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福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

デュトワ&大フィル「サロメ」ゲネプロ

2019-06-07 19:59:32 | コンサート


デュトワ&大フィルによる「サロメ」
ゲネプロを聴かせて頂いた。

「サロメ」といえば、昨日、東京文化会館で二期会のB組公演を観たばかり。二期会が総力を結集し、築き上げた舞台は神々しいばかりに素晴らしかった。

一方、デュトワ&大フィルの公演は演奏会形式。シュトラウスの大オーケストラがステージに上がっての音響は凄絶で、それぞれ全く別の楽しみ、味わいのある公演となりそうである。

特に「7つのヴェールの踊り」以降、オーケストラに宿る官能的な魅惑はデュトワならではで、明日の本番が楽しみだ。

ゲネプロ終了後は、デュトワ&モントリオール響による名盤ベルリオーズ「ロメオとジュリエット」のアナログ盤を抱えて楽屋を訪問。サインをして頂いたのは良い記念になる。
帰り際、来る24日ハンブルクでの「兵士の物語」を聴きにゆくことを告げたら、喜んで頂けた。




と言い残して、シャルル・デュトワは去った

2019-05-26 11:16:18 | コンサート
 

シャルル・デュトワ&大フィル定期演奏会二日目も大盛況のうちに終了。

あの広いフェスティバルホールが、クラシック音楽会で満席になることは稀。開演前にはキャンセル待ちに並ぶ長い列まで出現。それほど初日の評判が良かったということで、まことに喜ばしいことです。

大フィル合唱団の共演した「ダフニスとクロエ」について言えば、初日よりも全体に柔らかな声、オーケストラに溶け込む声、物語の情景を想わせる声を目指し、かなりの水準で達成されていたと思います。皆さん、マエストロの魅惑の棒に導かれ、よく頑張りました。

カーテンコールでのデュトワ先生の振る舞いは誠にスマートで、これほど気持ち良く合唱と合唱指揮者を舞台上で立ててくれるマエストロも、そうそうありません。そんなことにも感激させられました。

別れ際、舞台袖で謝辞を述べるわたしに、

"No chorus in Salome, Sorry!"

と言い残して立ち去るお姿も、実に粋なものでした。男性をも痺れさす魅力の持ち主ですね。

というわけで、デュトワ&大フィルの「サロメ」公演も、宜しくお願いします(かく言うわたし自身、渡独中のため伺えないのが、本当に無念)!


シャルル・デュトワ&大フィル 驚愕の初日!

2019-05-23 23:29:00 | コンサート


デュトワ先生との大フィル定演初日、驚愕の演奏会となりました。

3日間のオーケストラ稽古では、ひとつひとつのフレーズについて、ダイナミクスについて、バランスについて、またニュアンスにおいて、丁寧かつ緻密な音楽づくりが展開されましたが、その無駄のなさ、効率の良さに秀でており、持ち時間のほんの数秒の無駄遣いのなかったのも驚異的です。

そして生まれ出る音楽は、理知的、分析的なだけでなく、情熱、色香に溢れており、80歳を越えた巨匠とは思えないほどの切れ味と躍動感がありました。

大フィル合唱団の共演は、前半二曲目のラヴェル「ダフニスとクロエ」第2組曲。テキストを持たないヴォカリーズ、まさに声の力だけでラヴェルの色彩感や物語の空気感を描くのは大きな挑戦でしたが、マエストロの棒に導かれ、美しい高みに昇ることができたのではないでしょうか? 

休憩後のベルリオーズ「幻想交響曲」は、一生のうちに何度出会えるか? というほどの名演。少年時代よりレコードやCDで何度聴いたか分からないほどの名曲ながら、マエストロのアプローチにより、はじめて耳にするような新鮮さの連続。さらに練習で築き上げた音楽の枠に本番ならではの命の火が注ぎ込まれ、類い希な高揚感のうちに大団円を迎えました。

この一連の流れを、練習から本番まで、傍らで立ち合うことのできたことは、まことに幸せなことでありました。

しかし、まだ明日もあります!
2日目も大いに楽しみたいと思います。







ドイツ・レクイエム サントリーホール公演 演奏会評 

2019-04-19 08:06:35 | コンサート




「音楽の友」5月号(昨4月18日発売)に、ドイツ・レクイエム サントリーホール公演の演奏会評が掲載されております。

アマチュア・コーラス主体の演奏会を誌面に採り上げてくださった編集部のご英断とともに、丁寧に聴いてくださり、演奏の本質をの突いた評をくださった長谷川京介様に感謝あるのみ。

関係者の皆様、書店へ走るべし!


