毎年7月末から8月にかけては、世界中から日本にダンサーが集まる時期である。
海外のバレエ団に所属しているダンサーの中には、夏休みを利用して”出稼ぎ”に来る人もいるし、海外のバレエ団に所属する日本人ダンサーで、夏休みに”帰省”する人もいる。
かくして、今年も多くのバレエ・ダンスの公演が開催された。
「伝統と革新によって築かれてきた「バレエ」を現代の解釈で表現するガラ公演「BALLET TheNewClassic」。 ‘22年8月に行われた第1弾は全5公演完売! クラウドファンディングの達成率も751%と大きな支持を得た。 あれから2年――今回も現代を代表するダンサー、一流のクリエイターが集結し、新たな舞台の幕が開く。」
1部
『Anomalous』
振付: Craig Davidson
佐々晴香
『別れのパ・ド・ドゥ』
振付: 堀内將平
中村祥子 中島瑞生
『ロミオとロミオ』
振付: 堀内將平
三森健太朗 マッテオ・ミッチーニ
『Impression of Perception』
振付: Jason Kittelberger
鈴木絵美里
『海賊』よりグラン・パ・ド・トロワ
大矢夏奈 木本全優 三宅啄未
『シェヘラザード』よりパ・ド・ドゥ
海老原由佳 堀内將平
『白鳥の湖』よりオデット
二山治雄
2部
『ショパン組曲 〜バレエ・ブラン〜』
振付: 堀内將平
12名 総出演
「伝統と革新」とあるが、やはり「革新」に力点がある印象で、既成概念をぶち壊すことを狙っているように思われる。
例えば、『Anomalous』は、ドラムスとバレエという通常想定されない組み合わせによって、観客に違和感を抱かせるし、『ロミオとロミオ』の男性二人によるパ・ド・ドゥや二山さんがチュチュを着て踊る『白鳥の湖』よりオデットなども、観る者を驚かせる。
上記以外で面白かったのは、『別れのパ・ド・ドゥ』(中村祥子&中島瑞生)。
「目が不自由な女声が、彼への愛ゆえに別れを告げるが、愛があれば苦難も乗り越えられると信じる年若い恋人は、彼女から離れようとしない。(中略)「視覚が失われる」ことで、相手の物質的な要素(容姿、年齢、社会的地位など)にとらわれることなく、本質を観ることができることに気づいた堀内が、「アンチ・ルッキズム」もテーマに盛り込んだ。」(公演パンフレットp52)
「アンチ・ルッキズム」をテーマとする作品であるがゆえに、日本バレエ界屈指の美男・美女をキャスティングしたのだと思われるが、この「もったいなさ」が新鮮な印象を与えるのである。
だが、今回の公演で私が最も驚いたのは「音楽」である。
全て生演奏だが、客席にもステージ上とさほど変わらないくらい大きなボリュームの音が響く。
どういう仕掛けなのか分からないが、これも新鮮だし、個人的には、金森大さんというピアニストを発見したのが大きな収穫だった。
この人の演奏には、通常のクラシックのピアニストとは異なる種類のパワーを感じるのである。