本日、快晴。

映画中心雑記。後ろ向きなポジティブが売りです。

野火【映画】

2016年02月22日 | 【映画】


@ユーロスペース

見逃したー・・・悔しい・・・と思っていたところ、
「凱旋上映」と称しての再上映キターーー!!!とのことで、
会社帰りに行って来ました。

さすがに混んでないよなあ、と思ったらやはり。
劇場には私含めて4人。
そりゃそうだ。観たい人はもう観ちゃってるよね。

久々に場内で気を使わずに映画を観れました。
(余談ですが、最近ネット予約の影響でシネコン満席続きで・・・。)

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日本軍の敗戦が濃厚になってきた、第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。
1等兵の田村(塚本晋也)は、結核を発症したために
部隊を追われて野戦病院へと送られてしまう。
だが、病院は無数の負傷兵を抱えている上に食料も足りない状況で、
そこからも追い出されてしまう羽目に。
今さら部隊に戻ることもできなくなった田村は、
行くあてもなく島をさまよう。
照りつける太陽、そして空腹と孤独によって
精神と肉体を衰弱させていく田村だったが……。
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さて。

今更の鑑賞なので、ネタバレも何も無いですが、
各レビューサイトでの、賛否両論に納得の"重い"映画です。

受け手の感受性によるところが大きいと思いますが、
『グロい』『エグい』『低予算』という批判的な感想に関しては、
否定はしないけど、予告で謳っている要素として納得の上で見るべきでは、とは思いました。

非難されやすい要素ではあるけど、
それ言ってたら映画は作れないよねと。


そういうの関係なく。

塚本監督が本作に込めたであろう、魂とか想いとか、
そういう力強さが、痛いほど伝わってくるので、
テーマが明確でストレートな作品として
私は、非常に好感度高く受け取りました。


ざっくり言うと、本作は反戦映画だと思いますが、
そこに思想の偏りは感じませんでした。
ただ、"戦争は何も生まない"という事実を、現場に視点を置いて描いた話です。
原作があるので、描写は、恐らく実体験を元に再現したものと推察します。

惨い。
酷い。
怖い。
恐ろしい。
でもたぶん、全部が現実。


様々な戦争映画が数多く作られている中で、
最も狭い視野で、然しながら、最も悲惨な現場を切り取ることで、
その是非を問うた作品だと思います。

フィリピンにおける日本軍の話に限った話でなく、
当時、各戦地で闘っていた世界中の兵士達の物語、と捉えられると思ったし、
そうすべきかなあ、と個人的には感じました。


映像は低予算ゆえに、確かに作り物感はありますが、
そのくらいの方が、ちょうどいいのでは?
あれリアリティ満点で描かれたら、結構しんどいよ。

むしろ粗い映像から伝わる臨場感が凄まじく、
ここに映る役者さんの存在感を一層引き立てていると思います。

塚本監督は主演も兼ねていますが、
メイクありきでも誤魔化しのきかない体型や表情から、役者魂も強く感じました。
加えて、脇を固める俳優陣もまた素晴らしい。
リリーさんは「凶悪」での怪演が記憶に新しいですが、
本作も中々ですよ。というかこっちの方が私は怖かった。
加えて、本業ミュージシャンの中村達也の存在感たるや。
彼が映っている画面からは、一秒たりとも目が離せないような、
表情・声・眼の力が凄まじかったです。
おかげで、本作で最もエグかった映像を
しっかり目に焼き付けてしまいました。いやー、参った。


久々に、こんなに"重い"邦画観たなあ、という印象です。
良い意味でも、悪い意味でも。
でも確かに、戦争の記憶が薄れていく現代にこそ、必要な作品だと思うので、
塚本監督の情熱に敬意を表しつつ、
「日本アカデミー賞」とかいう商業戦略システムでは本作を掠りもしないことに、
安堵のような、落胆のような、何だか複雑な気持ちです。

・・・結構すごい映画だと思ったんだけどな。


DVDでは迫力は劣るかもしれませんが、観る価値ある作品です。
が、グロ苦手な人は、小さい画面でも止めておいた方がいいかも。
興味が勝った方は、是非。

俳優 亀岡拓次【映画】

2016年02月17日 | 【映画】


@テアトル新宿


安田顕氏の活躍が目覚しいですね。
以前から、NACSで知ってはいたのですが、
本格的に映像作品でお姿を拝見するようになり、
その佇まいとか、空気感がものすごくツボで、
今ではかなり大好きな俳優の1人です。

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亀岡拓次(安田顕)は、37歳独身。
脇役俳優としてどんな役にもはまることから、
仕事の依頼はひっきりなし。
しかし、なかなか名前を覚えてもらえない。
私生活では、安い居酒屋を飲み歩くことが
もっぱらの楽しみという地味な日常を送っている。
そんなある日、ロケ先で知り合った飲み屋のおかみ・安曇を好きになる。
さらには、世界的に著名な人物からオーディションに呼ばれることになり……。
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ストーリーも雰囲気も、すごく好きな映画でしたが、
凹凸が少ない分、少し長めに感じたというのが正直な感想です。

