いっぺんに数十匹の毒蛇が、スカルラーベに襲いかかった。普通なら、相手がもだえ苦しむのを見ながら勝利の舞を踊るライムであったが、ドクロでできた鎧に阻まれて蛇の鋭い牙もまったく歯が立たない。
「なんだ、それは? 蚊にさされたほどにも感じぬぞ。それでは、こちらからも行かせてもらうとするか」
ブーーン!
ものすごい音を立てて、冥界一の切れ味を持つ大鎌がライムの首をとばした。
口ほどにもない。あっさり勝負アリか。
そう思った瞬間、スカルラーベは、鎌に目を閉じたライムの生首が乗っかっているのに気づいた。鎌の上に乗ったライムの首の眼が開いて、ニッコリ微笑んだ。「口ほどにもない。これで勝負アリとお思いか?」
スカルラーベの目の前でライムの髪から生み出された毒蛇たちが、スカルラーベの鎧の隙間から筋肉に向かってうねうねと動き出した。
だが、スカルラーベはまったく動じない。
ニヤリと笑うと、サラマンダーの女王ローラの息子としてのパイキネシスを使って、口からインフェルノを自らに吹きかけた。千、二千、三千、四千度、さらに炎は数千度を突破すると一万度にせまっていく。毒蛇たちは、冥界の業火によってボロボロになると下に落ちていった。インフェルノをはきおえると、スカルラーベはライムの首を身体の方に放り投げて乗せた。
「ストライクだな」
「一応、礼を言っておこう」
他の立ち会い人たちには、流れる虹の輝きのせいで何が起こっているのかよくわからなかったが、心眼ですべてを見ていたマクミラはあきれはてていた。
いったい何なの、この二人は。まったくノーガードの撃ち合いじゃないの。戦闘能力だけなら、たしかに冥界親衛隊将軍のスカルラーベ兄さんは神界でもダントツの強さだし、ライムも父が闘いの神カンフでおそろしく強いし、母がゴルゴン一族のエウリュアレで不死身だから負けようがないけれど。でも不思議。闘っている二人が楽しそうに見える・・・・・・
「まだ楽しませてあげたいけど、お主には敬意を表して我が秘技トータリー・アンエクスペクテッドで勝負をつけさせていただくとするか」
ライムは、怒りに身をまかせて変身すれば、青銅の顔にイノシシの牙を見せ、髪のすべてが蛇になり、口からは長い舌が垂れ下がる。その姿を見たものは、仲間でさえ血も凍る恐怖によって石に変わってしまう。だが、普段はネプチュヌスの愛人であった美しかった頃の叔母メデゥーサにうり二つの姿である。
「一度でも見たものを、すべて石に変えるゴルゴン一族の秘技か・・・・・・どうせ生まれついたからには、どこかでいつか死ぬのが定め。俺様に、その秘技が通じるかどうか、試してみるかよい。だが、その美しい顔が醜い恐怖の仮面になるとは哀れなことよ」
その瞬間、それまでの微笑みが消えて、ライムの顔色が真っ青になった。
「貴様、なんということを・・・・・・」
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