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有田芳生の『酔醒漫録』

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『新版・きけわだつみのこえ』の致命的欠陥

2008-03-20 09:22:10 | 事件

 3月19日(水)080319_15020001 定例の都内遊説。練馬区の中村橋駅へ。何度か同じ場所で訴えていると、自転車整理の男性たちと顔見知りになった。小雨のなかで年金、教育、後期高齢者医療制度の問題点、成熟社会の展望などを語る。澤田篤さんがその様子を撮影してくれた。石神井公園では2回目、3回目の「有田塾」の会場を下見。光が丘では買い物の足をとめて聞いてくれた人たちと立ち話。高松の宮本ファームで農業問題でのお願いに。ここでは体験農園を行っている。焼き肉店も有名で、漫画家の弘兼憲史さんとご一緒する約束が実現しないまま。都心に戻り半蔵門から地下鉄で渋谷。雑用を済ませて原宿。新宿コマ劇場で20日まで開かれている都はるみさんの座長公演に二女と行った家人と待ち合せ。イッセー尾形さんの公演へ。さらに円熟味を増していることに感服。同い年のエースのひとり。完璧な演技ゆえに神経は舞台に集中。ところが右隣の男がやたら不自然にばか笑い。さらには演技の合間に携帯電話のメールを確認している。暗く静かな会場にバイブ音や明るい画面が浮かび上がる無神経。そういえば昨夜の映画館でも後ろに座った男が、紙を手で持つ雑音をずーっと出していた。コンサート、演劇、映画の会場ではケータイの電源を切ることを義務づけるべき。罰金を取ってもいいぐらいだとさえ思う。JRで新宿を経由して中野。正しい居酒屋の「らんまん」へ。大阪の「わのつぎ」のような居心地いい店が東京にもあることを忘れていた。「きけ わだつみのこえ」の改竄問題。岡田裕之さんが書いた「日本戦没学生の思想ー『新版・きけわだつみのこえ』の致命的欠陥についてー」(『大原社会問題研究所雑誌』、2007年1月号、2月号)をネットでも見ることができるので紹介する。23日の「わだつみ会」総会で岡田さんを理事から外す動きが執行部のなかであると聞いた。もしそんな事態になれば平和運動の象徴であった「わあだつみ会」は、まさに私物化を完成させることになる。