とはいえ、
監督の前作「ウルトラミラクルラブストーリー」がさっぱり理解できなかった私には、
本作の方が分かりやすくてありがたかったです。


あっちは、ファンタジー要素が強かったけど、
本作は、どちらかと言うと現実的。


とっつきにくい個性を抑えめに、とも見て取れますが、
個人的には、いい感じに大衆に向けにシフトしつつ、
作品の持つ雰囲気は、女性監督特有のやさしさが感じられます。


日常描写が丁寧なのは、もちろんですが、
何よりもその中に居る安田氏の存在感が素晴らしい。
彼ありきの作品であることは、まあ言うまでもないですね。


リアルの彼と少し重なりますが、
脇役としてどんな役にもハマリ、世間からの認知度は薄くても、
そのジャンルの人からは一定の評価を得ている、という。
最近の安田氏は、世間からの認知度も上がっているので少し違うかもしれませんが、
真に重宝され、息の長い俳優さんて、こういう人だよなあ、と思います。
役作りは完璧、というか、そこそこ当て書きされているんだろうなと思っていたら、
原作あるんだ、これ。なんというナイスキャスティング!
麻生久美子は、「ラブ&ピース」でも書きましたが、
本当に、どんなタイプの女性を演じても、絶妙にキュート。
今回の安曇さんも例に漏れず。
男性目線での魅力もさながら、
この人じゃ仕方ない、ドンマイ亀岡さん。と、
女性目線にも思わせる嫌味の無さが良いです。

それと、脇を固める俳優陣もものすごくツボを抑えてます。
新井浩文に、染谷将太に、山崎努とか。ズルイよねー、ほんと。



特筆するような目立つ作品でもないですが、良作です。
何よりも、安田顕ファンには堪らないかと。


"役者ありき"の作品なので、
観客側からしたら、はまる人とはまらない人の温度差があるかもしれませんが、
それでも私が鑑賞した日はかなり混んでいたので、
安田氏の認知度と人気は、ここからまた上がるんだろうなと思います。


今後の活躍にも、また期待。


蜃気楼の舟【映画】

2016年02月16日 | 【映画】


@アップリンク渋谷


「FORMA」を見逃してからというもの、
アップリンクで上映する邦画はとりあえずチェックしとけ、という
自分ルールがあります。

全くもって全部を観ているわけじゃないんだけど、
それでもHP見る限り、気になる作品が多いのは事実で。
しかも、私好みの雰囲気の作品が多い。

本作も、ポスターの装丁と、
キャッチコピーと、
田中泯、という三要素で鑑賞を決めました。

あとで、去年ライムスター宇多丸氏が絶賛していた
インディペンデント映画の監督の新作だと知りました。

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母親に死なれ、父親に捨てられた過去を抱える男。
彼は友人に誘われて、ホームレスたちを簡易宿泊所に押し込んでは
生活保護費を奪う「囲い屋」で働いていた。
ホームレスを人間ではなく物のように扱い、
次第に感情や表情を失っていく男。
そんな中、彼はホームレスとして生きていた父親と再会し、
心が揺れ始める。
やがて男は、囲い屋から父親を連れ出して車を走らせて、
ある廃虚にたどり着く。
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個人的には、映画作品には、興味を持続させるストーリー展開があるのが好きなんだけど、
どうやら監督はそれをあまり好まない人だったようで、
ひたすら、感性・感性・感性、で撮っている印象。
ただ、その感性が創り上げた作品には、ストーリーは無くても、
ちゃんと観客の興味は持続されるようになっていて、
それは純粋に凄いなあ、と思いました。


たとえば、映像技術とセンス。これは目を見張るものがありました。
所謂、構図とか、情景描写とか、色使い。
キャリアが浅い監督なのに、色彩の使い方が素晴らしいです。
誰だっけな、監督が敬愛する巨匠がいて、その方にとても似ているらしいですが、
幸か不幸か、私は未見だったので、新鮮に感動しました。

それと、メタ表現と思われる映像の応酬。
映像が美しいので、画面を見つめていても苦にならないのですが、
多分、1秒1秒が意味を持つであろう映像。
もしかしたら、何も考えずに撮っているのかもしれないけれど、
どちらにしても、私には全部は理解出来なかった。
でも、これは何のメタ表現だ??と思いながら
最後まで追いかけてしまう、という点で、非常に巧いと思います。

ただ。ただね。

私個人的には、
ある程度のストーリー展開があって、
メタ表現の中にも、答えを見つけられる作品が好きなので、
正直、凄い映画だなあとは思ったけれど、好きな作品ではありませんでした。

