“対戦相手の印象は?”メディアの無意味な質問に本音を語らなくなった選手たち。理解できる本田の取材拒否(フットボールチャンネル) - goo ニュース
2014年6月14日(土)11:04
“対戦相手の印象は?”メディアの無意味な質問に本音を語らなくなった選手たち。理解できる本田の取材拒否
(フットボールチャンネル)
24時間体制のニュース文化において最もネガティブな要素
選手やコーチから試合前に発せられるコメントは、日本の完璧な交通信号で制御されている横断歩道の横で赤い棒を持って合図を送ることと同じくらい、現存するもので最も無意味な存在だ。
ジャーナリストが出来合いのテンプレートに打ち込むありきたりな決まり文句は、現代主流となっている24時間体制のニュース文化において最もネガティブな要素の1つだ。
我々は避けられないサイクルに陥っている。ファンとメディアは毎日新たなニュースを必要としている(本当に必要なのか?)。さらにツイッターでは、1時間、1分、1秒ごとにツイートされ続けている…。
多くの選手は、何度も同じ質問を尋ねられ続ける事によって、何かを言っているようで実際には何も言っていない状況に持っていくことが、ますます熟練されてきている。
または、本田圭佑のように単に何も話さない選手も出てきた。
しかし、誰が彼を批判出来るのだろうか? 想像してみてほしい。あなたが毎日仕事終わりにコンディションや目標、そして思考について質問され続けたら? そして、上から目線で「ファンに向けたメッセージを」と言われたら?
そもそもW杯に向けた調整の段階において、約1ヶ月後に迫ったトーナメントについて質問されたところで詳細など話せるはずがない。
――対戦相手の印象は?
「彼らは組織的で、フィジカルが強く、攻撃的なチームだ」
――あなたのコンディションはどうですか?
「日々良くなっているよ。順調に調整が出来ていると思う」
――大会の目標は?
「1つひとつのゲームに集中し、全て勝ちたいと思っている」
吉田が証明した試合前の“予言”の無意味さ
特にこの最後の質問は、実際にはほとんど無意味なものだ。(とは言え、私もサムライブルーの何人かの選手にこの質問をしたジャーナリストと同じくらい有罪だが)
この質問は、答えなくてはならない選手にとって正しい方法のないものだ。ハードルを低く設定すれば信念の欠如を批判され、高い目標を掲げれば冷やかされる。
そして、岡田武史監督が2010年の目標を掲げた際に、多くの人々があざ笑うかのように否定したが、現在でもこの状況は存在し続けている。岡田監督は準決勝進出の目標が決して高望みではなかったことを証明したにも関わらずだ。
パラグアイ戦はPK戦での敗戦であって、限りなくベスト8に近づいた。もちろん、ベスト4に進むためにはスペインの壁を超える必要はあったが、パラグアイは残り7分まで0-0で試合を進めていた(ダビド・ビジャが得点を決めた)。W杯の結果はごく僅かな要素で大きく変わるものだ。
しかし、本田は大胆な発言をすることを恐れるような選手ではない。メディアとのやりとりにおいて彼はレアな存在であり、世界チャンピオンとしてスペインに取って代わる事が出来ると主張した。
彼は、『ブラジルで成功を収められる自信があるか?』と質問された際に『はい』と答えている。
「僕たちは世界を驚かせたいと思っている。自分たちのスタイルに自信を持っており、優勝することを視野に捉えている」
そして、数人の選手が彼のリードに続いた。(とは言え、本当にそう信じているというよりは、義務感から発言している印象だった)
吉田麻也が代々木体育館での壮行会で発言した際に犯した手違いは、大会前の予言として読まれるべきではないものと証明した。
このセンターバックは7000人以上のファンの前で「僕の夢もW杯で優勝…勝つ事です」と発言し、司会者によって「W杯で優勝する事です」と言い直させられた。これは、選手の発言が必ずしも彼らの本心を語っているものではないことの証だ。
イングランドでも同様の問題。“模範解答”はルーニー
これは、もちろん日本に限った問題ではない。私が覚えている限り、イングランドの選手たちもW杯のトロフィーを獲得出来るか質問を受けていた。今回は間違いなく、ロイ・ホジソンのチームをお気に入りに据えている人などいないにも関わらず。
「我々は、数字を気にしたりはしない」
ダニエル・スタリッジは、BBCに対して語っている。
「W杯で優勝出来るかは分からない。しかし、我々は勝者だ。勝利のために最善を尽くすよ」
ウェイン・ルーニーは、わずかに世界王者となる可能性を否定しなかった。彼は、「私には、我々がどうなるのか見当もつかないよ」と、ミラー紙に語った。
「我々は、トーナメントに大きな影響を及ぼす事が出来ると思うし、決勝まで進出し、多くの人々を驚かせることも可能だ。しかし、私が今言える事は、このチームが持つ可能性とクオリティーは本当に刺激的なものであるということだけだ」
選手は常に大会に勝つことが出来るかを問われ続けている中で、彼の“チームのポテンシャルと試合でゴールを決める事はエキサイティングだ”という答えは正しい。
だからこそ、我々はそのような質問を止める必要があるだろう。