カップラーメンで有名な会社が、食べ物だけでなく、食のさまざま問題へのアプローチを考えているそうです。
そこでは面白いものが作られました。
カップ焼きそばのふた裏につく小さなキャベツをたたき落とす道具です。
湯切りしたあと、ふたの裏に残る細かいキャベツ片を8割がた落とせるというものです。
これが売れなかったのです。
なぜでしょうか。
食べ物の容器のふたについたものを落とすのは、それをどうしても食べたいからでなく、捨てるのが惜しいからでもなく、箸でこそげて蓋から取り去っていく作業をしている空気が心地よいからです。
「いただきます」と言った後でも、そのときにはまだ口の中に、話の邪魔をするほど大きなものが入っていません。
その間のおしゃべりが、一緒に食べる人との心のつながりを深めます。
そのだいじな時間を奪うようなお道具に、何千円ものお金を出す人は大勢はいません。
食のさまざま問題のとらえ方には、食べるときの手間をへらす時間短縮が、食べる楽しみを一緒に減らしてしまうことに気付かなければ、おかしなものを作ってしまう珍考案の繰り返しになるでしょう。