聴きたかった。尾高先生と大フィルのマーラー「9番」

2019-04-13 00:21:27 | コンサート

日付が変わったので、昨日と本日、大フィル定期は、尾高先生とのマーラー9番。

これは、聴きたかった! さぞかし、凄まじい演奏となった(なる)ことでしょう。

「9番」は、マーラーの作品中もっとも好きな作品で、レコードではバルビローリ&ベルリン・フィルを何度聴いたか分からないほど。

かつて朝比奈先生&東京交響楽団の稀少なる演奏会を生で聴いたのも懐かしい。

この名曲を、今の尾高先生と大フィルによって確かめたかったのですが、

この週末は、ヴェリタス・クワイヤー東京、混声合唱団ヴォイス、女声合唱団KIBIのレッスンを外すことはできず、遠くより応援するに留めました。

今シーズンは、尾高先生のとって、これまで大フィルに蒔いてきた種を発芽させ、花開かせるシーズンだと思われます。

ご病気の治療による小休止はやむを得ないとして、それも、今後のより末永いご活躍には必要なことだったのかも知れません。

尾高先生と大フィル合唱団は、音楽監督ご就任直前、ミュージックアドバイザー時代の「第九」での共演以来、相思相愛の仲となりました。

コンチェルトと組み合わせるのが常道であるブラームス・チクルスにて、オーケストラ付合唱曲と組み合わせるという魅惑の企画が実現されるのも、その良好な関係の証であります。

まずは、病気療養前の第1回にて、マエストロに勇気を与えるようなパフォーマンスとなるよう大フィル合唱団ともどもしっかり準備をしていきたいと思います。

(写真は、大フィル公式Twitterより拝借)


「チチェスター詩篇」への嬉しいご感想

2019-03-24 23:55:47 | コンサート

わたしと同じgooブログ所属の「静かな場所」というお部屋に、先日の「チチェスター詩篇」のご感想が書かれておりました。

後半に触れて頂いている「水のいのち」の映像ともども、「ああ、このように受け取って頂けると嬉しいなあ」という文章でしたので、ここに紹介致します。

(前略)

そして、(バーンスタイン作曲の)「ミサ」の雰囲気を思わせる、やや混沌とした第3楽章の出だしから、やがて合唱の虹のようなユニゾン(だったかな?)が繰り広げられ、圧巻は終結前2分ほどからのア・カペラ以降。

「見よ、兄弟が共に座っている。
なんという恵み、なんという喜び。」

アーメン

 バーンスタインの願いと祈りが集約された、希望を感じさせるフィナーレですが、ここでの大阪フィルハーモニー合唱団は特にすごかった!
 私は聴いていて、この合唱でこそマーラーの「復活」の合唱の入り部分を聴いてみたいなどと思ったりもしました。
 第2楽章で藤木氏が会場に放った空気はまだ残っていて、故に2楽章以降、私はずっと涙目でステージを観、耳を傾けていました。

 合唱指揮の福島章恭氏と合唱団のご活躍は、ネット上でうかがい知る程度だったのですが、今回実際に耳にして、その充実ぶりに大いに感銘をうけました。

 You-tubeにこのコンビによる「水のいのち」(全曲)がアップされています(下に張り付けてあります)。
 アマチュア、プロを問わず、これほどに楽譜と言葉のみを大事にした演奏を聴いたことがありません。
 多くは、もっと細部に仕掛けがあったり(その程度はまちまちですが)何かしら工夫を凝らしたりという演奏がほとんど(少なくとも私が聴いてきた実演や録音に関しては)ですが、この演奏では指揮者も合唱も驚くほど意識されることなく、ただただ高野喜久雄と高田三郎の世界にだけ対峙できるのです。
 そのスタンスは自己主張主体スタイルの対極であり、大変厳しい営みの賜物であることは間違いありません。
 こんな合唱団と指揮者ですから、今日のような驚くべき「チチェスター詩篇」が実現したのでしょう。
 指揮者のスラットキン氏も、合唱を絶賛していたとのことです。(後略)


