本日、快晴。

映画中心雑記。後ろ向きなポジティブが売りです。

64(ロクヨン)【本】

2015年08月19日 | 【本】


今回の帰省は移動時間が長かったので、
久々に読書用の本を買いました。
ずーっと読みたかった横山秀夫氏の「64」、文庫版上下巻。
一気に読み、例のごとく復路に読む本無くなりました。

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D県警の広報室と記者クラブが、加害者の匿名問題で対立する中、
時効の迫った重要未解決事件「64( ロクヨン)」の
被害者遺族宅への警察庁長官視察が1週間後に決定した。
わずか7日間で幕を閉じた昭和64年に起きた、
D県警史上最悪の「翔子ちゃん誘拐殺人事件」。
長官慰問を拒む遺族。当時の捜査員などロクヨン関係者に敷かれたかん口令。
刑事部と警務部の鉄のカーテン。謎のメモ。
そして、長官視察直前に発生した新たな誘拐事件は、
ロクヨンをそっくり模倣したものだった・・・。
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横山秀夫氏は著名な作家さんですが、
今回初めて小説を読みました。
堅苦しくなく、でも砕け過ぎてもいない、とても読みやすい印象です。

とりわけ、「64」はストーリーと語り口が上手いのだと思うのですが、
興味の持続が有効で、次の章、また次の章、と読み進めてしまい、
気づいたら最後まで読んじゃった、という感じ。

おかげでほぼ徹夜し、妹に「(目の下のクマで)顔がコワイ。」と窘められる始末。
ほんと、こういうのが、私のダメなところである。



話を本に戻します。

警察小説、とされるものは、基本的には、刑事が主役なイメージがあるのですが、
本作の主人公は地方警察署の「広報官」という職業です。
所謂「警察の窓口」的マスコミ対応部門。

ストーリーは事件と共に動くのですが、事件捜査をする刑事とは異なる立場で、
話が展開していく様は、非常に興味深かったです。


ミステリーは何を書いてもネタバレになりそうなので本筋は省きますが、
過去の事件と、現在の事件、そして各部門の立ち位置と、主人公の状況と葛藤、
全ての要素が必要不可欠であり、しっかりと1本のラインに乗って物語が展開しており、
それと共に変わっていく、意識や人間関係でのカタルシスがしっかり描かれているので、
ラストは、衝撃と共に爽快感がありました。

衝撃(かどうかは、感じ方に個人差があるでしょうが)のラストについてですが、
どんでん返し、とか、衝撃のオチ、という形ではなく、
物語の展開に、非常に上手く絡めており、なるほどこういうまとめ方か、と思いました。
数多くの警察小説を読んでいるわけではないので、過去作品との比較は出来ませんが、
個人的には、非常に面白かったし、飽きずに最後まで読めたし、
何よりも、"途中でオチが見えて興ざめする"ということが無かったです。


しばらく活字離れをしていた私にとっては、良い起爆剤となりました。
心からおススメです。



とりあえず原作を読んでから、と控えていたNHKドラマと、
来年公開が予定されている映画は、どちらも鑑賞予定です。

読んだ人のために、メインキャストの比較を参考までに。

(役名:ドラマ/映画)
三上  :ピエール瀧/佐藤浩市
美那子:木村佳乃/夏川結衣
あゆみ:入山杏奈/(未発表)
諏訪  :新井浩文/綾野剛
蔵前   :永岡卓也/(未発表)
美雲  :山本美月/榮倉奈々
秋川   :永山絢斗/瑛太
雨宮   :段田安則/永瀬正敏
漆原   :きたろう/(未発表)
松岡   :柴田恭兵/三浦友和
柿沼   :高橋和也/(未発表)
幸田   :萩原聖人/吉岡秀隆
日吉  :水澤紳吾/窪田正孝
辻内   :古今亭菊之丞/椎名桔平
赤間  :平岳大/滝藤賢一
石井   :小野了/(未発表)
二渡   :吉田栄作/仲村トオル
荒木田:中原丈雄/奥田瑛二
目崎  :尾美としのり/緒形直人


映画の方での未発表キャストは削られている可能性もあり、ちょっと微妙ですが、
全体的に見ると、映画の方が豪華な印象ですね。
個人的には一番好きな「美雲」がちょっと不満、てところですかね。映画。
あとは「秋川」役が、瑛太と永山絢斗の兄弟が演じるということで興味深くはありますね。
兄の方が若干イメージには合ってると思います。


