またたび

どこかに住んでいる太っちょのオジサンが見るためのブログ

BUTTERFLY-13

2009-03-14 08:15:57 | またたび
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 「彼女とどんな会話してたの?」
 純がメニューを見ながら聞いてきた。
 「最近あったおもしろいことや気の合う話かな」
 僕もメニューを手にして、コップの水を口にした。
 「お前、まだわかってないみたいだな」
 「どーいうこと?」
 あれから、まだ一週間しか過ぎていない。
 傷は癒えていない、僕の心にはとも子が存在していた。
 当然のようにとも子からの連絡はない。
 僕からはしないだろうし、相手からも来るはずがない。
 失くしてから気づくことはたくさんある。
 喪失感から生まれるものは形にならない。
 深く心の奥底でへばりついてしまっている。
 唯一の親友の純と街のラーメン屋に寄った。
 今までの経緯を話した。
 それを聞いた純は変わらずの口調で話し出した。
 僕はコップの水滴をナプキンで拭いていて終始、落ち着きがなかった。
 でも話はちゃんと耳に届いていた。
 「彼女は質問するってのは、お前とこのまま付き合ったら、どうなるか考えてんだって。その彼女は結婚寸前までいって、駄目だったんだろ。その人はいまがよければいいっておもうんじゃなくて、もっと先のことが知りたいからお前に質問をたくさんしてんだろ。対応一つにしてもそうだ。お前は彼女に本音でぶつかってる?合わせてばかりじゃ、あっちはいつまでもお前のことがわからないままでいるだけだぞ。不安に感じているからきくんじゃん。年下だからとか、仕事していないからわからないとか。あっちが聞きたいのはそんなんじゃないんだって。」
 注文したラーメンが二つ届いた。
 ゴマの独特の香りが漂ってきた。
 「名前をあだ名で呼んだってお前が変わらない限り、かわらないでしょ」
 割り箸を割ると、バチンと音が鳴った
 「自分の内面的な部分を出さないで、付き合うことは出来ないよ」
 純は麺を丁寧にとり、息を吹きかけた。
 僕は嫌いなメンマを端に寄せた。
 「あと、お前『まぁ、いいか』ってよくいうじゃん」
 僕は何かとまぁ、いいかが口癖のように言う。
 トモと電話するときは頻繁に使うことがあった。
 何度かそこをトモに突っ込まれたときがる。
 「何がまぁいいかなの?」と聞かれたので、いつも笑ってごまかしていた。
 「別にまぁいいか」と自分のどこかで留めていたのかもしれない。
 純は話を続けた。