@ヒューマントラストシネマ渋谷
10年以上前。
ハタチの私は、或る本を読んで、号泣していました。
大学2年時、1人で取ってた一般教養の授業中のこと。
(良い子のみんなはマネしないでね!)
・・・そんなこと、すっかり忘れてた。
この映画のチラシをテアトル新宿で見つけたとき、
相方が『コレお前が読んでた本。オレに読めと、くれた本。』と教えてくれました。
何で忘れてたんだろう。。。
あんなに心揺さぶられたのに。あんなに泣いたのに。
自分の薄情さと記憶力の無さを呪いました。
それが、スティーブン・チョボスキー作「ウォールフラワー」です。
(今は文庫版も出てます。)
--------------------------------------------------------
1991年、シャイで物静かな高校生チャーリー(ローガン・ラーマン)は、
クラスメートたちに“壁の花”とあだ名を付けられ甘く見られていた。
だが、彼の平凡な日常は、パトリック(エズラ・ミラー)と
サム(エマ・ワトソン)兄妹との出会いによってすっかり様変わりする。
チャーリーは初めて知る友情の素晴らしさや、
初恋の胸のときめきに有頂天になっていたが……。
--------------------------------------------------------
原作についての思い出はさておき、
(忘れてたくせに)今年一番の期待作だった、この映画。
原作者が、映像化のオファーを断り続けて、
経験を積んだ自分自身の手によって、ようやくカタチになった本作は、
派手さはないけれど、とても温かい、良い映画でした。
思春期に誰もが探す、自分の居場所の問題。
「桐島、部活やめるってよ」で描かれたスクールカーストとはまた少し違った、
壁際で過ごす、一人の高校生の物語です。
主人公のチャーリーは、壁の花。
この例えが、個人的には気に入ってます。
そもそも、原作もこのタイトルに惹かれて読んだので。
ずっと壁の中にいて、同級生達の様子を遠くから見ている高校生活。
でも本当は、過去の傷も手伝って、
自らが、彼らとの間に壁を作り、
なるべく傷つかないように、自分を守っている。
そういうの、すごく分かる。
でもある日、少しだけ出した勇気がきっかけで、
自分に気づき、壁の外に引っ張りだしてくれた人たちがいて。
「気づいてくれて、ありがとう。」というセリフは、胸を打ちました。
壁の中に居た頃よりも、どんどん表情が豊かになっていく彼に、
観客の私も、笑顔にならずには居られなかった。
しかしながら、傍観者から当事者になったことで、
他人との関係に傷ついたり、苦しんだりすることもあるわけで。
仲間と一緒の楽しい高校生活の終わりと、過去の大きな“傷”。
二重の苦しみを経て、一度は元に戻ってしまったチャーリー。
でも彼は昔とは違う。
自殺を選んだ親友とも、本当はしたくて、でも出来なかったけれど。
新しい仲間と一緒に、前を見て、歩いていくことが、
今の彼には出来るだろう、という希望を持って、
物語は幕を閉じます。
多分もう、壁の中には戻らない彼が、
決別の意を込めたトモダチへの手紙に、
原作読んだ時の気持ちを思い出して、やっぱり泣きました。
多分、それほど珍しい題材ではないだろうし、
目新しい演出もないのだけれど、
人物描写が丁寧で、感情の動きがとても繊細に描かれていると思います。
そういう意味で特筆すべきは俳優陣。
特に主役3人の繊細な演技が光っています。
チャーリーは難しい役だと思うのだけれど、ローガン・ラーマンはスゴイ。
演技が上手いというよりも、思い描いたチャーリーそのものでした。
小さな葛藤とか、気分の上下とか、そういうのが、
その場面の状況設定やチャーリー自身の気持ちと、1ミリもズレていない。
若いのに素晴らしい俳優だなと思いました。
加えて、パトリック役のエズラ・ミラー。彼は本当に魅力的です。
美少年だなあ、という最初の印象よりも、
中身の方が遥かに魅力的なゲイ役がとてもハマっていました。
エマ・ワトソンの役・サムは、相方は鼻持ちならないと言っていたのだけど、
背伸びしたい世代の不器用な女の子を上手く演じていたと思います。
キャラクターは、上記3人を含め全員とても魅力的です。
チャーリーの父・母・兄・姉、国語の先生、あたりは、本当に良い人過ぎる。
原作では、チャーリーの一人称で話が進むので、あまり気づかなかったんだけど、
キャスティング・演出・脚本の全てがピタっとはまった結果、
キャラクター描写については、映画が原作を超えていたと思います。
ストーリーは、思春期のシンプルな成長物語ですが、
前述したキャラクターの魅力によって鮮やかに色が付けられた映画作品になっています。
ただ、私には音楽があまりハマらなかったのだけが残念。
好きな人は好きだと思います。
私には少し物足りなかったのは、よく聴いてるジャンルの影響だろうか。。。
あとは、欲を言えば、
最後、チャーリーが前を向いていくところは、
もう少しじっくり描いて欲しかった気もします。
ちょっとだけテンポが早い気がして、非常に惜しい。
とはいえ。
突出した作品としては記憶に残りにくいかもしれませんが、
丁寧な演出が光る良作です。
余裕があればもう一回観たいですが、
まずは、古本で新たに購入した、10年前の原作本を読み直そうと思います。
10年以上前。
ハタチの私は、或る本を読んで、号泣していました。
大学2年時、1人で取ってた一般教養の授業中のこと。
(良い子のみんなはマネしないでね!)