〈資料〉イージス艦の漁船衝突事件

2008-02-26 10:55:19 | 事件

ミサイル防衛計画を中止せよ!
太平洋を平和の海に!
イージス艦の漁船衝突事件に際しての声明

 2008年2月25日     平和に生きる権利の確立をめざす懇談会


 2月19日朝に千葉県野島崎沖で起こった、イージス護衛艦「あたご」の衝突による漁船「清徳丸」沈没事件は、軍事優先の海がなお続く実態を明らかにしました。1988年の「なだしお事件」、2001年の「えひめ丸事件」の際に、情報を隠蔽・改竄し責任逃れをする自衛隊・米軍に対して、海で働く皆さん、海の平和を求める市民とともに真相解明・被害者救援の運動の一端を担った私たちは、このような事故の再現に、強い怒りをおぼえます。
 清徳丸はわずか7.3トン、家族経営の零細な漁船です。父親の吉清治夫さんとともにいまだ行方不明の吉清哲大さんは、23歳の若者でした。20万漁民の半数以上が60歳を超え、林業・農業に続いて漁業崩壊の危機が叫ばれるなかで、わずかに残る希望の灯のひとつを、海上自衛隊が消したのです。
 防衛省・自衛隊の情報隠しにより、いまだ事件の真相は明らかではありません。しかし明らかなことは、「あたご」が前方に漁船団がいることを承知のうえで、自動操縦態勢のまま、海上衝突予防法を無視して、回避行動をとらずに突っ込んできたことです。さらに、事故通報の遅れにより救援活動の開始も遅れました。これは単なる事故ではなく、暴走艦によって引き起こされた重大事件と言わねばなりません。
 奇妙なことは、艦の運航責任者である艦長の舩渡健1等海佐の肉声がまったく聞こえてこず、また航泊日誌の存在が不明なことです。横浜地検と第3管区海上保安部による調査の進行を待つほかはありませんが、被害者救援、事件の真相究明、事故責任の明確化、再発防止策の強化が望まれます。
 そして「あたご」は、最新鋭・世界最大のイージス艦です。イージス・システムは、軍事衛星や僚艦からの情報も総合して、20の目標に同時に対応できると言われますが、米国製で全容は日本に開示されていません。「あたご」がハワイでの訓練からの帰路であったのも、システムの改良や点検、僚艦とのデータリンクの確認が、国内では不可能だったからでしょう。このイージス・システムと、開発中で近く配備されるSM-3ミサイルで、海上自衛隊のミサイル防衛システムが完備されます。こうして米国の核先制攻撃態勢に組み込まれ舞鶴に配備された「あたご」は、朝鮮半島を睨むのです。
 このような軍艦が、はたして日本に必要なのでしょうか。このような艦の運用は、平和憲法をもつ日本にふさわしくないのではないでしょうか。日米同盟のもと、米国本土防衛に資することの驕りが、民間船を蹴散らして進むことにつながっているとしたら、恐ろしいことです。
 そもそも海上交通稠密な東京湾口に軍港・横須賀があるのは誤りであることは、「なだしお」事件当時から言われていました。また房総から三宅・八丈付近の漁場へ向かう付近の野島崎南方に、広大な海上自衛隊の射撃訓練場「C区域」があり、今回の事件当日の予定も含めて頻繁に訓練を行っていることも、民間船にとっては脅威です。海の軍事優先使用をやめさせなければなりません。
 東太平洋には、国家非武装の憲法をもつ国、コスタリカがあります。ラテンアメリカにはトラテロルコ条約、南太平洋にはラロトンガ条約、東南アジアにはバンコク条約があり、いずれも非核兵器地帯であることを定める条約です。東アジアに位置する日本が、米国とともに軍拡・軍備革新に邁進するのは、世界の動きに逆行するのではないでしょうか。
 私たちはイージス艦の漁船衝突事件に際して、何よりも被害者救援と真相究明の徹底を求めるとともに、ミサイル防衛計画の中止を求め、太平洋を平和の海にするために、力をつくします。


韓国大統領暗殺事件の深淵

2007-12-20 08:57:22 | 事件

 12月19日(水)寒い一日。「霊感商法」という言葉がテレビや新聞で大きな話題となる事件が起きた。「癒し」などを入り口に「先祖のたたり」などと脅して高額で商品を売りつける。統一教会が行っていたころは「霊場」などを名乗ることもあったが、こんどの宗教団体は「ヒーリングサロン」と高級感を装い、女性をターゲットにするなどして「洗練」されているところが特徴だ。被害は全国で100億円近く。赤坂にある拠点マンションの名義人、保証人が神奈川県警のY警備課長(警視)と警備担当次長だった。警備課長はこのマンションにも出入りして同僚などから銀行口座に入金があったというから、霊感商法にもかかわっていた疑いがある。霊感商法が社会問題となったのは1980年代。あれから30年近く経っても、悪徳商法は人間の弱みにつけこみ、常に新たな装いで被害者を生んでいる。

 ヘッドオフィスで田中康夫代表、平山誠総務局長と打ち合わせ。街宣は選挙区でいえば8区(杉並)から9区(練馬)を経て10区(練馬の一部と豊島)を走る。かつて暮らした光が丘では「頑張って」と若い女性。同じ公団に住んでいたという。他力本願でない自力本願。まさに「脱しがらみ」「脱なれあい」で進んでいくことは、明々白々とした生き方をすることでもある。夜はシネマート六本木。ちょうど韓国の大統領選挙の投票日。予想通り保守の最大野党ハンナラ党の李明博・元ソウル市長が勝利した。「ユゴ 大統領暗殺」は、1979年に起きた朴正煕暗殺事件の1日を描いた作品だ。05年に完成したとき、元大統領の家族から上映禁止の裁判が起された。その結果、記録映像部分が黒塗りで上映されることになった。韓国ではいまなお高裁レベルで裁判が続いている。日本での上映は世界ではじめての無修正版。

140  18年も続いた軍事独裁政権の終焉はあっけない。その現場をリアルに再現したすごさと、その前後の心理描写が意外でもあった。はたして暗殺は計画的であったのか。史実に照らしても事後の構想などはなかったのだろう。中央情報部部長の個人的思いから起きた事件かといえば、その当夜のアメリカ大使館がずっと慌ただしかったことからも疑惑は残っている。韓国では極秘にされた大統領暗殺をアメリカは察知していた気配があるからだ。そうはいっても事前に関与していれば事態はもっと混乱なく収束していただろう。韓国が高度成長を遂げ、中産階層が生まれ、消費税が導入される。生活も意識も変わる国民にとって軍事独裁政権は変えなければならない対象となった。

