アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

15歳から始めてプロピアニストに!?

2016年01月04日 | ピアノ
クラシック音楽家の中でも、声楽や管楽器だったらそんなに幼児からがりがりやらなくていいんだけどね…

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ピアノとバイオリンについては、幼児からやらなきゃいけないってのが常識ですよね。趣味でやるなら別にいつからでもいいけど。

それが、このお正月に読んだ「7本指のピアニスト」という本によれば、西川さんはピアノ始めたのが15歳ですって!! しかも、それまでほとんど楽譜も読めない状態で。もちろん、聞くほうでいえばジャンル問わずかなり浴びるように音楽に触れていたらしく、歌心と耳はあったんでしょう。さすがに、それもなくて15歳からだったら絶対に無理ですね。

ピアノを始めた動機は不純で、ブラスバンド部の顧問の先生が好きだった(笑)のでチューバで音大受験することを考えて調べたらピアノも弾かなきゃいけないということがわかったというもの。じゃー好都合だ、その先生にピアノ習おうってことになった。

初めてのレッスンでは「黄バイエル」一番最初のドレミファソファミレド~を弾いたんだけれども、先生がそれに合わせて伴奏をつけてくれたら「背中に雷が落ちたかのようにしびれるほどの感動」を受けて「やっぱりピアノって美しい!」

それからどんどんのめりこんで練習していって、4か月でショパンノク2、一年で幻想即興曲、三年で英ポロ(o_o)

コンチェルトコンサートのオーディションに合格して、オケをバックに大ホールで演奏(三年で!!)

そして大阪音楽大学の短大に合格。入ってからも四年制への編入のため猛練習を続けるのですがどうしても合格できず…

行き所がなくなってしばらくしたところで、ピアノの調律師さん経由で話をもらって、ジュリアード出身で世界的に活躍しているピアノデュオの前座として演奏できることになり、さらにそこで気に入ってもらって留学!! 住むところからレッスンから丸抱えでみてもらえるというありえない条件。

そこで一から学び直し。それまで、「楽譜黒い系」に燃えてた西川さんですが、「テクニックより個性」「徹底したレガート奏法(楽譜白い系の難しさ)」「うしろまで響くピアニシモ」などを徹底的に学びました。

そこから、ニューヨークのリンカーンセンターでのデビュー、大成功、そして次々コンサートができるようになったのですが、好事魔多し。いろんな批評にもみくちゃにされるうち、プレッシャーと、「もっと練習を」の物理的負担におしつぶされ、まったくピアノが弾けない状態(ジストニア)になってしまいます。

一時は極貧、鬱、自殺未遂などどん底の状態でしたがそこから這い上がっていく様子は、こんなところで私がかいつまんで書けるようなもんじゃないのでおいとくとして…

結果として、今では「七本指のピアニスト」として演奏活動もし、ピアノ教師としても活躍しているのです。

七本というのは、右手が五本、左手は1の指と2の指のみです。立ち直って演奏した一曲目はプーランクのエディットピアフ、それからメンデルスゾーンの無言歌とか弾いたそうですが、七本指ではいくら運指を工夫しても弾ける曲が少ないので、YouTubeで検索して見つけた動画は全てクラシックでない曲でした(オリジナル編曲含む)。

それを聞いてる限りでは、七本指で弾いていることも、15歳からピアノを始めたこともまったく気づかない、素敵な演奏をしています。

結局のところ、15歳から始めてプロピアニストになれるのかといったら、不可能ではない、けれどかなりの無理を強いられるということでしょうか? 西川さんはほんとうに練習の鬼だったみたいで、睡眠時間を削ってでも一日10時間以上の練習を、しかもかなり独特な練習方法でしつこくしつこくやっていたようなので、これは職業性のジストニアのリスク要因ぴったりです。

参考「ピアニストの脳神経疾患“局所性ジストニア”の新しい治療法を開発

ジストニアというのは、運動をつかさどる脳の部位が機能不全を起こし、異常なこわばりなどが起きてしまう病気なのですが、「ピアニストでは、習慣的に4時間以上の練習を続ける人や、演奏法を変えたり、指導者を替えたりした直後、7~8歳以後にピアノを始めた人、難しい曲への挑戦を好む人、手指の腱の間の結合が太い人、家族にも局所性ジストニアの人がいる場合などに発症しやすい。」だそうです。「手指の腱の間の結合が太い人、家族にも局所性ジストニアの人がいる場合」を除けばまさに西川さんの状況にあたります。というか4時間どころじゃないし、7~8歳どころか15歳。

とにかく人並み外れた努力を積み重ねてきた人がなってしまう病気なので、ほんとうにもったいなくつらいことです。

西川さんは7本指ですばらしい演奏をしていますが、弾ける曲には制約があり、どん底から這い上がるときに得た財産もまた貴重なものであったとしても、病気を避けられればそれに越したことはありません。

「財産」の一例ですが、この本の終わりのあたりにこんなくだりがあります。
「不思議なことに、生徒さんの演奏を聴くと、どこをどうすればその人が楽に弾けるのかが、まるでお医者さんが診断するかのように聴こえてくるようになりました。」「その人がより良く弾けるようになる練習方法が瞬時に思いつくのです。」

幼いころから本格的にピアノを学びすんなり才能を開花させた人にはないものを西川さんはたくさん蓄えたのでしょう。それこそ血のにじむような、という言葉では足りない努力によって。

(西川さんが遊び弾きで連弾している動画。楽しそう!!)

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