またたび

どこかに住んでいる太っちょのオジサンが見るためのブログ

WHATEVER-3

2009-05-02 11:21:22 | またたび
                2
 大学二年にして、念願の彼女の出来たケンは少し浮かれながら、キョウコの部屋を後にした。
 見上げると、満ちかけている月が夜空を明るく照らしだされ、
 ある一定のリズムを刻む虫の音色が周りを包み、夏本番を迎える夜の演出をしていた。
 どこまでいけば彼女であるという定義は明確ではないが、
 周りから見ればケンは異性と付き合ったことがないといって間違いではなかった。
 今まで不完全燃焼で終わってしまったことに対し、ケンは悔やんでばかりだった。
 そのときは満足していたのかもしれないが、後々考えてみると不完全、不明瞭なところが確かにあった。
 気持ちのタイミングというべきところがずれており、いつも同じような結末で、二人の関係は終焉を迎えていた。
 大抵は女性のほうから一方的に好意を寄せられ、それを断る理由がないケンは二人で遊ぶようになる。
 徐々に二人の距離は縮まり、やがて一晩を共にする関係までなる。
 そのうち、ケンのほうが相手を想う気持ちが強くなり、夢中になり始めると、
 あたかも反比例したかのような、冷めた素振りで女性のほうから別れを告げられて終わるパターンがほとんどだった。
 携帯のメモリを消すたびに、好きな人を忘れることの辛さを実感させられ続けていた。
 そのためケンは本当の自分を見せちゃいけないと自分の殻に閉じこもり、
 本音を隠すようにまでなっていて、本当の自分を出したら嫌われるとも思い始めていた。