「静かな場所」大阪フィル第526回定期(スラットキン指揮)でバーンスタインとコープランドを聴く その1

https://blog.goo.ne.jp/lbrito/e/15982de5f7d01d19a228f86723887c87?fbclid=IwAR30kSkf4jBKuK29OBqhwTNHU2PWMTSDD8vuzHXp44qyPWT8lE2YQgILKoc


スラットキン先生&大フィル「チチェスター詩篇」追加情報

2019-03-24 00:15:36 | コンサート

今回共演し、渾身の歌唱を披露してくださったカウンターテナーの藤木大地さんが、Facebookに以下のように書いてくださっています。

大フィル合唱団の皆さん、失礼しました。藤木さんが聞き取ってくださった赤字の部分は聞き逃しておりました。

肝心のフレーズが耳に入っていなかったとは、なんたる不覚・・・。

「アメイジング! 心から素晴らしかった」といって最敬礼されただけで、胸が一杯になっていたのでしょう。どうぞお赦しを!

大フィル合唱団の皆さん、本当に胸を張ってよいですよ。世界的なマエストロにこんな言葉をかけて頂いたのですから。

この記事を書いてくださった藤木大地さんの友情に心より感謝したいと思います。

(あいにく藤木さんとのツーショット写真がないので、マエストロとの横長バージョンでご勘弁ください)

「Bernstein’s Chichester Psalms with Osaka Phil. under Mo. Leonard Slatkin #2 - Final

ずっとやりたくて次いつやれるかわからない大好きな曲チチェスター詩篇が終わってしまったよ。これが最初で最後の機会になったとしても、こんなマエストロ、こんなオーケストラ、こんな合唱団、こんなホールでやらせていただけたので悔いはありません。

2日間、大阪でご来場いただいた皆さま、お世話になった皆さま、感想を書いてくださった皆さま、誠にありがとうございます。

舞台袖でマエストロが、合唱指揮の福島さんに「心から素晴らしかった、ファーストクラスだった」とおっしゃっていました。わたくしもそう思いました。

そんなマエストロは、わたくしには何もおっしゃりませんでした。もっとこう歌えとか、指揮見なさいとか、ずれてるとか、もっと聞けとか、いいとか悪いとか、何もおっしゃりませんでした。リハの初日に「テンポこれでいい?」と訊いてくださっただけでした。随分何回も歌ってから、一回だけ短い言葉で褒めてくれました。そういえば舞台に出る前には「おぅ、その衣装いいね」ともおっしゃっていました。本番は、一瞬の目配せと指揮棒で自由に泳がせてくださりました。職人でした。

終演後、合唱団のソロの方々が写真を撮りにきてくれました。たまたま入ったお店でも合唱団の方々が写真を一緒に撮ってくださいました。オケの方も話しかけてくれました。心のあたたかい方々に囲まれて、なんて楽しい音楽人生だろうかと思いました。

きっとバーンスタインの音楽の一部になれました。

ありがとうございました。

Thank you, Osaka!!!

次回関西への登場は、4/20京都でのロームフェスティバルです(藤木大地)」


大フィル合唱団 スラットキン先生に賞賛される

2019-03-23 18:44:10 | コンサート


「チチェスター詩篇」二日目が終わってしまいました。マエストロによるコーラス稽古からの濃密な5日間、あっという間でした。

スラットキン先生は本日も絶好調。躍動と静謐の指揮により、客席のみならず、ステージ上のオーケストラ、コーラスの魂を揺さぶる感動的なパフォーマンスとなりました。

カーテンコールの舞台袖では、マエストロから開口一番、「Amazing!」と大阪フィルおよび大フィル合唱団を褒め称えて下さいました。マエストロの口にこの賛辞を言わしめた団員諸氏には、心からの「おめでとう」を捧げます。世界的巨匠に「心から感銘を受けました」と最敬礼されるとは合唱指揮者としても最高の栄誉ですね。