丁寧に作ってくれたら普通に面白くなる話だと思うのですが、
最近の邦画には、ガッカリさせられることが多いので、
あまり期待せずに、ドラマを見つつ、映画の公開を待ちたいと思います。


あ、もう1回書きますが、原作は文句なく面白いので、
読んで損はないと思います。
良ければ、是非。

さて、また活字から離れてしまわないうちに、
同時に購入した文芸春秋の最新号を読みますかね。
「火花」も楽しみなんだけど「スクラップ・アンド・ビルド」もとても興味がありまして。
楽しみです。

ザ・シネマハスラー【本】

2013年09月13日 | 【本】
町山智浩さん著「トラウマ映画館」と共に購入しましたが、こっちが本命。

TOKYO MX TV「5時に夢中サタデー」を見ていて、
ライムスター宇多丸氏の博学ぶりに、相方と共に魅了され、
TBSラジオの映画評論コーナーを書籍化した本作を発見。

心から楽しく読みました。

ちなみに、宇多丸さんと、町山さんと、高橋ヨシキさん(※)、という3名が、
少し前から相方と私のツボです。
この人達が関わってるならとりあえず観る、というくらいには、気になる存在。
※「映画秘宝」アートディレクター、「冷たい熱帯魚」の脚本家の赤い髪のファンキーオジサンです。


本の話に戻りますが。

Podcastでは、さすがギャラクシー賞!!と実感するほどに軽快で聞きやすい宇多さんのトークも
文字にしたらちょっとどうなのかなあとも思って不安だったのですが、
読み物としてすごく分かりやすくまとめられているし、
何より途中に出てくる注釈をしっかりと読めるのが有難かったです。
あと、少しずつの読み直しがきくしね。

宇多さんの視点は、町山さんよりも少し優しくて、
ボロクソに言う部分と、褒める部分を明確に分けて、
最終的には「オススメです!」とまとめるやり方が、個人的にはとても好きです。
あと、町山さんよりも少し一般観客目線かな、とも思います。
でもまあ、お二人とも素晴らしい評論家ですから、このあたりは好みですよね。

加えてこれ完全に個人的にですが、
Podcast含めて、宇多さんとは俳優の好みが一緒で、何だか嬉しかったなと。
山田孝之と、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットが良い!!というだけでもう、
それだけで(いや、それだけじゃないけど。)宇多さんがさらに大好きになりました

本書、本当に、心からオススメです。



さて困ったことに。

町山さんの批評と合わせて、観たい映画が一気に増えました。
我が家の新入りTVが大活躍しそうな予感。

余談ですが。

町山さんや宇多丸さんの映画批評に触れるようになり、
私は、その映画を見た後に批評を読みたいタイプの人間だと実感してます。

でも一方で、批評本を読んだ後"この映画観てみたい!!!"と感じるのも嬉しくて、
その辺の矛盾と葛藤しながら、
結局は両方の観点から、今日も楽しく映画批評を読んでるわけなのです。

そして恥ずかしながら、名作を多数見逃してきた私がいまさら、
町山さんや宇多さんのような優秀な批評家の話に影響されて、
"見たい!聴きたい!!そして覚えておきたい!!!"欲求を抑えきれなくなり、
先日のブログ開設に至ったわけなのです。

彼らのように、世に出て批評をしている人達に影響は受けつつ、
拙い文章力・貧困な知識とボキャブラリーながらも、
考察をしようとする姿勢は身についたので、これから映画を観るのが更に楽しくなりそうです。

名作映画は星の数。人生も(多分)まだまだ長い。
趣味、とは贅沢なものですね。

トラウマ映画館【本】

2013年08月24日 | 【本】
映画批評本にハマっています。

町山智浩さんは著名な映画評論家ですが、
『未公開映画を観るTV』以外でのご活躍をほとんど存じ上げなかったので、
著書の中で、とりあえず一番興味深いタイトルの本をAmazonで購入。それが本書です。

そういえば批評自体もちゃんと聞いたことがなかったね、と
彼のPodcastも聴き始めたところ、こちらは相方の方がハマりました。


町山さんは、引き出しの多さ、知識の豊富さゆえ、
(Podcastでは特に)よく脱線もするのですが、
それでも、そこから派生しての余談なんかもとても興味深くて、
本・Podcast合わせて、かなり面白いです。
割と寝る間を惜しんで読んだり聴いたりしてます。


あたしは、1章目の「バニー・レークは行方不明」からすでに、
この映画全部観たい!!!と熱が上がってしまい、ネットで調べましたが、
レンタル無し、ソフト化されてない、DVD販売あるけど財力不足…等、
断念せざるを得ない作品もありました。無念。
“トラウマ”と称される位だから、万人に受ける名作とは限らないですしね。

