「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

崩れてきた都会の"むこう三軒両隣”の葬儀のしきたり

2019-03-07 05:34:48 | 2012・1・1

わが家の裏道は平坦な車のあまり通らない老人にとって絶好な散歩道だが、朝晩”お元気ですか”と声を掛け合っていた同年齢の女性が急死された。“むこう三軒両隣”文字通り三軒先、半世紀近いお付き合いだが、昔のように玄関先に「忌中」の張り紙がないので、ご挨拶してよいのかわからない。最近、東京では葬儀が「家庭葬」という名で簡素化され、それに伴って自宅で「お通夜」「告別式」をする、しきたりがなくなってきた。

"むこう三軒両隣”は戦後すぐの昭和22年から6年間、NHKラジオで続いた人気番組だが、当時を振り返ると東京でもまだまだ落語に出てくるクマさん,ハッさんの長屋のお付き合いが残っていた。葬儀にしても、「お通夜」には親族、友人と共に隣人まで集まり”夜どおしロウソクやお線香を絶やさず、亡き人を偲び酒を用意した”(浄土宝暦)儀式であった。昭和44年、84歳で亡くなった父のお通夜も自宅の八畳間の棺の前で一晩中行われた。

昔は「忌中」の張り紙をみると、未知の方の家でも頭をさげて家の前を通ったものだが、今は町の告知板にも張り紙はない。葬儀の簡素化には反対ではないが、生前御世話になった方である。、昔ながらの「忌中」お張り紙だけは儀礼として残してもいたいものだ。葬儀のしきたりが消えてゆくのは、昔の人間には、その対応が難しい世の中になってきた。