福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

祝! 「新版クラシックCDの名盤」増刷 ~ 旧版の思い出も交えて(第1回)

2020-04-16 18:44:36 | レコード、オーディオ

ご報告が遅くなったが、今月1日付にて、文春新書「新版クラシックCDの名盤」が増刷された。第6刷である。初版の刊行が2008年7月20日。出版不況と音楽ファンのCD離れが加速するなかの増刷は本当にありがたい。12年の長きにわたり現役選手でいてくれたわけで、愛おしさが湧き上がる。すべては、支持してくださった読者の皆様のお蔭であり、ここに感謝の意を表したい。
 さらに、旧版「クラシックCDの名盤」の初版刊行からは21年間が経ったということになる。旧版はよく売れた。9年間で17刷を重ねた。続編の「演奏家篇」と合わせて10万部を超えたというから、クラシック音楽を扱った書籍としては破格の売れ行きであった。
 宇野功芳先生のカリスマ、中野雄さんの博識、この二大巨頭に福島章恭という向こう見ずな若造が絡むという斬新なスタイルに人気の秘密があったのかも知れない。この大ヒットは文春新書編集部を大いに喜ばせることになったが、実のところ企画の段階では、文春社内からは期待されていなかったらしい。「共著は売れない」というジンクスがあるのだという。さらには、当時、文春にはクラシック音楽に詳しい編集者も校正者もおらず、さらに新書というジャンルに類書がないものだから、「こんなものが売れるとは思えない」という空気が蔓延していたのである。

 原稿を書くのは愉しかったが、その後、本が出来上がるまでには苦労があった。というのも、校正者がいないということは、自分たちで校正までもしなければならなかったことである。誤字、脱字、漢字の統一などは社内の方にもできるのであるが、作曲者、作品、演奏家、レコード会社、CDにまつわることなど、音楽的なこと一切はすべてチェックしなければならない。たとえば、シューマンがショーマンと印刷されていたも文春サイドでは直してくれない。管弦楽団と交響楽団の表記違いも自分たちで発見しなければならない。デッカとかグラモフォンとか言っても、これは何ですかと問われる。ある編集者からは「福島さん、ヴァイオリンが歌うと書いてありますが、ヴァイオリンって歌うものですか?」と問われて腰が抜けそうになったのは笑い話である。
 致し方なく、中野さんとぼくとの2人が何晩も文春編集部に泊まり込み、校正、編集作業を続けた。紙面に少し隙間ができたら、即興でコラムを執筆し挿入するなど、今となっては懐かしい思い出だが、昼間は片眼ずつ眠るようなおよそ1週間。宇野先生からは「福島君、それは君たちの仕事ではない。編集者に任せて帰りなさい」と叱られるし、中野さんからは「そんなこと言ったって、ぼくらがこれをやらないと本が出ませんよ」と諭されるなか、ようやく校了となったときは、嬉しかったなあ。

 さて、書名をどうしようか? 
となったとき、あれこれ考えて「クラシックCDの名盤」を提案した。
当時、姓名判断に凝っていたわたしが考えたことは、以下である。
1.画数はもちろんのこと、平仮名、カタカナ、漢字、アルファベットの4種の文字全てを採用し、拡がりと包容力をを感じさせること。
2.書名の冒頭をクラシックからはじめること。即ち、カ行=無声軟口蓋破裂音の勢いの良い音を求めた。
3.読んで心地よいリズムとすること。
4.活字にしたときに見栄えの良いこと。
 幸い、わたしの案は宇野先生にも中野さんにも「それはいい!」と賛成して頂けた。
この新書の売り上げに、わたしの命名が幾ばくかでも貢献できているとしたら幸いである。

(第2回へつづく)
 
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毎日休日 

2020-04-16 00:15:43 | 日記
本日も1日自宅で過ごしました。かれこれ三週間ほど、ただただ在宅しているというのは、学校の長期休暇を除いては、幼稚園入園前以来かも知れません。
音大入試前の浪人時代も基本的に在宅はしていましたが、週に何日かはピアノ、歌、ソルフェージュなどのレッスンには通っていましたし・・。
というわけで、多忙を口実に放置していたウッドデッキのメンテナンスを行うことにしました。イペという横浜の大桟橋デッキにも使われている堅い木材なので、それほど手入れは要らないという話でしたが、流石に10年も経つと紫外線や雨風による傷みが目立つようになりました。
ドイツのオスモというメーカーの自然塗料。油性は手軽で耐久性はあるのですが、あの臭いは苦手なもので・・。
選んだ色は、ローズウッド。思ったより濃い色で、イペのオリジナルから遠ざかったのは些か残念。しかし、眺めているうにに、これはこれで良いと思えてきました。
ここまで三日がかり。
太陽の下、風に吹かれながら塗装する作業は、運動不足解消も兼ねて気持ちのよいものでした。いまは、コーラスのレッスンができないので、目の前に少しずつ完成に向けて仕上がっていく何かのあるのは嬉しいものです。
しかし、塗る前に板の表面を磨く作業は楽しいものではありません。ネットには、サンドペーパーで磨けとありますが、この面積はとても無理。数年前に手摺りのみ塗装したときの苦労を思い出し、少々乱暴ながらスチール製のデッキブラシでゴシゴシと。汚れというより表面ごと剥がす感覚で、ボロボロと垢状のものが落ちる様は、韓国のアカスリみたいでありました。
明日には手摺り部品も磨き終わるので、注文済みの塗料が届き次第、作業に入ります。
手摺りは、気分を変えて、オークという色を選択。どんなになるか楽しみです。
さて、音楽とは関係ない話をダラダラとしてしまい失礼しました。
ここで予告です。
今月1日付けにて文春新書「新版クラシックCDの名盤」が増刷されました。先の見えない日々の中で、嬉しいニュースでありました。
これについては、旧版刊行時のエピソードなどを交え、もう書き上げてあるので、手直し完了次第、アップします。
どうぞお楽しみに。


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