なので、好みが分かれそうだなあ、という点で、
中々人には薦めにくい作品ではあります。


あ、でも1つ。全力で本作を薦める要素があります。

田中泯の佇まい。それと、歩行姿。

私、彼はずっと役者だと思っていたので、
ダンサーだと知ったのは本作ででした。
本作は、彼がダンサーたる姿を惜しみなく画面で披露していて、
素直に、「美しい」という感想が出てきます。

歩行でさえダンスに見える、なんて、スゴイ。
真っ直ぐに前を見据えて歩いているだけの姿が、あれほど絵になる人もいないと思う。
彼の姿だけでも、本作を観る価値があります。そのくらい凄い。



”好きな類の映画”ではあったけど、
”好きな映画”では無かったかなあ。

でも、昨今のふにゃふにゃな邦画の中では、
骨のあるしっかりとした作品だと思います。

ピンクとグレー【映画】

2016年02月10日 | 【映画】


@TOHOシネマズ新宿

今年は1月がバタバタしていたので、
映画はスロースタートです。
1本目は結構肝心なので、選んじゃうのですが、
興味が勝ち、今年はメジャーどころに行きました。

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知名度のほとんどない俳優・河田大貴(菅田将暉)は、
少年時代から友情を深めてきた人気俳優、白木蓮吾(中島裕翔)が
急死したことで一躍世間の注目の的に。
白木はなぜこの世を去ったのか。
自ら命を絶ったのか他殺なのか。
混沌とした状況の中、河田は……。
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まず何よりも、何よりも、
物語の筋がしっかりしていて、
コレ本当にアイドルが書いたの??と感心しました。

NEWSの加藤君は、
元々その文才がファンの間では賞賛されていたようですが、
本作はともかく、他の作品は読んでみたいと思わされました。



さて。

本作は、「上映開始62分後の衝撃」を宣伝文句としています。
再三、再三いろんな作品の記事で書いてますが、
こういう宣伝、もうやめませんか??

(以下、駄文です。何回も書いてるからスルーして下さいまし。)

本作、確かに62分のシーンはそこそこ衝撃的でした。
オチというか、この展開はそこそこ予想外で、
且つ、張られた伏線の回収のしかたとか、
キャスト含めて、本作を形作る全ての要素が効果を表したという
謂わば、稀有な成功例でした。

だからこそ、だからこそね。
これ知らずに見た人の衝撃度によって、
映画の評価が、格段に上がるんじゃないかなあ、と思いました。
逆に言うと、「何だ、言う程大したことないじゃん。」て思われてしまうかなと。
「言う程」てのは、言わなきゃ上がらないはずのハードルなのですよ。
すでに見た観客のレビューとかでそれが伝わるのは仕方ないとしても、
公開前からそれを発信しなくてもいいじゃないですか。

映画の宣伝手法が、その映画の得るべき評価を潰している、というのか。
何とも。何とも歯がゆい思いです。映画ファンとしては。


もうホント。『衝撃のラスト!!!』『結末は誰にも言わないで』という謳い文句は、
今後、禁止でお願いしたい。

・・・まあ、そうしないと観客が観に来ない、てのも分かるんだけどね。
書きたかっただけなので、書きました。



とはいえ。

前述した、もったいない衝撃度、を差し引いても、
本作において、オチがピタリとはまり、伏線が見事に回収されたのは、
恐らくは、監督の手腕にあると思います。
(原作者は、言わずもがなね。)

その最たる要素は、キャストの起用方法だと思います。

中でも、Hey! Say! JUMPの中島君は、素晴らしい人選。
演技力ではなく、存在感と佇まいで、本作の主人公にハマる人材です。
(下衆いこと書きますが、
本作にジャニーズ事務所から誰かは出演させなくてはならなかったと仮定した時、
彼を選んだことは、誰にとってもベストな選択だったと言えるかと。)

そして、彼の脇に置くべき、最重要ポジションの菅田将暉といい、
ここを崩したら一気に物語が破綻する役の柳楽優弥といい、
若手の中では、思いあたる最良のキャストを揃えているように感じました。
ちなみにですが、夏帆も安定の演技力でしっかり存在感出してましたし、
既に評価されている若手俳優さん達の実力を、本作で再認識できると思います。

まだ絶賛上映中だから、控えますが、
一瞬で、色々と変わる「62分後」において、
その前後でも、キャスト陣には、一切遜色がないという素晴らしさ。

ストーリーも然りですが、
本作は、やはりキャスティングの勝利というところが非常に大きいと思います。
あと、アジカンの曲とか、音楽の使い方も良かった。
結構、突っ込みどころの無い作品だと思います。



派手さは無くても、
風景描写や技巧で勝負する邦画が好きな私にとっては、
とても満足度の高い作品でした。

面白かったです。オススメです。