本日、快晴。

映画中心雑記。後ろ向きなポジティブが売りです。

その夜の侍【映画】

2012年11月27日 | 【映画】
うちの相方君はかねてから、言ってました。
『「ダークナイト」と「エヴァンゲリオン」を見たら、今年はもう映画一切見なくていい!!』

あたしにとって、その表現がふさわしい映画が、まさにこれ。
第一報が出てから、楽しみで楽しみで、もう死にそうだったんです。

山田孝之!
堺雅人!
舞台原作!!
しかも題材が好みの重さ!!!

…ハードルを、上げすぎました。
(長く書いたけど、物凄く偏ったレビューです。あしからず。)

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小さな鉄工所を経営する中年男の中村(堺雅人)は、
5年前に木島(山田孝之)が起こしたひき逃げ事件で
最愛の妻を失ってしまい、抜け殻のようになりながらも
復讐することだけを考えて日々を生きていた。
やがて、刑期を終えて出所した木島のもとに、
復讐を遂げる日までのカウントダウンを告げる
差出人不明の脅迫状が届くようになる。
そして妻の命日の夜が訪れ、ついに中村と木島は対面を果たすが……。
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この物語の登場人物は非常に個性的で、
観客が感情移入しづらいのが難点だと思います。

一見すると、哀しい物語ですが、
シンプルなようで、何だかチグハグな感情がいまいち理解できないので、
最後まで「???」という感じになってしまうのではないかと。

相方曰く、“演劇”だからかな??と。
まあ、確かに舞台作品の登場人物は、個性的な人が多い。
でもそれだけじゃないかも。個性を詰め込み過ぎた感。

役者の演技力は抜群で言うことなしだったのに、
その辺りのリアリティの欠如が、この映画を観客から遠ざけている印象です。
すごくすごーく、勿体ない。



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そしてここからは、あたしの勝手な考察です。
(完全にネタバレしてます。ご注意あれ。)


新井浩文演じるお兄ちゃんのセリフ。

『“平凡”てのは、死ぬ気で作り上げるもんなんだ。』

これが、この作品における全てなのかなと。

新井浩文なんて、まさにそれを体現していて、
自分の妹(?)が殺されたという事件があったにも関わらず、
傍から見れば、何でそんなことすんの??というような行動を繰り返しながら、
それでも自分の“平凡”を必死で守っている。
誰を助ける目的じゃなく、多分あれは紛れもなく自分のために。
そうやって、自分の生活を守るために。

綾野剛や、田口トモロヲ、谷村美月の役も、きっとそう。
或いは、安藤サクラや、山田キヌヲの役も、恐らくそう。
彼らも一見、普通ではありえない行動を取っていたりする。
観客は、『普通はこうするのに!!』と思うんだけど
でもそれもきっと、自身の“平凡”を必死で守るための行動。

みんな必死で、“平凡”を守っている。


そんな中、堺雅人演じる、奥さんを亡くした男。

彼は信念を貫いて5年間を過ごしてきたけれど、
犯人(山田孝之)との対峙で、あることに気づき、答えを出す。
彼(堺)が最後に、敵に対して突き付けた言葉は、彼自身に対する答え。

その言葉が、敵(山田)に響いたかどうかは、どっちでもいい。
だって、『関係ない』んだから。

でも、敵は敵で、毎日の脅迫状に恐怖を感じていたから、
無関係、と突き放されたことで、
取り戻せた(あくまでも彼の)“平凡”に、心底安堵したはず。
恐らく、反省はしていないだろうけれど、男には関係ない。

それでも、男(堺)は1人で生きて行く決意をする。
涙とプリンと共に、色んなものを浄化して、
そこから、彼が、彼自身の“平凡”を取り戻す末来へと繋がるんじゃないだろうか。

そうして、全員が必至で取り戻した“平凡”が、
これからも続いていくんだと思う。



これは、復讐の物語、という感じで宣伝してますが、そうではないと思います。
恐らくは、ヒューマンドラマ。どちらかと言えば、ロードムービーか?
何でPG-12になっているか分かりません。
(山田孝之の非道ぶりか、森で見つけた例のブツか、
谷村美月への犯罪行為か、まぁ、どれもアウトか。)

卑劣な犯罪に対する残虐な報復などは無いので、
「悪魔を見た」のような鑑賞後の爽快(という表現もどうだろう…。)感はないです。
比べる対象としても違う気もするしね。
でも、かと言って、別の意味で重く感じる要素も、実のところ、あまり無かった。

したがって。
映画としての出来は、余り良くないのではないかと思います。
(てかこれ、舞台でどうやったんだろう…。興味はあり。)

とはいえ。
あたしにとっては御贔屓俳優2人の夢の競演。
しかも脇役俳優陣にもハズレなし!という、本当に理想の映画で、
且つ、全員が素晴らしいパフォーマンスをしていた、という意味では、
それだけで十分な作品です。キャスティングだけで120点。

まあ、映画はそれだけではダメだよね。
役者の重厚な演技のおかげで集中して見られるので、
駄作、という感じではないけれど、
良い俳優、良い題材を使っているのに、何て勿体ない、
というのが率直な感想です。


これから見る人は、ハードルは上げない方がいいと思います。
俳優陣のファンであれば楽しめると思うけど、
容貌が演技に徹しているため、王子様的な堺雅人とか、
筋肉質イケメンな山田孝之とか、「ヨシヒコ」的な山田孝之を期待する人は
見ない方が良いと思います。あしからず。

しつこいけど、演技派・山田孝之が好きなあたしには、
かなり満足度の高い作品でした、というだけ。

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