いやはや、厄介な問題を提起されてしまった・・・が、気を取り直して・・・
標記の本が30年くらい前に出版され、そこで初めて音の高さのことをイントネーションと言うのだということを知った。では音楽用語としてのイントネーションの訳語は、というと、これが「ない」のである。だからイントネーションと言うしかないのだが、これでは通じないことが多く、やはり「音程」と言わざるを得ないのが現状だ。
手元の音楽大事典(平凡社)には「音程」の項で、
「演奏実技の場などでは、この語の意味が拡張され、音高(ピッチ)、イントネーションなどの語のほうがより適切にみえる場合にまで『音程』という傾向もある」
と書いてある。
私の3人の師匠は、皆さん海外留学の経験をお持ちだが、全員「音程」という表現を使い、イントネーションとは滅多におっしゃらない。で、ヨーロッパに行かれたりすると、さっとintonationという言葉が出てくるのだろう。
そのような次第で、音程という言葉の意味は深く考えないようにしているのだが、このように問題が表面化してしまった以上、(あ、「おけいこヴァイオリン」で表面化しただけですが)「イントネーション」という言葉に切り替える運動を展開しましょうかね、という気分になってきた。
この手の運動は地味ながら、他の語でもやっているのだが、ちっとも状況が変わらないところもある。私の職場で変わらないのは「吹奏楽」=「ブラス」。「ブラス」は真鍮、転じて金管楽器の意味であり、ブラスバンドとは金管バンドのことだ。木管がはいる形態は吹奏楽と言うべきで、言い続けているのだが、相変わらずである。
そうは言っても、欧米でそのまま通じる表現に慣れておくことは有意義だろう。ということで、今から「イントネーション」という言い方に切り替えます。