6月13日(土) 主としてフリーランスのライターとして取材をしていたときも、テレビのコメンテーターを生活の中心にしていたときにも「見えなかった世界」がある。意図せずとも世界はとても小さな額縁で切り取られていたのだ。朝の通勤通学時間に定点観測のように訴えをしていると、多くの障害者が黙々と仕事に出かけている姿を目撃する。知人となった方の働く施設の近くを偶然に通過したとき、そこには精神を病んだ若者たちが自立を目指し、それを支える人たちがいることをこの眼にしたこともある。商店街でも路上でも、数限りない人たちから「生活の苦悩」を訴えられる日々。この一身にいったい何ができるのかと現実の重さに戸惑うときもある。それでも聞くこと、見ることからしか出発できない。ある保守系無所属を自任する理容店主が今日も怒っていた。「誰がこんな社会にしたんだと与党の政治家に言いたいですよ」。弥生町を歩いているとき、ポスターを貼り替えるべく記録を見ると「瀬田」あった。該当する現地に行って驚いた。先日何者かによって殺害された瀬田御夫妻の自宅だった。放火され全焼した家屋周辺はいまだ青いビニールシートで被われている。奥様が襲われた玄関もあらわで、事件の異常さが日常の延長にあることを訴えている。日常の薄い被膜を剥がせば、この世は悪意があちこちに潜んでいるのだろう。成増で長老的な協力者と懇談。
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わが子を襲う派遣切り、おじいちゃんの公的介護支援の切り縮め――生活の中にもたらされる政治的災厄と宰相の無能だけがよく見えてしまう。そのような共通の政治体験の中で、政治意識ははっきりと前に進みつつあります。その広さ、深さ、持続において過去には経験しなかった質的飛躍がある。
どうやらわれわれは、実におもしろい歴史的経験をふたたび目のあたりにしているようです。