もちろん、このAmazing! には、藤木大地さんの魅惑のパフォーマンスも含まれていることでしょう。バーンスタイン「ミサ曲」、オルフ「カルミナ・ブラーナ」に続く共演は、すべて印象深いものばかり。

百戦錬磨の大フィル合唱団も、このヘブライ語と変拍子による作品の難しさに喘いだ日々もありましたが、危機のときには自主練などを採り入れた取り組みにより、各パート内の一体感も増したように思います。そうした大フィル合唱団の頑張りを讃えたいのです。

この経験は、デュトワ先生をお迎えしての「ダフニスとクロエ」や尾高マエストロとのブラームス・チクルスにもきっと生かされることでしょう。



すべてのプログラムが終了し、スラットキン先生の楽屋にご挨拶に伺うと、マエストロは本当に上機嫌。奥様からも「心より(今回の)コーラスを愛します」と有り難いお言葉を頂戴しました。

そして、わたしのヴォーカルスコアには、マエストロのサインとともに次なる言葉が!

Bernstein would have been happy.

いやあ、痺れますねぇ。

マエストロは、再び大フィルにいらして頂けるでしょうか? 再会の日を心待ちにしたいと思います。


チチェスター詩篇 ラスト・チャンスを逃すなかれ!

2019-03-23 02:05:51 | コンサート


@Osaka_philさんのツイート: https://twitter.com/Osaka_phil/status/1109081922829836288?s=09

スラットキン先生をお迎えした大フィル定期に於けるバーンスタイン「チチェスター詩篇」。

何と言ってもバーンスタインの音楽そのものが崇高。

そして、すべての所作が音楽を語るスラットキン先生の指揮が美しい。そこに一切の虚栄もハッタリもなし。

その熟達のタクトに応えるオーケストラも、あの「ミサ曲」を体験しただけに、これぞバーンスタインという響きを醸し出していてお見事。

「ミサ曲」をともに演奏した藤木大地さんの歌唱も、ボーイソプラノの歌う場合とは明らかに別の可能性を追求したものとなっていて、聴く者の胸に迫ります。

さて、練習段階ではこの難曲に翻弄されがちであったコーラスも、本番が近付くにつれ長足の進歩を遂げ、本番初日は本当によく歌ってくれた。特に第3曲ラストのアカペラでは、身内ながらにジーンとなって、目頭が熱くなったほど。終演後、オーケストラの皆さんからも多くのお褒めの言葉を頂戴しました!

この作品をスラットキン先生のタクトで聴くチャンスは、そうそうあるものでなく、本日3月23日(土)15:00、ラストチャンスを逃すことのないようお願いします!



最後に、音を出さない功労者たちについても、触れないわけにはいかない。それは、大フィルの誇る清水氏率いるステマネ軍団である。

コンサート前半。バーンスタイン:「キャンディード」序曲、コープランド:「田舎道を下って」を終えてから、チチェスター詩篇には舞台の大転換がある。即ち、ステージ下手、ヴァイオリン群後方にあった二台のハープを指揮台を挟んだステージ中央に移動させる。さらに、木管群をすべて潰して、打楽器スペースを拡張する、という難題である(写真は大フィル会館でのオケ&コーラス合わせ)。

この大作業を、休憩時間でなく、座席の聴衆を飽きさせることなく敢行するというのは容易ではない筈だが、その迅速にして整然とした一連の作業は、もはやショーと言っても良いほどの美しさと完成度であり、本日お越しのお客様には、ここにも注目して頂きたい!。






ドイツ・レクイエム公演に寄せられた文章たち その2

2019-03-01 00:39:48 | コンサート

今回は、Facebook友人にして、音楽鑑賞仲間、しかし、まだラーメン屋にはご一緒したことはない、という中村匠一さん文章をご紹介します。

5枚の絵を組み合わせた下の写真も中村様のものです。

なお、写真右上のお花について補足説明します。「塩水港精糖株式会社」は、父が高校卒業以来定年まで務めていた会社です。

かつての父の部下たちが、いまは会社の中核を担っており、「お世話になった福島さんの息子さんの演奏会を応援しよう」

ということで、プログラムに広告を出してくださったり、前回は出演者のみならず、お客様にまでオリゴのおかげの試供品をプレゼントしてくださいました。

この場を借りて、心よりのお礼申し上げます。鹿児島より上京中の父もたいへんに歓んでおります。

また、本番前の慌ただしさに、このお花の写真を撮りそびれていたので、こういう形でブログに記録できることは有り難い。中村匠一さんには二重の意味で感謝致します。

 

