井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

大作曲家「霊感」の謎

2007-06-06 13:40:10 | 音楽

という本が図書館にあったので,ちょいと読んでみて驚いた。著者の名和秀人氏は音楽の専門家ではないにも関わらず,膨大な音楽資料を整理されて,さまざまな事実を抽出されていた。それにも驚くが,個人的には以下のような事実を知って,立ち往生してしまった。

 アマチュア・オーケストラの選曲が,常に同じようなものになるので,もっと別の曲をあたってみたら,とは常々言ってまわっていることである。とは言え,一度は演奏したい名曲があるのも事実で,特に学生オーケストラはそれを中心にやった方が良い,とも唱えていた。

 某オーケストラの掲示板に書いたことを再び・・・
 アマチュア・オーケストラから不滅の人気を誇る大曲(交響曲)は,ベートーヴェンを除いて以下の8曲。

・チャイコフスキー:交響曲第5番,第6番
・ドヴォルジャーク:交響曲第8番,第9番
・ブラームス:交響曲第1番,第2番,第4番
・シベリウス:交響曲第2番

これを順繰りにやっていけば,大きな文句は出ないというもの。

 で,標記の本には3000曲のクラシック曲が成立順に書いてある年表が巻末についていた。これを見ると,ある年にまとまって人気曲が作られていることがわかったのである。名曲は決してコンスタントに生まれた訳ではないのだ。

 オーケストラ関係でスゴイのは1888年。フランクの交響曲,マーラーの巨人,リムスキー・コルサコフの「シェヘラザード」,チャイコの交響曲第5番が同い年である。こう並べると,マーラー自体が「巨人」に見えてきて,あのリムスキーの傑作が,おとなしく見え,チャイコにいたっては何と地味な存在,にならないだろうか?
 で翌1889年にドヴォルジャークが交響曲第8番,これだけでも前年のきらびやかさに比べて田舎臭いけど,同年,リヒャルト・シュトラウスが「ドン・ファン」を出してくるのである。シュトラウス25才の才気煥発ぶりもすごいし,派手ならいいってもんじゃないよ,と48才のドヴォルジャークも健闘している,と言えるだろう。

 その後,チャイコは「眠り」「くるみ」と発表して1893年,いよいよ「悲愴」を作って息絶える。で,同年ドヴォルジャークは「新世界」を出すのだなぁ。「悲愴」と「新世界」が同い年なのもさることながら,マーラーやシュトラウスより後発のベテランという認識はなかった。

 ヴァイオリニストにとっての驚異は1878年。ブラームスとチャイコフスキー,全くお互いの音楽を認め合わなかった二人,でもなぜか5月7日生まれという誕生日が同じの二人が,同じ年にヴァイオリン協奏曲を出している。2曲ともヴァイオリン協奏曲史上筆頭にくる名曲であるのは論をまたない。それだけではなく,同年サラサーテがツィゴイネルワイゼンを出しているのだ。

 実は昨日まで,ツィゴイネルワイゼンを超える名曲を井財野は書きたいと思っていたのだ。今,その気持ちに大きくブレーキがかかってしまった。1878年には天界から大きな力が加わって,その結果誕生した名曲だとすれば・・・,などと考えてしまった。「超える」はやめよう。「代わる」にしようか・・・同じことか?

 オーケストラ楽曲にしても,19世紀末2,30年間の曲をとっかえひっかえやってるだけで良いのか,という疑問も少々出てきた。多分,良いのではあろうが,何だかひっかかる。

 ここで閃いた!

 皆さん,今度6月24日には佐世保でショスタコーヴィチの交響曲第9番をやります。1945年の曲です。聞きに来て下さい。(そうだ,ここに落とせば良いのだ・・・)