 民衆は街頭デモで政権に反抗の意思を示す。こうした背景のもとで大統領暗殺は実行された。宴会の場に女子大学生が呼ばれる。そのひとりはギターを手にして都はるみさんの「北の宿から」を歌う。どうやらここは創作のようだ。社会では日本の歌曲が禁止されているのに、権力者のもとでは許されている。その象徴的場面として「悲しい酒」とともに使われたのだろう。あまりにも生々しいシーンの連続が韓国社会にも衝撃を与えた。六本木での観客は10数人。もっともっと多くの日本人に見てもらいたい作品だ。日比谷に出て三田線で神保町。「家康」で常連と雑談しながら「雪むかえ」を飲む。


アメリカ型犯罪が起きる日本社会の変質

2007-12-15 09:33:13 | 事件

 12月14日(金)晴れ。佐世保のスポーツクラブで散弾銃を乱射する事件が起きた。教会で自殺した犯人は被害者のどちらかとトラブルがあったと捜査本部は見ている。スポーツクラブではさまざまな問題が起きる。客同士の喧嘩などはしばしばだ。かつて私が通っていたジムでは、プールのなかで乱暴な態度を取るメンバーに腹を立てた客が泳いでいる相手に後ろからつかみかかったこともある。スポーツクラブの規約を見れば、日常的にストーカー事件が起きていることも容易にわかる。客が客に、あるいは客が従業員にである。そうした会員を退会できるように明記されているのだ。個人的経験から振り返れば、そうしたトラブルは、とくに30代に多いように見える。発砲事件は統計的には2001年の215件から減少し、今年は54件、死者は19人(一般人の死者は8人)だ。昨年の死者2人に比べて増加している。問題は統計数字ではない。佐世保事件のようなアメリカ型犯罪(発生形態と結末)を「きざし」として敏感にならなければならない。散弾銃を乱射し、犯行後に自殺する事件はアメリカではしばしば起きている。日本の犯罪に質的変化が起きたきっかけは1995年のオウム事件であった。ここでも「95年転機」なのだ。スポーツクラブという日常空間で発砲事件が起きた異常は、日本社会の劣化を象徴して余りある。

137  六本木のウォルト・ディズニー・スタジオ試写室で「ナショナルトレジャー/リンカーン暗殺者の日記」を見た。まさにディズニー映画。「パイレーツ・オブ・カリビアン」のように観客をとらえて離さないテンポいいストーリー。上映とともに女性警備員がスクリーン横に座り客席を監視。「映画泥棒」を摘発するための措置で、知的所有権に厳しいディズニーらしいやりかただ。上映前に注意するだけでなく、ここまでやらざるを得ない実体があるのだろうか。マスコミ試写会も信用ならぬということ姿勢にいささか「どうかな」と思ってしまった。赤坂の「auショップ」へ。先日高知に行ったとき、これまでの携帯電話を東芝製の「W55T」に機種変更した。これまででいちばん薄いカード型だ。ポイントが貯まっていたので新しい携帯を入手するのにほとんど料金はかからなかった。ところが会話がとても聞こえにくい。起動までに一瞬の空白がある。バイブ機能も優しすぎて気がつかないほどだ。これは困ったと相談すれば、別の機種に変更するには5万円もかかるという。ジムで泳ぎ、やはり気になり、新橋の「auショップ」。親切な対応で結局以前使っていたカシオの機種を再使用することにした。いったん契約すればその機種に不具合があっても変更できない。何とかならないものか。


横田めぐみさんの消息を聞いた

2007-11-25 09:32:00 | 事件

 11月24日(土)晴れ。しかし寒い。いつしか秋が去ってしまったようだ。北朝鮮による拉致被害者家族会の総会で横田滋さんが正式に代表を退いた。めぐみさんの拉致から30年。救出を求めての講演(訴え)は1000回を超えたという。先日、帰国した蓮池薫さんの兄である蓮池透さんと食事をしたときのこと。いくつかの疑問を訊ねた。そのひとつが「まだ語っていないことがあるのではないか」という疑問だった。薫さんは北朝鮮での生活を政府の関係部署に「すべて」話したという。そのなかには横田めぐみさんについての情報も入っていた。とくにヘギョンちゃんを生んでからの精神的不安定や、すでに報じられたが日本に戻ろうと二度脱出を試みたことなどなどである。夫によれば94年に「義州」の病院に入院したという。その詳細は横田滋さん、早紀江さんも聞いている。ある時期、早紀江さんが「(めぐみさんが)どんな情況にあろうと取り戻す」と語ったのは、蓮池さんからの話を聞いていたからだ。どうして政府は義州の病院を調査することを求めないのだろうか。拉致被害者の具体的な情報があったならば、そこに焦点を定めて交渉をすべきだった。蓮池さんは「何度か死を覚悟した」局面があったという。同じ村で暮らすメンバーの行動に対する連帯責任だ。

