葦津泰國の、私の「視角」

 私は葦津事務所というささやかな出版社の代表です。日常起こっている様々な出来事に、受け取り方や考え方を探ってみます。

麻生首相の国家構想

2009年04月10日 10時25分35秒 | 私の「時事評論」
夢を持ちながらの経済回復を

麻生首相が日本記者クラブで、10年間の日本の成長戦略構想を発表した。
 太陽光発電などによる「低炭素革命」や、介護や地域医療の充実による「健康長寿社会実現」などによって三年間で最大200万人の雇用を増大し、10年ほど後までにはGDPを120兆円押し上げ、400万人の雇用を作り出そうというもの。
 長い期間を設けているもので、設計図通りに進むかどうか、構想を示されただけでは簡単に見通しを立てることは出来かねるが、①ともすれば暗くなりがちな将来に対しての国民意識に夢を持たせるものであり、②しかもその狙うところが自然との共生に向けられていること、③現実に深刻な問題に育ってきている高齢化社会へも目が向けられている点などで、ここはその構想に期待をかけることにしたい。またこれが、その発想の基礎に、日本がはぐくんできた生活意識と、非常に近いものがあることも見落としたくない。
 こんな構想があの麻生内閣から示されるようになった背景には、国会における麻生内閣の立場が、悲観的材料ばかりの中で、歯を食いしばって現実政治に取り組んでいる中で、少しずつ明るいものになってきたことを示しているものだということもできるだろう。国会で法案一つ通らないのではないか、解散に向け、しかも圧倒的な力の差で選挙での敗戦必至の選挙管理内閣だといわれ、そう信じられてきた中、与党の中からまでも麻生不信が支配する中で、政府はじっと我慢の政治に専心、とにもかくにも支持率を高め、補正や通常予算を通し、海外での自衛艦の給油を存続させ、ソマリア沖に新たに海賊活動から輸送船を保護する自衛艦派遣までも成功させた。
こんな半年間の実績は、近年歴代の首相に比べてもよくやっているように見えるだろう。もちろんそれは野党の頭数ばかりを揃えても、効果的な政治成果を何一つ示しえない無能さと、国民に対する信頼感のなさ、急激に世界を襲った不況への対応力の欠如などに支えられたものだったが、かなりの評価をしてよいと思う。
 ただ、そんな麻生内閣であるが、私はここらあたりで、もっとわれわれ国民が、単なる物理的な景気の上昇だけを目標に日本人としてここに群れているのではなく、この日本を住みやすい国、安心できて豊かな国として生きられる国にしたいという意欲を感じさせる国にしていこうという、経済以外の目標をも持てる国、住んで満足できる国をみんなで目指せる国づくりを志向してくれれば、さらに良いのだがと願っている。
 老いも若いもお互いにいたわりあう国、困った時はお互いに助け合う国、少々経済的には不自由でも、支えあって生きていることに喜びを感ずる民の住む国にする。まじめに努力する人を大切にし、自分勝手な行動は慎まねばならないとみんなが認識する国、人の幸せを喜び、他人の苦しみを自分の苦しみとして悩む。そうだ精神面での良き気風を作る。これに力を入れれば、先に挙げた成長戦略構想は大きく日本国を変える力になるだろう。
 具体的にはいろいろの問題が出てくるだろう。だが今までの日本が、あまりにもそんな国民の気持ちの持ち方においてすべてを置き去りにしてきすぎた結果を、ともに反省しあって変えていく努力を、忘れてはならないと思うのだ。