ちなみに、相方と一緒に借りたDVDは以下の通り。

・小さな悪の華(1970・仏)
・乙女の祈り(1994・米新)
・ある戦慄(1967・米)
・ジョニーは戦場へ行った(1971・米)
・赤い影(1973・英伊)
・悪い種子(1956・米)
・追想(1975・仏)
・妖精たちの森(1971・英)
・マドモアゼル(1966・英仏)

(こんなに沢山、いつ観るんだ、あたし…。)


いずれも結構なトラウマ的要素満載ですが、でもそこが非常に楽しみです。
だって、映画は娯楽だもの。
トラウマと言われる程までに、心に残る娯楽、なんて、
もう貴重以外の何物でもないのです!

町山さんの文章が面白いので、ここまで興味を持てた訳なのですが、
エログロに食い付くところは、いつまで経っても変わらないあたしです(苦)。
頭を使うことが苦手で、且つ物事に深く入り込まないタイプなので、
こういうのを連続で観ても全然平気なのだとは思いますが、
極端なものばかり好んで観るというのは、さすがに公言できる嗜好ではないですね…。

本書に書いてある映画はどれも結構衝撃的で、
思春期に見たら、それは確かにトラウマにもなるよねえ。
三十路にもなると、どんな描写や展開だも、
フィクションだからと割り切って精神的にあまり響かなくなるのですが、
逆に冷静に、考察しながら見るのも楽しいかもしれない。



ちなみに、町山さんが何度も口にしていた、
1968年撤廃の「ヘイズ・コード(アメリカの映画検閲制度)」についても興味あり、
この前後に製作された作品もちょっと調べてみようかなと。
(上記ラインナップの中では、「悪い種子」が原作からの改変で大きく影響を受けているようです。時代ですね。)


あたしは「ショーシャンクの空に」という王道映画でハマった人間ですが、
昔の映画をほとんど知らず新しい映画を追いかけていたばかりで、見逃しも多いのです。
でも、無知さゆえの新鮮な出会いも楽しみだ!!と前向きに捉えて色々と観てみようかと。

日々、映画欲がどんどん上がってます。
この夏は劇場公開作が地味な印象なので、もっぱらDVDで。
夏だというのにインドアですが、冷房にアイスに映画。これもまた、贅沢なり。

芸人交換日記【本】

2013年08月06日 | 【本】
27時間テレビを見ていたところ、
偶然にもこの本を発端とした論争が繰り広げられているシーンが映り、
何とも、居た堪れない気持ちになった日曜日。

本には罪はないので、このタイミングではありますが備忘録。

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結成11年目、いまだ鳴かず飛ばずのお笑いコンビ“イエローハーツ”。
これまでコンビの今後について
真剣に話し合うことを避けてきたふたりも、気がつけば30歳。
お笑いに懸ける思いは本気。でももう後がない。何とかして変わりたい。
そう思ったふたりは「交換日記」を始めることにした。
お互いの本音をぶつけ合うために―。
交換日記形式で織りなされる、おかしくも切ない「絆」の物語。
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正味2時間くらいで読みました。

交換日記形式での対話で、
口語体ながらも文字にしても不自然さはなく、
且つ、主体的だからこそ感情移入しやすいのではないかと思います。
そういう意味で、小説を読み慣れていない人にも読み易いかなと。

話は、映画を先に見ていたので、知っていましたが、
それでも後半は、涙腺に訴えかけるものがありました。

まず良いなと思ったのは、展開として、生死に関わる描写があるのですが、
普通、そこに涙腺ポイントを持ってくる物語が大半にも関わらず、
この物語においては、それはただの後日談に過ぎず、
その前にすでに山場を持って来ていること。

この本のテーマは「夢を諦める」。
主体となるテーマの根本の部分で十分心に響いているので、
正直、病気の下りはあってもなくても構わない。
これが、所謂“お涙頂戴”的になっていなくて良いなと素直に思いました。


私は、男だったらお笑い芸人になりたかった、と思ったことがあります。
自分を貶めて笑いを取るのが楽だった、という甘ったれた性分ゆえですが、
それでも、人に笑ってもらえるのが好きだった。(いやさほど面白い訳でもないんだけど。)
それくらい、華やかで、憧れの世界でした。

しかしながら、この物語で描かれているのは、そんな華やかな世界ではなく、
むしろ、活躍していない、大半の芸人さん達が抱えているジレンマが、
わりと包み隠さず書いてあるように感じました。
甲本も田中も、魅力的とは言えないけど、物凄く人間臭い2人です。
でもだからこそ、お笑い芸人でない読者も、
彼らの人間性に共感してしまう部分があるのかなと思いました。

