福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

ツェムリンスキー:詩篇第23番 自習教材 全パート用 

2021-07-08 22:31:51 | コーラス、オーケストラ

Zemlinsky: Psalm 23 Self-study materal for ALL PARTS

久しぶりのブログ更新です。

いよいよ、今週末に発売される我がライヴCD「珠玉のモーツァルト&ベートーヴェン」のプロモーション活動すら後回しにして没頭していたのが、
この音源、即ちツェムリンスキー:詩篇第23番。その合唱団員向けの自習教材 の制作です。

どうも、ひとつのことに熱中すると、他のことができなくなるのは悪い癖ですね。

かれこれ20年ほど前にブルックナーの交響曲をバーチャル音源で再現しようとしたことはありましたが、
当時は、音源ソフトも今ほど充実しておらず、何より家庭用パソコンのスペックが低すぎて断念したことがありました。
一番の問題は、MIDIキーボードで叩いてから音が発せられるまでのレイテンシーで、そのタイムラグに耐え切れなかったわけです。

昨年の夏、改めてDAW(Digital Audio Workstation)の世界に挑戦しようとしたのは、コロナにより合唱のレッスンが殆どキャンセルされ、自宅での有り余る時間を有効に活用しようということからでした。
御蔭さまで、合唱団向けのパート音源やら、自分で歌うための伴奏音源を制作するなど、導入の成果はあったかな、と考えています。

実は、上述の「珠玉のモーツァルト&ベートーヴェン」コンサート前には、ベートーヴェン「7番」のスコア再現も行いました。
大いに勉強になりましたよ。
リアルなオーケストラに近い音色でスコアを再現することで、様々な発見があったからです。
たとえば、第1楽章の主部での、バスのリズムが付点からノーマルに移り変わる意味付けなど、スコアを眺めたり、レコードを聴いているだけでは、気付くことはできなかったでしょう。
この音源は、あくまで自分の勉強のためのもので、パート間のバランス処理もしていないなど、観賞用とは呼べず公開は出来ません。
年明けには、東大和市で「第九」初指揮の計画もあり、ぼちぼち、「第九」の制作にも入らなければ、と思っているところです。

ツェムリンスキー「詩篇第23番」は、シェーンベルク「地には平和を」とともに、来る10月14日、15日に予定されている大阪フィル第522回定期演奏会の演目です。
両作品とも、大フィル合唱団にとっては、取り組んだことのないタイプの作品であること。
また、コロナによりレッスン回数が制限されていることから、例外として、団員の自習練習用音源の制作に取りかかったわけです。
例外というのは、大フィル合唱団には、「音取りは各自が責任を持って行う」という暗黙の了解があるからです。
親切のつもりで音取り教材を作ってしまうと、いつしか、それが当たり前のようになってしまうのは良いことではありません。

単に音取りだけが目的なら、ピアノ・リダクションされた音を再現し、コーラス・パートを木管楽器の音色で演奏すればよかったのですが、
自分の勉強と楽しみを兼ねて、スコアの完全再現に挑戦した次第です。

制作の敵は、わたしの哀れな演奏能力よりも、まずは視力でした。
今現在、フル・スコアは手書きのものしか存在せず、浄書されたものとはいえ、とにかく音符がはっきり見えない。
さらに、臨時記号のフラットとナチュラルの見分けが付きにくかったりと苦労をしました。
それが、移調楽器のパートとなると、はじめのうちは瞬間的に迷路に迷い込んだようになりました。

などなど、面倒な作業の連続ではありましたが、それを上回る愉しさはありました。
何より作品の美しさを味わえたこと。
正直のところ、事前にナクソス・ミュージックライブラリやYouTubeでこの作品を聴いたときには、これほどの名曲であることに気付きませんでした。
しかし、録音しながら、しばし、「ああ、時間よ止まれ」と思える瞬間が何度も現れ、恍惚としたものです。
その感動をお伝えできれば幸いです。

表題のとおり、コーラスの全パート用のものです。
だったら、リアルな演奏の録音を聴けば良いではないか?
というご意見はご尤もですが、バーチャルであるからこそ見える美もあります。

また、合唱団員にとっては、リアルな演奏を聴きながらよりは、自分のパートが聴き取りやすく、練習に役立つのでは、と期待します。

さて、これより、各パート用にミックスダウンした音源をYouTubeにアップするとしましょう。
ただし、団員向けの限定公開。
聴きたい方は、是非とも大フィル合唱団のオーディションを受け、団員となってください(笑)。お待ちしております。

 

 

 

コメント (1)
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