岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

サギスゲの果穂が踊る湿原 / 岩木山毒蛇沢の治山ダム調査(1)

2010-07-18 04:50:21 | Weblog
 (今日の写真は、カヤツリグサ科ワタスゲ属の多年草である「サギスゲ(鷺菅)」だ。だが、これは「サギスゲ」の花ではない。
 「サギスゲ」も仲間の「ワタスゲ」も、花が咲くのは初夏で、花の色は黄色である。花は長さ0.5~1.0cmの長楕円形だ。
 小穂が2~3個つき、花期は6月頃である。花被片は糸状で多数あり、花のあと長さ約2cmほどに伸びて白い綿状になり、倒卵形の果穂を作る。
 私たちが目にする白い綿毛は、タンポポの綿毛と同じで、パラシュートを背負った種である。ワタスゲが1本の茎の頂上に球形の綿毛穂をつけるのに対して、サギスゲは3~4個の筆状の綿毛穂をつける。茎は鈍い3稜で、株を作らない。
 北海道と本州の山地帯から亜高山帯の湿地に生える。岩木山には「ワタスゲ」は生えていない。「ワタスゲ」は高層湿原に生えるのだが、岩木山にはまともな「高層湿原」は存在しないからである。
 花名の由来は「柔らかくて白い綿毛をサギ(鷺)に喩えたことによる」のである。

◇◇ サギスゲの果穂が踊る湿原 ◇◇
 
「・群れをなす鷺菅そよぎ夏風に広がる湿原静かな語らい」という短歌を作ってみた。
 「サギスゲ」が咲くのは6月、だが、この短歌や次に掲げる俳句も「花期」のサギスゲが歌題や句題ではない。いずれも、果穂が綿毛になっている7月のものである。      
 花は非常に地味な「暗い感じの黄緑色」で、しかも茎も育っていず全体としてもまばらで、林立感には乏しいものだ。
 だが、夏緑の時季になると一変する。騒然として「喧しい」感じで「生き生き」としてくる。だが、しばらく見ていると、「多数」ということでの「騒然」さはあるものの、全体は「湿地」にあって、きわめて静かなのである。この感じは「ワタスゲ」にも当てはまるのである。

 さて、この短歌の主題だが、その「静かさ」だ。簡単に解釈してみよう。
…群れをなしている「サギスゲ」がその白くて柔らかい「棉の花」のような果穂を垂れ下げている。この湿地の周りはブナ林だ。そのブナ林の樹間越しに柔らかい夏風が吹き込んでくる。そして、湿地をまんべんなく広がりながら吹き渡っていく。
 その風で「サギスゲ」の果穂は思い思いに動くのだ。それはまさに顔を向けあって、お互いが語り合っているように見える。だが、その声は沈黙に近いほど静かなのである。ブナ林の中に、ぽっかりと出来た小さな湿原はいつたりとも静かなのである。…
 次は俳句だ。「・鷺菅よ吾は呼びたし綿菅と」には私の思いが込められている。それは、「果穂」の形状の違いと「岩木山にはワタスゲは生えていない」という事実から生じているのである。
 「ワタスゲ」の果穂は床屋さんで使っている「耳かき棒」とその形状が非常に似ている。可愛らしく、柔らかでふっくらとして優しそうという印象だ。これは1本の花茎に1個の花をつけ、よって果穂も1個となるからである。どことなく、毅然ともしている。
 だが、サギスゲの方は、1本の花茎に2~3個の花をつけ、よって果穂も2~3個となるのである。これによって「耳かき棒」のイメージは消え、何だか騒然としてきて「毅然」さもないものに見えてしまうのだ。
 以上のようなことから、「ああ、鷺菅たちよ、おまえたちが『ワタスゲ』であったらどんなにいいことだろう、この場所に『ワタスゲ』が生えていたらなんといいことだろう。一度でいいからおまえたちのことを『ワタスゲ』と呼ばせてくれ」という思いを持ったのである。
 だが、これは「無い物ねだり」である。「ねだる」ことは心の中で思うことに留めなければいけない。「…であったらいいなあ」で止めることだ。生物多様性の維持と自然を守るためには「無い物ねだり」をしてはいけない。

 次の俳句「・鷺菅は綿毛か細く静かなり」は「ワタスゲ」のふっくらとして丸みを帯びた果穂を強く意識した時に出来たものだ。
 「サギスゲ」の果穂には「ふっくらとした丸み」がない。どちらかというと「紡錘」形に近い。だが、傍に寄ってよく見ると「綿毛」が非常に細い糸状になっていることが分かるのである。それはとても繊細で「か細い」のである。風によって多少触れ合ったとしても、これだと「静か」であること間違いないだろうという思いを主題にしたものである。

◇◇ 岩木山毒蛇沢の治山ダム調査(1)◇◇

 今日から表題のテーマで少し書こうと思う。実は16日に岩木山毒蛇沢にある「治山ダム」の調査に行った。東北森林管理局から、情報公開で「岩木山」に設置されている治山ダムの位置関係を示す図版(地図)を入手していた。
 その「地図」に記載されているものと「現場」がどうなっているのかを「踏査」して確認するための調査である。
 毒蛇沢のものは確認出来た。その後に「滝ノ沢」の「治山ダム」踏査に入ったが、「滝ノ沢」左岸を詰めたものだから、時間切れで「治山ダム」設置の場所にたどり着くことが出来なかった。とにかく、藪こぎでその日は終わってしまったのだ。次回は右岸を詰めて「治山ダム」に辿り着きたいと思っている。
 この「毒蛇沢治山ダム」踏査の詳細は、明日からということにしておく。(明日に続く)