またたび

どこかに住んでいる太っちょのオジサンが見るためのブログ

WHATEVER-7

2009-05-19 08:02:29 | またたび
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 過って改めざる、これを過ちという。
 人は同じことを繰り返してはならない。
 それは経験していくことで、人は成長していく。
 精神的に、そして一人の人間として成長していく。

 祭囃子が徐々に大きくなるにつれ、ケンの心音も高鳴ってきた。
 ケンは待ち合わせの時間より前に到着した。
 ケンの中で遅刻は一番やってはいけない行為と決め、
 最低でも10分前、一時間前から待っていたこともあるくらい時間には厳しかった。
 だが、相手側が遅刻しても、何で遅れたとか問いただすことは一度もなかった。
 「ケン君、待った?」
 振り向くと、赤い浴衣姿で照れくさそうに微笑む亜実がいた。
 亜実とは同じ学年で、普段はあまり話す機会がないが、
 よくみんなで遊ぶときには悩みを話したり、バカ話で盛り上がったりする間柄だった。
 先日、彼女も含めたいつものメンバーで海に遊び、
 自分の部屋に戻ると祭りに一緒に行く相手がいないから、行こうと電話で誘われた。
 時間を持て余していたケンは快く了承した。
 祭りに行くことにしたものの、時間が経つに連れ、
 みんながいる前では誘わなかったことの意味に気づいた。
 友達として誘っただけかもしれないが、何かを期待する卑しい気持ちがあった。
 手にしている携帯電話に映し出されている名前を見ると胸中が複雑になっていた。
 「全然、今来たところだから」
 そういうと立ち上がり、尻を二、三度払い埃を落とした。行こうか?と言うと亜実は小さく頷き、
 ケンの横にぴったり並んだ。
 立ち位置として自分の右側に人がいると落ち着かなかった。
 歩くときや座席でも、相手を極力左側に位置にするようにしていた。
 初めての人にそれを説明すると、不思議がられるか、どうでもいいじゃんと突き放された。
 しかし亜実はそれを知っていたかのように常にケンの左側にいた。
 こんなに背が小さかったんだ。
 改めて近くで亜実を見て、思わず口にしてしまった。
 「誰と比べているの?」
 別にそんなつもりじゃないよ、すぐ違う話題に切り替えた。