・・・そんなこと、すっかり忘れてた。
この映画のチラシをテアトル新宿で見つけたとき、
相方が『コレお前が読んでた本。オレに読めと、くれた本。』と教えてくれました。
何で忘れてたんだろう。。。
あんなに心揺さぶられたのに。あんなに泣いたのに。
自分の薄情さと記憶力の無さを呪いました。
それが、スティーブン・チョボスキー作「ウォールフラワー」です。
(今は文庫版も出てます。)
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1991年、シャイで物静かな高校生チャーリー(ローガン・ラーマン)は、
クラスメートたちに“壁の花”とあだ名を付けられ甘く見られていた。
だが、彼の平凡な日常は、パトリック(エズラ・ミラー)と
サム(エマ・ワトソン)兄妹との出会いによってすっかり様変わりする。
チャーリーは初めて知る友情の素晴らしさや、
初恋の胸のときめきに有頂天になっていたが……。
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原作についての思い出はさておき、
(忘れてたくせに)今年一番の期待作だった、この映画。
原作者が、映像化のオファーを断り続けて、
経験を積んだ自分自身の手によって、ようやくカタチになった本作は、
派手さはないけれど、とても温かい、良い映画でした。
思春期に誰もが探す、自分の居場所の問題。
「桐島、部活やめるってよ」で描かれたスクールカーストとはまた少し違った、
壁際で過ごす、一人の高校生の物語です。
主人公のチャーリーは、壁の花。
この例えが、個人的には気に入ってます。
そもそも、原作もこのタイトルに惹かれて読んだので。
ずっと壁の中にいて、同級生達の様子を遠くから見ている高校生活。
でも本当は、過去の傷も手伝って、
自らが、彼らとの間に壁を作り、
なるべく傷つかないように、自分を守っている。
そういうの、すごく分かる。
でもある日、少しだけ出した勇気がきっかけで、
自分に気づき、壁の外に引っ張りだしてくれた人たちがいて。
「気づいてくれて、ありがとう。」というセリフは、胸を打ちました。
壁の中に居た頃よりも、どんどん表情が豊かになっていく彼に、
観客の私も、笑顔にならずには居られなかった。
しかしながら、傍観者から当事者になったことで、
他人との関係に傷ついたり、苦しんだりすることもあるわけで。
仲間と一緒の楽しい高校生活の終わりと、過去の大きな“傷”。
二重の苦しみを経て、一度は元に戻ってしまったチャーリー。
でも彼は昔とは違う。
自殺を選んだ親友とも、本当はしたくて、でも出来なかったけれど。
新しい仲間と一緒に、前を見て、歩いていくことが、
今の彼には出来るだろう、という希望を持って、
物語は幕を閉じます。
多分もう、壁の中には戻らない彼が、
決別の意を込めたトモダチへの手紙に、
原作読んだ時の気持ちを思い出して、やっぱり泣きました。
多分、それほど珍しい題材ではないだろうし、
目新しい演出もないのだけれど、
人物描写が丁寧で、感情の動きがとても繊細に描かれていると思います。
そういう意味で特筆すべきは俳優陣。
特に主役3人の繊細な演技が光っています。
チャーリーは難しい役だと思うのだけれど、ローガン・ラーマンはスゴイ。
演技が上手いというよりも、思い描いたチャーリーそのものでした。
小さな葛藤とか、気分の上下とか、そういうのが、
その場面の状況設定やチャーリー自身の気持ちと、1ミリもズレていない。
若いのに素晴らしい俳優だなと思いました。
加えて、パトリック役のエズラ・ミラー。彼は本当に魅力的です。
美少年だなあ、という最初の印象よりも、
中身の方が遥かに魅力的なゲイ役がとてもハマっていました。
エマ・ワトソンの役・サムは、相方は鼻持ちならないと言っていたのだけど、
背伸びしたい世代の不器用な女の子を上手く演じていたと思います。
キャラクターは、上記3人を含め全員とても魅力的です。
チャーリーの父・母・兄・姉、国語の先生、あたりは、本当に良い人過ぎる。
原作では、チャーリーの一人称で話が進むので、あまり気づかなかったんだけど、
キャスティング・演出・脚本の全てがピタっとはまった結果、
キャラクター描写については、映画が原作を超えていたと思います。
ストーリーは、思春期のシンプルな成長物語ですが、
前述したキャラクターの魅力によって鮮やかに色が付けられた映画作品になっています。
ただ、私には音楽があまりハマらなかったのだけが残念。
好きな人は好きだと思います。
私には少し物足りなかったのは、よく聴いてるジャンルの影響だろうか。。。
あとは、欲を言えば、
最後、チャーリーが前を向いていくところは、
もう少しじっくり描いて欲しかった気もします。
ちょっとだけテンポが早い気がして、非常に惜しい。
とはいえ。
突出した作品としては記憶に残りにくいかもしれませんが、
丁寧な演出が光る良作です。
余裕があればもう一回観たいですが、
まずは、古本で新たに購入した、10年前の原作本を読み直そうと思います。