あと、「『やろうと思ってる』と実際『やる』の間には大きな川(差)がある」って言葉。
良い言葉だと思うんです。著者の鈴木氏も誰かに言われたことなのかな。
こういった所謂“名言”を、上から目線でスマートに書いているわけではなく、
ドヤ顔で、『どうだ!良い言葉だろ!』てしつこく書いてる感じが、
逆に潔くていいな、とも思いました。

ただ、最後の漫才は、涙で終わらせたくなかったからかもしれないけれど、
個人的には、あれは後付に過ぎないように感じたので、無くてもいいかなー。


ウッチャン監督の映画に関しては、
この原作をもってして、これ以上ない出来になっていたと今でも思います。
あちらの方が五感に訴えかけるので、より号泣必至です。

なので、どちらかというと、順番的には【原作→映画】の方が、
より楽しめるかなとは思います。どちらも良作だと思います。

良ければ是非。


あたしは芸人ではないので、“乗っかった”訳ではないですが(笑)、
そもそも(悪意さえなければ)批評という行為自体は、自由だとは思うので、
勝手なブログはこれからも細々と続けます。
てか、あたし程度のちっぽけな批評なんか、誰の気にも留まらないよね(笑)。

凶悪-ある死刑囚の告発【本】

2013年08月03日 | 【本】
きょう‐あく【凶悪/×兇悪】
[名・形動]性質が残忍で、ひどい行為をすること。また、そのさま。「―な犯罪者」
[派生]きょうあくさ[名]きょうあくはん【凶悪犯】残忍な犯罪を実行した者。
[補説]警察白書では、殺人・強盗・放火・強姦の罪を犯した者をさす。



久々に重い本を読みました。死にそう。
でも、かと言って、途中で止めることも出来ないくらい、
夢中で読みました。

通勤時間と休憩時間と睡眠前の時間を使って、3日間。
でも願わくば、半日くらい有給取って、一気読みしたかった。

秋に公開になる映画が、更に楽しみになりました。

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この本から、事件が動き始めた!
「他にも人を殺しています。警察はそのことを把握していません」。
死刑判決を受けた男・後藤良次が、獄中で衝撃の自白を始めた。
被害者は複数人、そして首謀者はまだ娑婆にいる----はたして、奴の話は真実なのか!?
告白を受けた雑誌記者は独力で現場を歩き、関係者への取材を開始した。
やがて、明るみに出てきた衝撃の事実とは......
法治国家・日本の暗部を抉りだして、
ついに警察をも動かした迫真の取材記録。
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「新潮45」という雑誌記者の方が書いたドキュメンタリーです。
2年前?に、「奇跡体験アビリバボー」でも特集された事件とのこと。

すでに死刑判決を受けた死刑囚が、
自身が関わり、警察がまだ知りえていない事件について告発する、という内容。
ハードカバー、文庫出版から数年経っており、事件は一応の決着をみています。
(気になる方は『上申書事件』でググると記事が多数出てきます。)

フィクションであれば、それほど珍しくはない事件ですが、
これが現実に行われているということ自体が、恐ろしい。

事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものですね。

これといった怨恨はなく、ただお金になるという動機だけで、
複数の人が、人知れず殺されているという現実。
方法も(この本を読む限りでは)ミステリー小説の如き巧みなトリックは一切なく、
そこそこ計画的とはいえ、単純で、野蛮で、粗雑で、稚拙。
でも、だからこそ、それがまかり通ってしまい、
今の今まで、日の目に晒されなかったことが、物凄く怖いと思いました。

ノンフィクション故に、淡々と語られる事実に比例していく、恐怖心。


この本の加害者側の登場人物達は、環境や生い立ちを掘り下げても、
同情出来ないことが多く、非道な人間です。
かと言って、この人達が特別だったという訳では決してなく、
近所に居ても、恐らく疑いを抱くことはない、所謂“普通”に見える人だったりします。

何をもって“凶悪”とするかは、読者の判断に委ねられるところですが、
個人的には、日常に潜む“凶気”と“悪意”を兼ね備えた犯罪は、
どこにでも存在しているのだと、警告されたような気持ちになりました。


事件概要にあまり多くは触れていませんが、作中では実名も多く出ています。
興味がある人はご一読下さい。お薦めです。
ただ、事実が故に、犯罪描写がぬるくないことだけ、ご注意下さい。