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お父さんと伊藤さん【映画】

2016年10月26日 | 【映画】



@新宿バルト9

タナダユキ監督作品は、とても好きです。

個人的には、日本の女性監督の中で、
西川美和監督と並んで、外せないと思っています。
(個人的には、若干タナダユキの方が好み。)

日常の風景をリアルに切り取りながら、
セリフに独特の面白要素を加えつつ、
キレイなだけでは済まない、
人間のイヤな部分も、さわやかに入れ込んでしまうのが上手、という印象。

本作も例にもれずでしたが、
題材とキャスティングがガッチリとハマっており、
作品全体のクオリティを底上げしていました。

地味だけど、良作です。

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書店でアルバイトをしている34歳の彩(上野樹里)は、
給食センターでアルバイトをする
20歳上のバツイチ男・伊藤さん(リリー・フランキー)と交際中。
ある日、彼らが一緒に住むアパートを、
息子の家を追われてしまった彩の父(藤竜也)が訪れる。
父親は伊藤さんの存在に驚きながらも、
「この家に住む」と言い……。
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まず。
主人公が同世代女子であり、
抱える悩みが物凄く理解できる。

重く表現すると、本作のテーマは「親の介護問題」。
個人差はあると思いますが、
男女問わずかなりの人が、身につまされるかと。
私達世代はもとより、"お父さん"の存在感が、
親世代にもかなり響くのではないかと思います。

但し。
必要以上に重くしないのが
タナダユキの手腕であり、持ち味。

問題提起はしながらも、
登場人物の個性を滑稽に描くことで、
作品としてのバランスを取っていると思います。
だって、あのお父さん、良いキャラしてる。
これは監督の演出もさることながら、
藤竜也の演技力の賜物かと。

それと。

この作品の登場人物や設定には、
最後まで明かされない謎というか、
受け手に委ねられている要素が多いです。

例えば、フォークの持つ意味とか、
伊藤さんの過去の職業とか。

想像はできるけど、答えは明示されません。

同様に。
本作は、ストーリーを通じて
やんわりと問題提起はしているけれど、
こうあるべき、という答えは、一切無い。
ラストシーンの後に、
この話がどう展開するか、ということも
観客の考え次第。


設定上、断然、彩に肩入れしてしまいそうな私が、
お父さんにも、伊藤さんにも、同調出来て、
且つ、この映画を観た後、ナーバスな気持ちにならなかったのは、
そのおかげだと思います。

答えは人に与えられるものではなく、
自分が考えて、どう進むか。
彩も、伊藤さんに助けられながら、答えを出したはずなので。

重い、ではなく、軽いけど深い。
映画作品として、観客との距離感が絶妙だなと思いました。


役者陣に関しては、
このキャストだから見逃せないと思ったくらいなので、
適材適所、極まりないです。

上野樹里は元々好きで、監督の作風に合うんじゃないかなあ、と思っていたら
言わずもがなバッチリだったし、
(願わくば「ロマンス」を彼女で見たかったと思っていた位なので。)
伊藤さんを演れる人が、もうリリー・フランキー以外に思い当たらない。
藤竜也は前述してますが、一見すると面倒くさいガンコ親父なのに、
そこに愛を感じられるという、絶妙な存在感が素晴らしかった。
脇役キャストにもハズレが無く、何たる安心感!!と思いながら見てました。


都内の上映館数が少ないのがネックですが、
これは見るべき映画だと思うし、
当たり邦画の多い今年においても引けを取らない良作です。

オススメです。特に同世代の方に。

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