったかららしい。

 第一部と第二部で計8時間という、ワーグナー的な規模の芝居である。
 トニー・クシュナーは、かつてトーマス・マンが「魔の山」において試みたのと似たことを、芝居という形式で行おうとしたかのように思える。
 「魔の山」は、「結核という病気を通して20世紀前半のヨーロッパを描いた小説」であるのに対し、「エンジェルス・イン・アメリカ」は、「エイズという病気を通して20世紀後半のアメリカを描いた芝居」であるということが出来るからである。
 池澤夏樹氏も指摘するとおり、「魔の山」の登場人物は、それぞれヨーロッパの国(但し、フランスを除く)を代表しており、小説内で「ヨーロッパのプレゼンテーション」が行われている。
 つまり、「魔の山」は、「プレゼンテーション小説」である。
 同様に、「エンジェルス・イン・アメリカ」の登場人物は、20世紀後半のアメリカにおけるマイノリティーを代表しており、それぞれがプレゼンテーションを行っている。
 すなわち、ユダヤ人のゲイ・カップル、モルモン教徒の母、その息子の裁判所書記官と薬物依存の妻、元ドラァグクイーンの黒人看護師、といった具合である。
 さらに、ロイ・コーンという実在の人物を実名のまま登場させたところが大きな特色と言えるだろう。
 さて、「魔の山」には、「隠れた登場人物」として、 "Zauberberg"(魔法の山)が存在しているが、「エンジェルス・イン・アメリカ」の場合はどうだろうか?
 この芝居の舞台であるニューヨーク(ほかにソルトレイク・シティもちょっとだけ登場) には、何と「天使」が降臨する。
 私見では、これは、WASPの象徴であり、作者が仕込んだ「隠れた登場人物」の一種である(実際には隠れてなどいないのだが・・・)。
 というのも、この「天使」(たち)は、登場人物を祝福するのではなく、「移住」と「前進」を禁じようとする、「官僚」としての言動に終始しているからである。
 作者は、フロンティアへの「移住」を制限し、「前進」を妨げているのはマジョリティーであるWASPであると言いたいのかもしれない。
 ・・・というわけで、かなり毒の効いた芝居なのだが、第三部を作って欲しいと思っているのは私だけだろうか?
 
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