 ある指導員から「池田大作とはどういう人物か」と聞かれたこともあるという。拉致被害者のなかにいる創価学会信者が、北朝鮮の教えることに反発したときのことだったという。蓮池薫さんが自分の置かれた立場を危険だと判断し、「ここで生きるしかない」と決めたのは、反抗すれば「危ない」と実感したからだ。いずれにせよ横田早紀江さんがいつも語るように「時間がない」。「救う会」「拉致議連」「家族会」は福田康夫首相がブッシュ大統領と会談する前に訪米し、北朝鮮の「テロ支援国家」解除を中止するよう関係部署に求めた。関係者は「大きな成果」というが、どのマスコミもそうは判断していない。6か国協議でも拉致問題は日本の課題でしかない。「対話と圧力」路線がうまくいかないとき、どこかで軌道修正をするしかないだろう。「対話」のなかにも戦略があればいい。めぐみさんの娘であることが確認されたヘギョンちゃんに横田夫妻が会う機会をいまや作るべきだ。その口から語られる「あれこれ」を恐れるよりも、いまや人道的対応をすべきときではないか。横田さんが住む川崎のマンションの住民たちが運営している「あさがおの会」のホームページと横田めぐみさんをめぐるさまざまな情報についてまとめた「電脳補完録」を見ていただきたい。


横田めぐみ拉致事件から30年!

2007-11-14 08:37:00 | 事件

 11月13日(火)晴れ。朝から夕方まで医療問題、とくに75歳以上に新しく創設される後期高齢者医療保険問題の資料を読む。歴史的経緯からみれば、高齢者の住民税までが増税されたように、「平等な負担」というスローガンのもとで、市場原理主義が福祉の世界を乱暴に侵食しつつあるということだろう。相対的貧困率などの国際比較や解決の道筋などを検討。気分を変えるためにネットで民主党の小沢一郎代表の記者会見をライブで見る。「政局」を聞く記者が多いなかで、大局を問う最後の質問が興味深かった。大連立との関連で、これからは「談合」のように疑われるような政策協議は行わないと小沢代表は答えた。再び医療問題の世界へ没入。池袋に出て開店前の「おもろ」に立ちより常連に渡してもらう雑誌を預け、西武のリブロ。『リスク学入門2 経済からみたリスク』(岩波書店)、大塚秀之『格差国家 アメリカ』(大月書店)を入手。赤ワインを飲みながら「BABEL」を見る。不気味な21世紀。不安な時代はまだまだ続くのか。モロッコ、アメリカ、メキシコ、東京。どうしても東京の街に落ち着かない雰囲気を感じるのは、そこで暮らす人間にほかの国にはない不安定さを覚えるからだろうか。現代の不安と不気味さを象徴するのが拉致問題だ。北朝鮮に横田めぐみさんが拉致されてから15日で30年。この異常事態を一刻も早く解決しなければならない。自戒を込めて思うことは、早紀江さんがいつも凛として、しかし悲しげに語るように、「(私たちには)時間がない」。どのマスコミよりも早く報じた「産経」の記事を読んでいただきたい。当時の世相から書きはじめている味のある原稿だ。


高知「白バイ事故」判決への疑問

2007-11-01 08:52:13 | 事件

 10月31日(水)締切り原稿2本の第一稿を書き上げる。昨日見たBC級戦犯映画「明日への遺言」の原作は、大岡昇平さんの『ながい旅』だ。昨夕、日本橋の丸善で探したが、ない。文庫目録を見ても『野火』や『俘虜記』はあっても『ながい旅』は掲載されていなかった。新潮社の編集者Mさんに電話をして問い合わせたところ、単行本は昭和63年、文庫本は平成3年に絶版になっているという。何でも文庫本で常時動いているのは2000点ほどだという。かくして名作さえ絶版となっていくのだ。ネット古書店で調べると在庫は数々。さっそく注文する。午後から街頭宣伝。麹町から赤坂、渋谷に出て、陽が落ちるまで世田谷区を回った。成城学園では大人や子供がハローウィンのいでたちで集団あるいは少人数でぞろぞろと歩いていた。町ぐるみの取り組みなのだろうか。好ましい風景に気持ちが温かくなる。新党日本のヘッドオフィスで北海道新聞の取材。テーマは草薙厚子さんの単行本をめぐる諸問題だ。検察の横暴とそれにつけ入る隙を作った筆者と版元の問題を語る。異常捜査ということでは昨日、高松高裁で控訴棄却された「白バイ事故」事件について関係者に話を聞いた。