昨日は、サントリーホールで行われた福島章恭先生が指揮された、ブラームス「ドイツ・レクイエム」の演奏会に行ってまいりました。

メインの「ドイツ・レクイエム」の前のプログラム、ワーグナーの「ジークフリート牧歌」も含めて、素晴らしい演奏だったと思います。タクトを使わず、両手で大きな弧を描くような福島先生の指揮から紡ぎだされる音楽は、大きな呼吸を感じさせてくれるものでした。

「牧歌」の演奏を聴いて思ったことは、これは勿論小編成オーケストラのための作品=管弦楽曲なのですが、その根底に流れているものはやはり「歌」なのだろう、という事であり、この音楽を伸びやかに歌わせるためには、反復するフレーズであっても惰性で繰り返すのではなく、そのフレーズの「入り」から終結まで入念に、精魂込めて演奏しなければならない、という事でしょうか。

福島先生が「盟友」と言われるコンサートマスター、崔文洙さんが引っ張る弦セクションは勿論の事、管のメンバーもその福島先生の思いに大いに共感を持って演奏されていることが良く伝わってきました。特に見事なホルンのソロとユニゾンを聴かせてくれた女流奏者のお二方=(プログラムによると)北山順子さんと田中みどりさん の演奏には、改めて心からの称賛を捧げたいと思います。

メインの「ドイツ・レクイエム」は福島先生もプログラムの挨拶文で「破格の大編成」と書かれた通り、サントリーホールのステージ後方、通称「P席」と言われるスペースを埋め尽くすほどの多くのメンバーが乗られていましたが、その合唱とオーケストラの合奏の響きがどちらが不足するでもなく、突出するでもなく、非常に良いバランスで聴けたのが印象に残りました。

そして、バリトンの与那城敬さん、ソプラノの平井香織さんはオーケストラの後方、合唱団のすぐ手前で歌うのですが、今回の会場ではソロと合唱の距離が近いこともあるのか、その繋がりが実にスムーズで、お二人の歌唱が存在感を示しながら、スケール感のあるコーラスが作り出す響きに自然にとけこんでいくのが実に印象的でした。

特に第6曲の「われらここには、とこしえの地なくして」の起伏に富んだ展開から終曲の安らぎに満ちた世界に至るまでの流れは圧巻でした。この曲では、ティンパニ奏者としてクレジットされている村本貫太郎さんのバチさばきが素晴らしかった。書で言うならば、「ハネ」や「トメ」といった、全体の音楽の荘厳さ、流麗さを形作る上で欠かせないアクセントを村本さんのティンパニは見事に体現している、そう感じました。

この日はステージの真横にあたる席が左右空けられていたのですが、それによる音響の違いも新鮮でした。特に歌というエネルギーが前方に向かって放射される音においては、そのエネルギーがロスなくこちらに進んでくる、そして、ティンパニやコントラバスの低域ががっちりと下支えをする、という私にとってはこの「ドイツ・レクイエム」を理想的な環境で聴けたという思いがあります。福島先生は、指揮者であると同時に、熱心なレコード蒐集家でもあり、その再生にもひとかたならぬ拘りをお持ちの方ですが、そういう音響に対する鋭い感性がこのステージにも表現されていたような気がします。

プログラムに書かれていた、国際親善音楽協会の丸尾さんの文章によると、6月には、ベルリンフィルコンサートホールにおいて、ベルリン交響楽団とともに、この「ドイツ・レクイエム」の公演が決定しておられるとのこと。今回の演奏会の成功をお祝いするとともに、そのベルリンでの演奏会の成功も祈念して、素晴らしい演奏を聴かせて頂いた、福島先生とヴェリタス交響楽団、ヴェリタス・クワイア・ジャパンの皆様に心からの感謝を。