葦津泰國の、私の「視角」

 私は葦津事務所というささやかな出版社の代表です。日常起こっている様々な出来事に、受け取り方や考え方を探ってみます。

小沢さんの秘書が捕まった

2009年03月03日 21時31分59秒 | 私の「時事評論」
 民主党の小沢党首の公設秘書が逮捕された。このところ話題になっているあの西松建設の使途不明の脱税額の捜査のあおりで、多額の資金が彼のところに違法に流れていたという疑いによるという。ありそうな話だと思う。かねてより小沢氏の政治資金に関しては不透明なところが多々感ぜられていたが、マスコミもこの問題にはなぜか触れようとせず、不審な念を残しながらも放置されていたからだ。
 今のマスコミはニュースをまんべんなく伝えること、これは報道にとって大切なことだと思うのだが、そんなことはもう放り投げて、ただセンセーションに自分らの取り上げたい問題のみを報道し、結果として、国民を世論指導するような体質が濃厚にあるからだ。伝えられない国民に知らせなければならないことは多く、無視したり見過ごしてはならないことが、つまらない大きな見出しの記事の陰で消えていく。往年の朝日新聞、ここは小さく扱ってでも、ニュースの連続性には配慮をしているので、その報道の角度には種々の意見があったがそれなりに評価をされていた。それが大人の新聞だと評価されてきて、新聞全体にもそんな気風があったのだが、いまは朝日にもそんな報道者としての良識は感ぜられない。

 折から参議院の委員会では政府の出した予算案が否決された。ニュースは、さてこれから予算案が再び衆議院に回されてはたして三分の二を確保できるかどうかの問題のみに向けられているようだけれど、私は参議院がばらまきの給付金を除くほかの予算はすべて承認し、これを除いた予算案はわざわざ可決したことに注目している。
 今回の予算80兆円は、わずかな給付金を除いて、ほとんど審議らしい審議もしないで、政府の出したものを審議もそこそこにすんなり通してしまったからだ。

 これは何を意味するのだろう。私は自民党にも民主党にも争うべき政策の違いなどはほとんどなく、ただ役人の作ったものを深く審議もせずに通してしまう共通の体質があると思うからである。給付金の問題は確かに麻生内閣の目玉として出されたが、マスコミが揃って総選挙目当てのばらまきにすぎないと批判し、与党の中にも賛否があった。それはただ、麻生首相を選ぶか他の首相を選ぶかという個人的な人気投票にすり替えられてしまっている。


 今の国会は、以前のそれと違って、中身を吟味して、審議によって内容を厳しく見るということをしなくなった。この傾向が極端になってきたのは小泉内閣の時代からだと思うが、それによって、郵政民営化や今回の給付金などのように、一部のことには皆が注目するが、その他のことは、国会議員自身が何を可決したかわからないうちに、国政にかかわる様々なことが、官僚の作ったそのままの形で、安易に通ってしまう傾向も持っている。高齢者医療の制度、これに関わる健康保険制度、裁判員制度、男女雇用均等法など、後になって、なんでこんなものを安易に通してしまったんだと国民が騒いでも、すでに審議も満足にされずに通ってしまったものが実に多い。そして長い審議はただ、審議拒否や、政治とは直接つながりの薄い言いあいなどで終始する。

 これは、国会という場が、ただだれが首相になりどの党が与党になるかという人気投票に堕してしまい、政治そのものはどの党が与党になっても官僚が実質的には握り、左右していくということを、政治家自身が認めてしまっていることを証明しているのではないだろうか。

 そんな中で、その今の議員さんにとっては国民生活よりも政治よりも大切な、どの党が与党になるかという「人気投票」に大きく響く事件が起きた。そんな視角で眺めていきたい。