 事件の詳細や疑問点については「きっこの日記」に詳しい。裁判はスクールバスにぶつかり死亡した白バイ警察官の過失をめぐって争われてきた。判決はバスの運転手に禁固1年4か月の実刑。運転手と弁護人は無罪を主張。その根拠は証拠とされたブレーキ痕が警察による捏造だというものである。難しいなと思うのは、事故が起きてからやじ馬や取材者たちのいるところで、短時間にどのようにして警察がブレーキ痕を捏造できるのかということだ。状況証拠では捏造を証明することにはならない。「弁護団は警察による冤罪で争うべきではなかった」という意見もある。それにしても、どこでも起りうる事故に対して、禁固1年4か月はあまりにも重い。被告人は最高裁に上告した。捏造疑惑も重大な問題だが、どうしてこれほどの量刑なのかという疑問が大きい。世論の高まりだけが、このおかしい判決を修正することができるだろう。高知で起きた事件ではあるが、もっと全国的な関心が集まることで事態を打開すべきだろう。検察や警察の横暴に歯止めをかけるためにはさらなる世論の力が必要である。


取材源を守れなかったノンフィクション手法(2)

2007-10-16 08:14:18 | 事件

 10月15日(月)いくつかの新聞社からコメントを求められたので、もう少し草薙厚子さんにかかわる事件について書いておく。少年を鑑定した精神科医が供述調書を草薙さんサイドに渡したことで逮捕されたことがニュースになっているが、そこには重層的な問題がある。まずは取材プロセス。草薙さんがこれまでと同じく少年事件の再発防止のために取材を行ったことは、いささかも疑わない。鑑定医から話を聞き、可能ならば供述調書にも目を通したいと思うのは当然のこと。そして医師から調書を見せてもらうことに成功した。はじめはボイスレコーダーに録音したがとても間尺に合わなかった。そこでカメラで撮影したという。3000枚もの調書をカメラで撮影したとはとても思えないが、草薙さんはそう記者会見で語っている。問題はそこからだ。調書を読めば事件の背景に父親による異常な暴力行為があったことが推測できる。しかし父親から取材することはかなわなかった。その段階で講談社の法務部と相談をしていたならば取材源逮捕とはならなかった。単行本の主要部分が供述調書で成立していることで、取材源が特定されるからだ。そこにはノンフィクションの叙述方法とともに、編集体制の問題がある。

 253ページのなかでポイントを絞って調書の一部が何か所か引用されているぐらいならここまで大きな問題とはならなかっただろう。あるいは調書を利用しつつ、たとえば「そのときの会話を再現しよう」と書いて、記録されたやりとりを紹介するのはよく取られる手法だ。少年直筆の「殺人カレンダー」を裏表紙に刷り込んだことも刺激的だった。そこで権力の発動となった。長勢甚遠法相(当時)は6月5日の会見で「司法秩序を乱し、少年法の趣旨に反する」と批判し、流出元の調査を省内に指示、最高検も動かざるをえなくなる。大阪高検は消極的だったと聞くが、捜査が開始された。調書から草薙さんや編集者、さらに第三者の指紋も検出された。ライターだという。そこで嫌がらせのような噂話が流される。さらに事件周辺から意外な人物が浮上した。法務省が研究を依頼している京大医学部教授(逮捕された鑑定医とは別人)である。家宅捜索が行われたけれど、マスコミには名前も出てはいない。「落とし所」が検討され、精神科医が逮捕となった。草薙さんがこの問題をリポートした「週刊現代」はこれまで音無しだ。こうした事態にあってこれから報じることはあるのだろうか。


