井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

専門家と素人

2009-12-19 22:50:12 | コンクール

 レヴェルの高い音楽コンクールは,専門家によって審査,評価される。しかし,それほどハイ・レヴェルでないコンクールの審査には,専門家でない審査員が含まれることもよくある。専門家でないと書いたが,それでも音楽の専門家ではある。その分野,楽器の専門家ではない,という意味だ。

 専門家集団の評価であっても,所詮は主観で判断する,ということは以前にも述べた。バラバラの評価になることも珍しくないし,価値観が多様であることの証しになることもあるから,バラバラであることが即,悪いことだ,とは言えない。

 しかし,そうは言っても「専門家の常識」が覆ることは皆無と言える。小学生レヴェルの曲で90点,高校生レヴェルの曲で80点,という演奏があったとする。専門家が評価すれば,間違いなく高校生レヴェルの80点の方が評価は高い。

 ところが,90点はあくまで80点より上,という評価になることがある。非専門家による評価の場合だ。小学生と高校生のレヴェルの違いは,専門的な知識がないとわからない。どれだけ難しいことをやっているかどうかは,専門的な勉強をしてわかることだ。そうなると,90点は単純に80点より高い点数になる。

 このような結果がコンクール等で出てしまうと,専門家としては穏やかでいられない。

 しかし・・・

 私もヴァイオリン以外では非専門家なのである。

 審査員ではなかったが,偶然,高校生コンクールの打楽器部門に居合わせたことがあった。5人くらい演奏したような気がするが,正直言ってお手上げ,誰がうまいのかそうでないのか,全くわからなかった。2番目の生徒が難しそうな曲をやっているから,それが多分上の評価なのかな,と思い,審査した打楽器奏者に後できいてみた。
「2番目の人が,多少上かな,くらいのことはわかるんですが…」
「あ,それ(2番目)は問題になりません。その曲,易しいですから。」
「……」

 ヴァイオリンで言えば,ベリオの9番とヴュータンの5番が並んだ,というところか?

 だから,専門家による評価でないとアテにならない,というのは早計。世間一般では,非専門家,いわゆる「素人」の評価で動くことが大半である。コンクールで入賞したから聴いてみよう,ということはもちろんある。が,それ以上に,何らかの付加価値,ストーリー等によって聴衆が動くことの方が多い。「素人の評価」は結構重要であり,無視できないのである。

 そう考えると,「音楽の素養のある素人」の評価は,かなり良心的な評価になり得る訳だ。

 と,理屈で割り切るしかない場面,今年もあったなぁ・・・。