岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

岩木山毒蛇沢の治山ダム調査(5)

2010-07-22 04:32:37 | Weblog
 (今日の写真は、毒蛇沢にある林野庁が敷設したもっとも下部に治山ダムだ。これでも書類上は「ダム」と呼ばれている。「スリットダム」の直ぐ下に書類上は確実に存在しているので、簡単に視認できるものと考えていたが、いざ探してみたところ、なかなか見つからない。それもそのはずである。)
 「スリットダム」と直近の「治山ダム」との間は、その距離わずか10mに満たない。「ダム」の右岸側壁が下部からの車道につながっていて、その車道は「ダム」を乗り越えて、「スリットダム」の真下を通って対岸の車道へと続いているのだ。
 つまり、「ダム」の「天端(堤頂)」は乗り越えている道路と高さが同じなのである。よく見ると、「堤頂」の高さと同じ道路には「コンクリート」が打たれて「舗装」されていた。そこはまさに、コンクリートの敷かれた平坦な広場であったのだ。
 しかも、その具体的な事実を知らない私たちは、その「コンクリート」の敷かれた「広場」をちょうどいい駐車スペースと考えて、そこに自動車を停めていたのであった。
 「灯台もと暗し」である。まさかそこが「最下部」の「治山ダム」だとは思いもしなかったのであった。
 「ダム」の「天端(堤頂)」右岸は道路によって埋まり、左岸は土石と土砂で埋まり、その実体を見せてはくれない。上部「スリットダム」から流れ出ている「水」を追う。水は集まりながら一カ所に向かって流れていた。かすかな水音を頼りに、そこの枝葉をたぐり寄せてみたところ、そこに、「今日の写真」の「ダム」が現れたのである。
 そのままだと枝葉が邪魔になって撮影が出来ないので、鉈で少し刈り払いをしてから撮ったのがこの写真だ。
 堤高は30cm足らずだろうか。因みに、このダムは昭和51(1976)年に完成したものである。敷設された時の堤高はどのくらいだったのだろうか。仮に、2mあったとしたら、1.7mもこの30数年間で「埋まった」ということになる。
 上部で谷脚や尾根の崩落が起きて、それが「土石流」となった時、その土石流を「くい止める」役割は、この「ダム(堰堤)」群では出来ないだろう。「土石流」は楽々と「ダム(堰堤)」の堤高を越えて、滑り台を流下するように、下流に走るだろう。
 それでは、「治山ダム」とは一体、何なのだろうか。私の脳裏には「治山治水」という言葉が稲妻のように閃いた。
 広辞苑によると「治山治水」とは「山と河川の整備・管理。国土を治める根本理念。」とある。)

◇◇ 岩木山毒蛇沢の治山ダム調査(5)◇◇

 (承前)…「堤高」または「ダム」全体が埋まってしまい発見出来なかったものもあったが、毒蛇沢に敷設されている最下部から最上流部にかけての「治山ダム」をひととおり調査をした。だが、この調査結果は現実的に腑に落ちないものだった。
 それはきわめて素直に、一体「ダム(堰堤)」とは何なのだろう。どのような機能や役割を担わされているものなのだろうということであった。

 …一口の「ダム」といっても、それには3つの種類がある。それは、それが作用する内容・目的によって区分されている。

 「堰堤」とは次の4機能(作用)を持つものである。「火山性砂防堰堤」などはこれにあたる。
 1.渓床勾配を緩和して安定勾配に導き、縦侵食及び横侵食を防止する作用
 2.山脚を固定して、崩壊の発生を防止する作用
 3.渓床に堆積する不安定土砂の移動を防止する作用
 4.土石流による渓床、渓岸の荒廃を防止して下流への土砂流出を防止する作用

 「谷止」とは次の3機能(作用)を持つものである。
1.渓床勾配を緩和して安定勾配に導き、縦侵食及び横侵食を防止する作用
2.山脚を固定して、崩壊の発生を防止する作用
3.土石流による渓床、渓岸の荒廃を防止して下流への土砂流出を防止する作用

 「床固(とこがため)」とは次の3機能(作用)を持つものである。
1.山脚を固定して、崩壊の発生を防止する作用
2.渓床に堆積する不安定土砂の移動を防止する作用
3.土石流による渓床、渓岸の荒廃を防止して下流への土砂流出を防止する作用

 これに従うと「堰堤」、「谷止」、「床固」のいずれにあっても、「土石流による渓床、渓岸の荒廃を防止して下流への土砂流出を防止する作用」のあるものであるはずだ。
 だが、私には、この一番大事にされるはずの「機能・作用」が「不全」に陥っているのではないかという思いが強いのである。(明日に続く)