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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第5章-9 奇跡的リバタルの秘密

2018-06-29 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「ポイントは、まさにそこ。彼は、相手が話している間、いきなり反論をノートに書き出すの」
「冗談はやめてください!」
「それがまったく冗談じゃあないの。普通、相手のスピーチの間はその内容をノートに取って、その後、準備時間を使って反論を書く。でも、それではなかなか強豪ひしめく大会では優勝できない。あなただって相手のスピーチ中に、ブリーフシート(注、相手の議論に対する反論とエビデンスをひとまとめにしたもの)を用意することはあるでしょ?」
「それは、あります。でも相手のスピーチをまったくノートに取らずに自分の反論だけを書くなんて、議論を聞いた瞬間に最適の反論を思いつくんですか?」
「ショーンは、高校2年の冬からそうしたやり方を始めて、完璧にできるようになったのは高校4年の時だったと言っていたわ(注、アメリカの多くの州では、高校4年制を採用している)」
 ナオミは、黙りこくってしまった。
「ショックかしら? でも、彼らだって無敵(invincible)というわけじゃない。始めて見た相手の肯定側ケースを崩せない時もあれば、否定側から対案を出されて僅差の投票で負けることもある。前の大会で分かった穴を次の大会までに塞いでおくこと。勝った議論に少しでもリスクがあれば、次までに完璧にしておくこと。『努力する天才に勝つには、それ以上努力すること』。それにあなたたちには、彼ら以上に優れている点があるじゃない」
「冗談はやめてください。私たちに彼らより優れている点があるなんて・・・・・・」
「あるわ。それは、二人の組み合わせよ」
「組み合わせ?」
「そう。あの二人はディベーターとしてオールラウンド過ぎる」
「ディベーターにオールラウンド過ぎるなんてことが、あり得るのですか?」
「あの二人はスピーチがうまくて、リサーチ能力があって、議論の立て方がうまくて、おまけに大学のディベート部の予算も膨大よ。でも、二人のタイプが比較的に似通ってる。だけど、あなたとケイティはタイプが違う。ケイティは、強い議論を作って、相手の議論の弱点を見つけて、頭の切れで勝負するタイプ。でも、ナオミ、あなたはいかに自分たちのストーリーが相手のストーリーより勝っているかを語るかというスピーチで勝負するタイプだわ。同じタイプの二人が組んでいると試合の展開が読めるけど、異なったタイプの二人が組んでいる方が相手にとっては嫌なものなの。ナオミ、Ad astra per aspera!(注、カンザス州のモットーで『星へ困難な道を』の意味)」
 すべて完璧と思っていたショーンとジョーディに対し、実は完璧でない自分たちにも勝機があると知って闘志がわき上がるナオミだった。

     

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