取材源を守れなかったノンフィクション手法

2007-10-14 15:27:43 | 事件

 10月14日(日)草薙厚子さんに供述調書を漏洩したとして医師が奈良地検に逮捕された。草薙さんへの捜査は引き続き行われるが、焦点は在宅起訴されるかどうかだ。『僕はパパを殺すことに決めた』(講談社)は、奈良で起きた放火事件を加害者の少年や虐待を続けていた父親の供述調書を「そのまま」引用して構成の核心部分とした著作だ。私はいまでも事件の再発の背景にあった父子関係を明らかにしたことは正しかったと思っている。ただし、そのこととノンフィクションの手法上で問題がなかったかといえば、明確に「ある」と言わざるをえない。最大の問題点は、調書の裏付けとなる父親本人から取材できていないことだ。調書は物語(ストーリー)として作成される。そこには「作為」が入り込む余地がある。したがって取材者は調書の内容が正しいかどうかを確かめる作業を必要とする。そこが欠けているのだ。結果的に情報源を逮捕させてしまったことは取材者として致命的だ。もはや闇に消えるのみだが、草薙さんと逮捕された医師をつなぐ「第三者」がいる。法務省ともつながるその人物がポイントだと私は判断している。しかし直接に調書を見せた医師を逮捕することで、この問題に幕が引かれようとしている。医師の逮捕で少年事件をこれから取材する者も、取材される者も精神的に「腰が引ける」ことを危惧する。

 フランシス・ウィーンの『マルクスの「資本論」』(ポプラ社)はとても面白く刺激的な入門書だった。とくに「死後の生」(第3章)では、「マルクスは、21世紀でもっとも影響力のある思想家となるかもしれない」と結んでいる。ソ連崩壊の理由などを分析する学者などは、意識せずとも『資本論』の論理を使っているからだ。グラムシが新しい大衆教育システムを通じて「反ヘゲモニー」文化を発展させる必要を説いたこと、『マルクスを読む』を書いたアルチュセールがほとんどマルクスを読んでいなかったことなど、興味深い記述にあふれている。面白かったのは、マルクスの人間性だ。エンゲルスが経済学批判を早く印刷屋に渡せと言ったのが1842年。マルクスは「わかった」「ほぼ仕上がっている」と答えつつ、借金、何度もの病気(ときに仮病)、さらには実践に没入することなどで、結局印刷屋に第1巻の原稿を渡したのは25年後の1867年のことだった。初版は1000部。それが売りきれるまでには4年もかかった。資本主義が続くかぎり、『資本論』には生命力があることを再確認した。劇作家で演出家でもある宮沢章夫さんの『「資本論」も読む』(WAVE出版)を読みはじめる。


「悪党人生 おもろいで」

2007-10-09 08:37:49 | 事件

 10月8日(月)世間は休日。いったい何の祝日なんだろうかと思えば「体育の日」。それは東京オリンピックの開会式である10月10日だったはず。便宜的に連休を作るのはあまり感心しない。夜まで外出せずに原稿や読書。家人と近所の書店に行き、寿司屋で食事。23年前に開店したときの話を伺う。当時は店も少なく駅前には不動産屋があったぐらいだったという。同じころに開店したパン屋がいきなり閉店した。店主は朝5時半から仕事をして、奥さんと長男があとから出勤、一時は職人もいたが、いつしかいなくなり、ついに店を閉めた。駅前に大型スーパーが出店し、パン売り場ができただけではない。コンビニでも各種のパンが販売される影響もあったのだろう。「街の顔」を守るには何が必要なんだろうか。森下香枝さんの『真犯人』はとても面白かった。文章の相性は別にしても緊張感がある。森下さんが指摘した「鉄ちゃん」が真犯人かどうかはわからない。それでもグリコ・森永事件を捜査資料を駆使しつつ振り返るところが圧巻だ。「劇場型事件」は当時もいまもミステリーじみている。昨今の事件がおぞましい殺人まみれなのに対して、あの80年代は、後半に現在の異常犯罪を予感させる宮崎事件などがあったものの、まだまだ全体的に牧歌的だった。脅迫状のひとつに犯人グループ「かい人21面相」のこんな言葉がある。「わしら 悪や くいもんの 会社 いびるの やめても まだ なんぼでも やること ある 悪党人生 おもろいで」。「かい人21面相」はどこで何をしているんだろうか。午後10時からNHKスペシャル「北朝鮮帰国船」を見る。現代の全体主義国家・北朝鮮は国民監視体制でもある。この国家を「地上の楽園」と褒め称えた者たちの歴史的責任は重い。NHKでは午前中に知覧を出撃した特攻隊の家族を特集していた。いい仕事の連続に拍手。